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2014年12月01日22:01

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ささやく夜

年に何度か無性に聴きたくなるアルバムというものがある。
これもそんな一枚。
今持っているCDはかなり古いものなので、Blu-specCDを買い直してきた。やはりお気に入りのものは少しでもいい音で聴きたい。音の違いがわかるかどうかはともかくとして。

Karla Bonoff 『Restless Nights』(1979)

邦題は『ささやく夜』。カーラ・ボノフという人はリンダ・ロンシュタットに曲を提供していたことで知られ、やがて自身もシンガー・ソングライターとしてデビューする。これはその二枚目のアルバム。
リンダが歌いたがったという冒頭の『Trouble Again(涙に染めて)』がスマッシュ・ヒットとなった。

このアルバムの成功で人気シンガー・ソングライターとしての地位を築いたのだが、寡作だったこともあって日本では知る人ぞ知るという存在になってしまっている。ただリアルタイムで知った人にとっては強烈な印象が残っているのではないかと思う。

そのジャケットとともに。

私はこのアルバムによって彼女のことを知った。
いやカーラ・ボノフという人がいることはリンダ・ロンシュタットの曲のクレジットで知ってはいた。ただデビューしていたことは知らなかったし、彼女の声を聴いたこともなければ、顔も見たこともなかった。
完全にジャケット買いである。
このジャケットは本当に素晴らしいと思う。美麗ジャケットというといまだに真っ先に挙げたくなるようなジャケットなのである。
こんないいジャケットなのだから中身が悪いはずがない。
などと理屈にもならない理由で買ってみたら、やはりそれは大当たりだった。
そして、カーラ・ボノフってあの人だったのか、とようやく気付いた。

リンダ・ロンシュタットの真っ直ぐな声に比べて、カーラの声はしっとりとしていて翳りがある。
西海岸の名手たちがバックを務め、そのカラッとしたサウンドと、湿り気のある彼女の声とのコントラストが絶妙なのだ。冒頭の『Trouble Again』からタイトル曲の『Restless Nights』を経て、ラストの『The Water Is Wide(悲しみの水辺)』まで一気に聴かせる。
彼女の曲作りの巧みさと、内省的な歌唱に心打たれる。そして今でも色褪せることがない。
結局私はカーラの声が好きなのだろう。

アルバムの最後に収められた『The Water Is Wide』はトラッドとして知られる。
有名な曲なので多くの人が取り上げている。ジェイムズ・テイラーのアコースティック・ギターを得たカーラのバージョンもよく知られたバージョンのひとつ。
ところでこの曲だが、ルーツはスコットランド民謡の『O Waly, Waly(流れは広く)』である。
walyとは古語で悲しいという意味なのだそうだ。意に染まぬ結婚をし元の恋人との密通という冤罪を着せられた伯爵夫人の嘆きの歌だったらしい。それがメロディーと歌詞を替えつつアメリカに渡ったようである。
今では本国でも『The Water Is Wide』としての方が知られているらしい。今『O Waly, Waly』として歌われる場合も、元の歌詞ではないようである。
カーラはさらに若干いじっているようだが、まさに名唱と言えるだろう。澄んだ声で歌われるとその悲しみは伝わらない。こういう曲にはカーラの陰影に富んだ声がとてもよく合うのだ。

明るく前向きなものを音楽に求めるのであれば、このアルバムを勧めることはできないかもしれない。
それはやはり悲しい曲が目立つからである。しかもクロージングが『The Water Is Wide』である。アップテンポの曲があろうとも、アルバムの全体のトーンはそのラストの曲に集約されてしまう。
敢えて言うなら、リンダ・ロンシュタットには合わないような曲ばかりを集めたのではないか、という気がしないでもない。
ジャケットの雰囲気を裏切らない内容とも言える。

何度も言うが、このジャケットは素晴らしい。
当時このジャケットを部屋に飾っていたことを思い出す。
やはりLPサイズは良かったなあと思うのであった。
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