たったひとつの冴えたやりかた、これを見てピンと来た人は本好きかSF好きか、もちろんその両方ということだろう。
作者はジェイムズ・ティプトリー・ジュニア。実は女流作家である。
私はあまりSFを読む方ではないのだが、好きな作家である。
この人の新刊がずいぶん前に出ていたので、読んでみようと思って書店を覗いてみたら、置いてなかった。
唯一あったのがその『たったひとつの冴えたやりかた』だった。
で、なにげに手に取って愕然とした。
表紙が変わっているではないか…。
以前は川原由美子女史の綺麗なイラストだった。
今ではライト・ノベル的でちょっと気恥ずかしい感がしないでもないが、このイラストが作品の内容をうまく表していて、印象的だったのだ。
しかも本文中に効果的に挿入されていた川原女史の挿絵も削除されている。
ガッカリだ…。
今の表紙のイラストも決して悪くはない。
しかし、以前に比べてしまうと、どうしても、という感は拭えない。
まあ、以前の版を持っているからいいのだが…。
そういえば、シオドア・スタージョンの『人間以上』もアニメ画っぽい表紙に変わってしまってガッカリした覚えがある。
原作は『The Starry Rift』という連作中篇集。『たったひとつの冴えたやりかた(The Only Neat Thing To Do)』はその冒頭の作品。
コーティー・キャスという少女が主人公のいわゆる異星人とのコンタクトものである。
とても切ない話になっている。
一見ジュヴナイルふうなのだが、なかなか深いものがある。
もともとこの人は強力な批判精神を持った人なので、考えさせられる作品が多いのだ。
SFの古典なのかなと思っていたら、意外に新しい。1986年とのこと。
ハヤカワSF文庫から刊行中。
表紙が変わり、挿絵がなくなったのは残念だが、内容は素晴らしい。
ログインしてコメントを確認・投稿する