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2013年03月15日23:21

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シベリウス・チクルス第1回、インキネン&日本フィル@サントリーホール

いよいよ始まった。
フォンランド出身の若手指揮者ピエタリ・インキネンと日本フィルハーモニー交響楽団とのシベリウス・チクルス。インキネンにとってはお国ものであるシベリウスの交響曲全曲演奏会の第1回。
ご存じの通り、シベリウスにはいずれも甲乙付け難い7曲の交響曲がある。交響曲界の数少ない10割バッターである。

昨年この企画を知ったとき、いよいよか、と思ったものである。
「マーラー撰集」と題されたシリーズでマーラーの交響曲とカップリングされていたのが、シベリウスのあまり知られていない管弦楽曲。そこでインキネンは「ああ、これがシベリウスの音なんだな」という音を導き出していた。なのでいずれはシベリウスの交響曲を聴いてみたい、と思っていた。もちろん、意外なほど濃厚なマーラーも良かったことで、インキネンはお気に入りの指揮者になりつつある。

さて、1回目の今日は私としてはシベリウスの交響曲の中では聴く頻度が少ない2曲となった。

01.シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 作品39
<休憩>
02.シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調 作品82

1番の第1楽章冒頭のクラリネットのモノローグの後、ヴァイオリンのトレモロを聴いたとき、これは名演になるとの予感がした。
お国ものだからという強みはあるのだろうが、それだけでは済まされないものがある。というのも、彼のマーラーを聴いたときと印象がさほど変わらないからだ。
つまり「意外に濃い」のだ。すっきり整った音で、綺麗に仕上がっているのだが、何と言うか、内的衝動を起こさせるものがあるのだ。妙な喩えだが、淡麗辛口なのにしっかり米の旨みが残っている日本酒、あるいは白身魚の刺身、のようなのだ。
ほとんどミストーンのなかった金管も大健闘。
チャイコフスキーの影響が色濃いと言われるが、どうしてどうして、これは明らかにシベリウスの音楽である。いい曲ではないか。後の傑作群があるがゆえに評価が低いのに過ぎないのだ。シベリウスの曲でなかったとしたら間違いなく傑作とされているだろう。

比較的明るい5番。体感温度はいちばん高いか?
標題を付けるとすれば『春』だろう。しかし、そこは北欧なので、空気感は冷たい。
そういえば、シベリウスのシンフォニーには標題のあるものがひとつもない。
各楽器の分解能の高い演奏なのだが、どこか紗がかかったような渺茫とした印象。それは弦楽の響きにふくらみがあるからだろう。インキネンは弦を鳴らすのが上手いね。
伸びやかな気分を損なうことはないが、春の喜びがどこか刹那的に響く。北欧では暖かな季節は短いからだろうか。そのあたりが普通の5番のイメージと若干異なっている。それがインキネンの解釈なのだろう。ハッキリ言って、私は気に入ってしまった。5番に親しみを感じたよ。

私はシベリウスの音楽が好きである。
シベリウスの音楽を北欧的という言葉で済ませてしまうのは危険である。
彼はもっと大きなものをその音楽で描いたのではないかと思う。自然のアニマとか死と孤独とか、そういったものが彼の音楽には多分に含まれているような気がする。
方法論や規模は違うとはいえ、マーラーと相通じる部分があるように思えてならない。
インキネンの振るシベリウスはそんなことを思い出させてくれた。私としてはかなり満足のいく演奏だったのだ。インキネンはベビーフェイスなイケメンにもかかわらず、思いのほか刺激的な音楽を作る。

この後も楽しみだ。
2回目は4月19日(金)で、4番と2番という、最高傑作との噂も高い渋く暗い曲と、いちばんの人気曲の組み合わせ。
3回目は4月26日(金)で、3番と6番と7番。最も好きな6番が楽しみ。

ちなみに、私のプロフィールの写真に使われたカクテルはシベリウスの6番の交響曲をイメージして作ったものである。
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