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2026年10月07日05:22

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未来の予測が外れるとき

若いころ、SF好きの友人たちと未来の話をしていて、よく妙な感慨を抱いた。1980年代の頃である。
コンピュータ創生期(1950年頃)の人々は、その三十年後に計算機がゲームや趣味の道具として広く使われる未来を、どれほど想像していただろうか。巨大で高価な計算機は、科学計算や軍事や企業実務のためのものとして構想されていたはずで、子どもじみた遊びや、暇つぶしや、熱中の対象になるとは見えにくかっただろう。
ところが現実には、コンピュータは仕事の道具である以前に、あるいはそれと同時に、遊びと没入の装置になった。

逆に、同じ時代に思い描かれた宇宙進出の未来は、思ったほど実現しなかった。月面基地もなく、火星に人も送り込めず、まして木星圏など遠い。
これは、1980年代にはムーンベースが、2001年には木星有人探査機ディスカバリーが・・・・という未来ではなかったということ。
技術は進んだのに、人類は星々へ大きく広がるより先に、情報空間の方へ深く沈んでいったように見える。未来は外へ伸びたというより、内へ潜った。

その内向きの未来の一つとして、2026年の現在、退職後の高齢者がAIとの会話を楽しんでいるという光景がある。これもまた、1980年代には案外見えにくかった未来ではないかと思う。AIは巨大システムや専門家の補助や脅威としては想像されても、暇を持て余した老人の雑談相手、思索の壁打ち相手、知的遊具になるとは描かれにくかっただろう。だが実際には、技術は大きな制度変革だけでなく、生活の襞に入り込み、個人の手持ち無沙汰や思考の癖に寄り添うかたちで定着する。

ここからもう一歩考えを進めると、物語の側もまた、現実の進路とは別の仕方で未来を開いてきたことに気づく。たとえば別の恒星系のハビタブルゾーン惑星を開拓する物語は、光速という物理的制限をFTL装置という一つの仮想によって取り払うことで成立する。現実には重すぎる恒星間移動を、物語はひとつの飛躍で越えてしまう。そうして人間は、宇宙規模の舞台で、なお人間サイズの欲望や冒険や帝国や悲劇を演じ続けることができる。

だが現実の人類は、外宇宙へ飛び出す代わりに、むしろ繭の中へ入っていったのかもしれない。快適な情報空間、仮想的な交流、画面越しの没入、移動せずに得られる満足。そうした「繭型人生」は、ディストピアとしてだけでなく、ある種の魅力も備えている。映画『マトリックス』のような人生も、見方を変えれば必ずしも悪いとばかりは言えない。そう考えると、そもそも我々自身が、胡蝶の夢のように、仮想の層の中で生きているのではないかという夢想も自然に出てくる。ここで思い出されるのが、P・K・ディックである。現実とは何か、経験の真偽はどこで分かれるのか、我々が現実と思っているものは誰によって保証されているのか。ディックが生涯にわたって反芻した問いは、仮想空間が日常化した現在、もはや純粋なSFの夢想ではなくなりつつある。

こうして考えると、『風の谷のナウシカ』の構図も別の角度から見えてくる。
※ここから先は、原作漫画『風の谷のナウシカ』終盤の内容に触れます。未読の方はご注意ください。



環境汚染によって居住困難になった世界で、旧人類はその責任を新人類や菌類や巨大節足動物を含む生態系に転嫁し、自分たちは安全な「墓」に退いて、AI的な管理システムに守られながら安眠をむさぼる。これは単なる避難ではなく、環境改変の負担を他の存在に押しつけ、自分たちは帰還の時だけを待つという構図である。言わば、存在論的な搾取である。

私には、ナウシカが怒っているのは、この搾取に対してのように見える。世界を壊した責任を自ら引き受けず、別の生に後始末を任せ、自分たちは清潔な救済だけを受け取ろうとする。その傲慢に対して、彼女はオーマに施設ごと焼き払わせる。そこでは善悪の単純な対立よりも、生を道具として扱うことへの根源的な拒絶が働いているように見える。繭型人生の究極形としての「墓」は、まさに宮崎駿が許しがたいと考えたものなのかもしれない。

未来予測の外れ方を振り返ることから始めて、ここまで来ると、問題は技術そのものではなく、人間が技術を用いて何を夢見、何から逃れようとし、どこへ責任を転嫁するかにあるように思えてくる。外宇宙へ出る夢も、内宇宙へ潜る夢も、仮想現実も、AIとの会話も、すべては「与えられた現実をどう乗り越えるか」という同じ問いの変奏なのかもしれない。だがその乗り越え方が、単なる想像力の飛躍なのか、責任の先送りなのか、生の形そのものの更新なのかは、慎重に見分けなければならない。そこを見誤ると、夢は容易に繭となり、救済は容易に搾取へ変わる。
そうなると、楽しいはずの夢が、悪夢に変わるのである。

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