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2026年04月18日00:05

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フランス近現代曲におけるフルートとハープ

 もう、すっかり春、というよりは初夏と言ってもいいくらいの天候ですが、今日は1913年にこの曲が初演された日です。
https://www.youtube.com/watch?v=fYFRaIhj4To

 ドビュッシーの交響組曲「春」です。
 もっとも、この曲は元々管弦楽に2台のピアノ、女声合唱が加わるものとして、1886年から1887年にかけて作曲されていたのですが、この版は、製本所の火災によって焼失してしまいました。なので、上掲動画で聴かれる版(今日、一般的によく演奏される版)はその版ではありません。
 動画の版は、1912年になって、ドビュッシーの指示を受けたアンリ・ビュッセルという人が、元の合唱部分も管弦楽で奏する形での新たなオーケストレーションを行ったものです。
 このビュッセルという人は、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルらの影に隠れて、フランス本国以外ではほとんど知られていませんが、101歳の長寿を全うして、作曲家、編曲家、指揮者、教育者としてマルチに活躍した人で、本国では、今日のフランス音楽があるのはこの人のおかげであるとまで見られている人です。
 例えば、作曲家としては次のような作品を遺しています。
Piece de Concert, Harp & Chamber Orchestra:https://www.youtube.com/watch?v=RkW0ov5RamI

Petite Suite:https://www.youtube.com/watch?v=YuIZYBaNLt4

Le sommeil de l enfant Jésus flute, harp and organ:https://www.youtube.com/watch?v=PNcMH6eQQJ0

 遺した作品は、もちろんこれだけではないですが、特にこれら3作品には、いかにもこの時代のフランスの音楽家らしさが表れています。
 それは編曲作品についても表れていて、この人はドビュッシーの作品については、冒頭の交響組曲「春」の他にも小組曲の編曲も行っているのですが、ここにもやはり、フランス音楽を感じさせるある楽器が登場しています。
ドビュッシー/小組曲:https://www.youtube.com/watch?v=VMqCsyJKvso

 お気付きでしょうか? これらの作曲、編曲作品には、ドイツ・オーストリー系のクラシック曲の演奏ではあまり見られないハープが使われているのです(ちなみに、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスといったドイツ・オーストリー系のクラシック作曲家の交響曲にハープを使ったものは1曲もありません)。
 実は、フランスにおけるハープの歴史は、18世紀にマリー・アントワネットが愛用して貴族の間で流行したことに始まり、その後、19世紀初頭にセバスチャン・エラール(ピアノ製造技師として有名)が現代のダブル・アクション・ペダル・ハープを開発したことで、技術・音楽的に黄金期を迎え、フランスは19世紀後半にはハープの名手・名教師を輩出する「ハープ王国」としての地位を固めていたのです。
 ハープだけではありません。
 下掲動画でも説明されているとおり、フルートという楽器は確かにドイツ人のテオバルト・ベームによって大幅に進化、改良されましたが、それを最初に採用したのはパリ音楽院で、以来、フランスはフルートについても19世紀後半には一大先進国となっていたのです。
https://www.youtube.com/watch?v=XOlEp1vkVHk

 もちろん、ドイツ・オーストリー系の作曲家の手になるものでも、ヘンデルのハープ協奏曲やモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲のようなハープやフルートを用いた名曲もあるにはあります。
 でも、それらはどちらかというと単発的というか、突然変異的な感じで、後が続いていません。
 これに対し、楽器の改良に支えられた19世紀後半から20世紀初頭のフランス音楽は違いました。まず、次のように、フルートまたはハープの活躍する名曲が次々と生まれました。
パヴァーヌ/フォーレ(1887):https://www.youtube.com/watch?v=wQDoN40-_C4

牧神の午後への前奏曲/ドビュッシー(1894):https://www.youtube.com/watch?v=k5oaRGAu0VE

神聖な舞曲と世俗的な舞曲/ドビュッシー(1904):https://www.youtube.com/watch?v=7pIFmoyt9EM

序奏とアレグロ/ラヴェル(1905):https://www.youtube.com/watch?v=rv5vXFaKkIg

亡き王女のためのパヴァーヌ/ラヴェル(1910):https://www.youtube.com/watch?v=mB4OgWJZdtE

 しかも、フランスでは、このフルートまたはハープを活かした演奏技法が承継されたのですが、ここにこそ教育者としてのアンリ・ビュッセルの力が発揮されました。
 ビュッセルは前衛的な破壊を推奨する教師ではありませんでした。
 むしろ彼は、「伝統を深く理解した者だけが、新しい音楽を生み出せる」という立場を貫いたのです。
 この姿勢は、急進的な現代音楽が台頭する中で、ある種「保守的」と見なされたかもしれません。
 でも、結果的に、フランス音楽のアイデンティティは彼によって守られ、次世代へ受け渡されたのです。
 実際、フランス音楽伝統のフルートまたはハープを活かした曲はビュッセルの門弟の作品にもしばしば見られます。
・ジャン=ミシェル・ダマーズ
ハープと室内楽のための協奏曲:https://www.youtube.com/watch?v=OWLcVZebZz0

フルートとハープのためのソナタ:https://www.youtube.com/watch?v=DYaf1kGCxpE

・アンリ・デュティユー
フルートとピアノのためのソナチネ :https://www.youtube.com/watch?v=qGiifpVd44Y

・ウジェーヌ・ボザ
 フルートとハープのための2つの印象:https://www.youtube.com/watch?v=Uud1QKscuRQ

(個人的にはダマーズのハープと室内楽のための協奏曲などはかなり好きです)。
 フルートとハープの組合せは、現代音楽には非常にピッタリはまる組合せであり、注目度の高さでは群を抜いてます。そして、これらの門弟がビュッセルと同様、音楽学校で教鞭をとっていることを考えると、おそらく、今後しばらくは少なくともフルートとハープの世界では、フランス音楽は世界をリードし続けるものと思われます。
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