あとがき
「この本の８篇は特に説明を要しない。（中略）その一つ―「バビロニアのくじ」―は象徴主義と全く無縁というのではない。「バベルの図書館」という物語を書いた最初に人間は、筆者ではない。（後略）」
ホルヘ･ルイス･ボルヘス「八岐の園」プロローグより抜粋
上記のアルゼンチンの巨匠、ボルヘスの言葉に触発された、と言いますか、
”自分が最初に書いた物語ではなく、おそらく自分が最後の語り手でもない物語”
を描く事で、ボルヘスの辿った道を追体験してみようと思ったのが今回の３篇の短編になります。
改めて筆者自身で読み返してみますと、僅かながら秩序と混沌という二元論が根底に見られますが、そこはマイクル・ムアコックやフリッツ・ライバーと言ったエピック･ファンタジーが私の文学的下地にあるもので、
ひとつの公式、公理系、命題を表すのにも都合が良いと思い、今回は修正する事無くそのままアップロードする事にしました。
筆者はその怠惰から長編を書くのは率直に苦手で、アイディアが思いついた時はテーブルトークRPGのシナリオとして複数人と共に話を作り上げるか、あるいは要点と構造だけ最低限で抜き出して稚拙な短編を書き上げるのが常で、今回は後者にあたります。
今回の小説はボルヘスの追体験であり、過去から未来に続く連鎖の物語であり、
二王の評判を聞いた土地の者は、アインシュタインを打ちのめしたロシアの青年であり、履歴を消せる完全匿名の日本人の青年でも良いでしょう。
2013．4月 拓也 ◆mOrYeBoQbw
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