赤坂ACTシアター、ミュージカル向けのホールなんですね。
舞台もホワイエも狭いですが、シートは幅があり、傾斜も十分。
観るには良い劇場です。
とはいうものの、
幕が開き、1幕が始まると、やはり不安になりました。
舞台装置の多い場面では、群舞の人数を減らし、
振付も簡略化しているにもかかわらず、踊りにくそうなのです。
なるほど、だから「赤坂Sacasバージョン」かぁ。(^^;)
音楽は録音。
指揮は井田勝大さん、演奏はシアター・オーケストラ・トーキョー。
12月に入って録音されたばかりのものだとか。CDも来春発売。
だからでしょうか、いつもより気合の入った演奏でした。
奏者の面子も違うのかな。(^m^)
...ただ、ロイヤル版を聞き慣れた耳には速すぎました。
しかも一本調子なんです。バレエの音源としては、どうかなぁ。
●プロローグ
どの演目も独特の味付けをする熊川版、
「くるみ」も同様で、他の版とは設定からして異なります。
まず、プロローグがあります。場面は人形の国。
この国は、ねずみたちと昔から領地争いをしています。
王女マリー姫と近衛隊長の結婚式を控えたある日、
2人はキング・オブ・チューの呪いをかけられ、
マリーはネズミに、隊長はくるみ割り人形の姿に。
呪いを解くには、世界で一番硬いくるみ、クラカトゥクを、
純真な心をもった人間の子供が、ねず王の持っている武器で、
割らなければなりません。
なぜそのくるみでないとだめなのかとか、
どうして最初から王様の手元にあるのか、
というのは、質問してはイケナイようです。(^O^)
そのくるみ、ひと抱えもある大きなもので(人形目線)、
登場場面になると、上から降りてきます。(^o^)
ドロッセルマイヤー@キャシディさんは人形の国の住人で、
王様の命を受け、人間界に子供を捜しに行くのでした。
ダウエル卿のドロッセルマイヤーは妖しさ一杯ですが、
キャシディさんは実にカッコいいです。
ボヤルチコフ版ほどではありませんが、
あちこちで踊りも披露してくれるし。(^^)
●1幕1場〜2場
シュタルバウム家のクリスマス・パーティ。
ツリーの星に明かりがいれられると、突如、
ロイヤル版の天使軍団のようなな羽を付けた天使が現れ、
人々の間を抜けて舞台袖へ。びっくりするクララ@神戸さん。
でも、他の子供や大人は気付きません。
会場に潜り込んでいたドロッセルマイヤーは、
その様子を見て、彼女が探し人であると確信します。
神戸さん、劇的というほどではありませんが、
上手になっていました。加えて表情が豊か。(^^)
演技は良いのに、なぜか笑顔は1種類のさいとうさんに対し、
神戸さん、笑顔だけでも何種類もあります。
Kバレエ・スクールの子供たちによる人形劇は、
人形の国の出来事が、御伽噺風に演じられます。
このちびちゃんたち、ちゃんと人形の動きになっていて、
思わず拍手。(^^)
子供たちや大人の群舞、さすがに狭そうで、あまり踊りません。
でも、男性も女性も、子供の真似が上手いなぁ。(^o^)
特にフリッツ役の酒匂さんが芸達者。
そうそう、ここの大人の中には名物の酔っ払いおやじがいて、
群舞シーンでも酔っ払いの踊りをするのですが、
昨夜は一段と酩酊していました。(^O^)
フリッツ騎馬隊の音楽では、ラジコンねずみが舞台を駆け巡り、
フリッツたちが追いまわします。ねずみが跳梁する屋敷って...。
しかも、手づかみして抱きかかえるし。(^^;)
せめて尻尾をつまみ、嫌そうにぶら下げたほうがいいのでは、熊さん。
パーティはお開きとなり、人形を取りに戻るクララ。
すると、ねずみがくるみ割り人形を誘拐していきます。
ためらってから、後を追うクララ。
ここのねずみの被りものがまたリアルで、
しかもダンサーの仕草が秀逸。(^^)
赤坂バージョンでは、舞台近くの観客席ドアから登場すると、
観客席の子供たちにちょっかい出しながら舞台へ。
狭い劇場を逆手にとった演出でした。(^o^)
●1幕3場〜4場
ここのねず王の登場場面、
もみの木が大きくなる、あのゴージャスな音楽を使い、
赤く照らされたスモークの中から現われるのですが、
ハリウッド映画的で、個人的に気に入ってます。
会場からも拍手もらってたし。(^O^)
また、舞台中央のセリ穴(?)から一匹ずつ、
ひょこっと顔を出し、周囲をきょろきょろ、という仕草が、
本物っぽくていい感じ。ちょっとツボにはまりました。(^O^)
人形の兵隊とねずみたちの戦いでは、
大砲の玉が観客席まで転げ落ちてました。(^o^)
テレビをご覧になった方はご存知だと思いますが、
ここのねずみたち、石弓で反撃するんですよ。
チーズの弾をくらった人形隊長@宮尾君は負傷昏倒。
とどめを刺そうとするねず王を、
クララはスリッパではなく、キャンディーの棒で一撃。
退散するねずみ軍団。
倒れる人形を助けてと、ドロッセルマイヤーに懇願するクララ。
ねず王の呪いが一瞬弱まり、元の姿に戻った隊長は、
人形の国に来て、我々を助けてほしいとクララに頼みます。
この場面、舞台中ほどに薄幕が降りていて、
さあ、出発! の合図でその薄幕が波打ちながら床に落ちると、
白銀の世界が広がるという、実に効果的な舞台変換。(^^)
大道具小道具が取り払われ、若干人数を減らした群舞たち、
ボリショイ群舞並に足音がしません。(^^)
ここはやはり緩急つけて、穏やかに舞う粉雪や、
強風吹き付ける吹雪の様子を表現してほしいところですが、
前述のように、オケの演奏が速く一本調子なので、
八甲田山雪中行軍のようです。(^^;)
音楽が速くても、慌てふためいた感じにならないところは、
大したものですが。(^^)
...新国の広い舞台とアニハさんの指揮で、
彼らを躍らせてあげたいなぁ。
●2幕1場〜2場
怪しいマントをかぶり、
能面のような顔(仮面)の人形集団に迎えられるクララたち。
本来はスペインや中国の人形で、彼らも呪いがかけられている、
という設定です。このあと、それぞれのダンス・シーンでは、
最初にマントがさっと取り払われるという演出があります。
王様たちに挨拶していると、乱入してくるねず軍団。
けれど人数も少なく、あっさり制圧され、武装解除。
ねず王の武器を手渡されたクララは、
クラカトゥクくるみを割ります。
元の姿を取り戻す近衛隊長とマリー姫@浅川さん。
人形たちも元に戻り、近衛隊長とマリー姫の結婚式を兼ねた、
祝いの踊りが始まります。
花ワルは、東野、白石、輪島、西野、次代の中堅どころ4名。
実は内心、業績が悪く公演数も減り、
ダンサーたちの士気も落ちてるんじゃないかと、
心配していたのですが、鍛錬はきちんと続けていたようです。
以前よりも踊りは良くなっていました。(^^)
アラビア人形は樋口さん、ヴィユウジャーニンさん、石黒さん。
彼らもいい感じ。樋口さんは、変わった解釈の踊りで、
好みは分かれるかも。
スペイン人形4人は、ちょっといただけない。
フラメンコでも観に行って、あの独特のキレと動きを、
もっと勉強してくるように。
中国は副さんと小林さん。
小林さん、悪くはないけれど、わずかに音楽から遅れる。
その点、副さんは、あの速い音楽にもかかわらず、
余裕すら感じさせるきびきびした良い踊り。(^^)
ロシアの2人組は、荒井さんと長島さん。
テレビ以上に気合の入った踊りに、会場から拍手喝采。
いや〜、ご苦労様でした。(^o^)
ここのフランスは女性3人。
悪くはないけれど、まだ線が細く、振りも甘い。
プロなら、もっともっと練習だよ〜。(UU)
宮尾君は...不安が現実のものとなってしまいました。
踊りはいいんです。
もともと私の好きなスタイルの踊りをしてくれる人で、
さらに磨きがかかった感じ。
でも、練習時間が足りなくなってしまったのでしょう。
終盤息があがってしまい、精彩がなくなっていくのが、
手にとるようにわかるのです。(>_<)
しかも浅川さんが後半ほど調子を上げてきたので、差が歴然。
KバのPRをしなくちゃ、というのは彼の本心だと思います。
でも、それでは本末転倒だよ〜。しかも君は今、
まさに伸びようとしている真っ最中なんだから...。
それに対して浅川さん、さらにグレードアップしていました。
力強く正確な動きはそのままに、
柔らかさも表現できつつあります。(^^)
とにかく、あの速い演奏に余裕をもってあわせてくるのは、
半端な鍛え方ではできないでしょうね。
お釣りのない動きも見事。このまま素直に伸びてくれれば、
彼女は世界級のダンサーになることでしょう。(^^)
* * *
バレエの日記やブログ、新しい人の探索もしていますが、
なかなか読みごたえのある方がいなくて、
やはりお馴染みさんのところへお邪魔してしまいます。
拝読していて、楽しいですからね。(^^)
ところが、
普段からバレエ公演にあしげく通われているのに、
なぜかボリショイとマールイ、そしてKバは、
ご覧にならないという方が、少なからずいます。
ボリショイはまあ、クセのあるところですから、
たしかに好みが分かれるとは思いますが、
あれだけレベルが高いのですから、
観ないのはもったいない気がします。
マールイとKバは、誤解されているのでしょうね。
昔一度観て、大したことないや、これだったら、
贔屓のバレエ団で十分、ということなのでしよう。
特にKバが顕著に良くなったのはこの1年ですし、
あのチケ代ですから、敬遠されても仕方ないでしょう。
それだけに、今回は1万円ポッキリ、
ぜひ挑戦していただきたかった。
それと熊さん「だけ」ファン。
Kバのファンでも、バレエのファンでもないのですね。
せめてその人たちだけでも、
他のキャスティングの日にも足を運んでくれればねぇ。
間接的に熊さんの応援になるんだよ、というのはダメなのかな。
* * *
08年のバレエ観納めが、
好きなバレエ団の楽しい舞台というのはいいですね。
幸せな気持ちになれます。(*^^*)
来年も、良い舞台にたくさん出会えますように。
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