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2025年08月11日00:00

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映画『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』

『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』(アメリカ)
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シリーズ最終作とトム・クルーズ本人が明言しているので間違いないのだろう。これまでの敬意を表してIMAXレーザー鑑賞を選択。冒頭に短いながらもトムからのメッセージが流れる「これはみなさんのための映画です」。年に何回か、これだからハリウッド映画には敵わない!と思わざるを得ない作品に出会うことがあるが、このシリーズはその最右翼だった。映画とはまずは娯楽=エンターテイメントが基本であり、鑑賞中は日常を忘れて作品に夢中になれる没入感が求められる。それを徹底的に追求するのがトム・クルーズのスタンスであり、イーサン・ハントはまさに“命を懸ける”という言葉通りのミッションを遂行し、幾度となく世界の危機を救ってきた。
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今回はその集大成であるべき最終作なのだが、物語のスケール感を追い過ぎたせいか、ストーリーのあちこちに破綻を感じる・・・ツッコミどころ満載という意味ではシリーズ最多ではないか。だがそれを割り引いてもスペクタクルの連続と大規模な舞台装置、ノースタントアクション、いつもより露出多めのトムの肉体美にも惚れ惚れしつつ、なにより強調されていたのはイーサンが守り続けてきた仲間との絆。今回はIMFチームと一緒に行動する時間が少ないのに、信頼関係があってこその連携した作戦遂行が過去作以上に強調される。このシリーズでは珍しいラストでのメンバー集合シーン。台詞が一切ないのに感無量で、幾度となく仲間を失いながら“関係のない全ての人たちのために”努力してきたイーサンのラストカットに相応しい終焉。そしてこの世界が永遠に続くことを示唆している。
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前作でまさかのイルサ(レベッカ・ファーガソン)退場に驚嘆する余韻もなく、暴走したAIを制御する鍵をめぐる争奪戦が展開した『デッドレコニング』から2ヶ月後。イーサンはガブリエル(イーサイ・モラレス)を追う過程で逆に捕まってしまうがそれも作戦内。前作でエンティティに仕えていたガブリエルを通じて『Mi:3』においての生物兵器ラビットフッドこそがAI=エンティティのソースコードのベースであったことをつきとめる。直接交信(これもエンティティの企て)を果たしたイーサンは、世界各国の核爆弾が4日後に発射され戦争が勃発することを知った。核保有各国のシステムがエンティティに汚染され、瞬く間に滅亡する危機に瀕した人類を救うべく、イーサンはアメリカ政府に支援を要請。かつてのCIA長官で現大統領のエリカ(アンジェラ・バセット)の理解を得てロシア海域へ向かう。
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今回のIMFチームにはガブリエルとの鍵争奪戦で生死を共にした天才スリ師のグレース(ヘイリー・アトウェル)、イーサンに命を救われた殺人マシーンのパリス(ポム・クレメンティエフ)、そしてそのパリスを連行する過程で巻き込まれ仲間に加わったCIAのドガ(グレッグ・ターザン・デイヴィス)。加えてベンジー(サイモン・ペッグ)は過去作よりも頼もしいリーダーぶりを発揮。だがルーサー(ビング・レイムス)は前作でエンティティに悟られずにコーディングの痕跡を見つけるとして、オフライン環境へと姿を消していた。地下坑道に隠れてポイズンピル(対エンティティのデジタル毒薬)を仕込む作業に没頭す姿で登場するが、何らかの病気を抱えている描写あり。
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前半はガブリエルとのポイズン攻防戦と、刑務所でのパリス奪回シーンのアクション以外は、ほぼ説明的な会話劇が続くので退屈感が否めない。関係者のやりとりとイーサン達の会話を交互にはめ込む等の映像的工夫はされているが、それが余計に段取りを難解にしている要因にも思える。この前半を乗り切らなければ、後半のカタルシスを堪能できないというのが本作の致命的な課題。前記の生物兵器との繋がり(何故ロシア軍が持っていたのか等)に納得しようと拘り過ぎると本来のエンタメ部分を雑念なく楽しめない。
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活劇として動きだすのはセヴァストポリ号の座標を求めて、ロシアとの前線海域に来たイーサンが、海上のオスプレイから躊躇なく海に落ちていくところから。どういう確信があったのか米軍潜水艦に上手く救助され、そこでポトコヴァの座標を手に入れたイーサンは、軍の特殊潜水服を着て単身で沈没するセヴァストポリ号へ侵入する。エンティティのソースコードが入ったポトコヴァを確保して、海上へ脱出するまでの海底シーケンスが本作の大きな見せ場。潜水艦内部は空気もあるため海水と空間が何度も天地がひっくり返るという過去にない状況に挑むイーサン。次々と起きる予想外のハプニングへのリアクション、対処法、次に打つ手が矢継ぎ早に展開されて息つく暇がない。
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水中アクションといえば『ローグ・ネイション』を思い出すが、それをはるかに凌ぐ臨場感と逼迫感を堪能できるのは、潜水艦内が実際に回転するセットを製作したことによるもの。加えて海上までの脱出劇も、いくら座標が判明しているとはいえ、あり得ない確率で氷上に減圧室を作ってイーサンが浮上するのをグレースが待っている。この奇跡の生還を奇跡と思っていないようにロマンス的なムードで成功を称え合う。これはエンティティでも計算不可能だったに違いない。未来予測能力で人間の行動を見切っているのが、例え非合理であってもイーサンの仲間を信じる行動原理は予測不能。彼までをも操ろうとしたエンティティの誤算はここから始まっている。
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シリーズ1作目でペンタゴンの防衛システムを管理していたウイリアム・ダンロー(ロルフ・サクソン)が再登場。彼はあの事件がきかっけでキトリッジ(ヘンリー・ツェニー)によってアラスカに30年間左遷されていた。イヌイットの妻と出会えたことでイーサンを恩人だと言っていたが、それはいくらなんでも違う気がする。しかもあの時に落としたナイフをイーサンに返すというシチェーションだが、あのナイフは敵側のクリーガー(ジャン・レノ)の持ち物なので、イーサンに返却するのはお門違いと苦笑してしまう。しかもこのナイフはその後ベンジーが持っていて、最後はパリスが使うというのが可笑しい。このナイフでパリスがガブリエルに復讐することを予測していたがハズレだった(今回は予想がことごとく当たらなかった)。
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納得できないのが全面核戦争を避けようと大統領が苦悩する場面。核兵器をエンティティに乗っ取られていく過程で、アメリカの他にイギリス、中国、ロシアがまだ汚染されていない段階。そこで敵対国の中国、ロシアが自国を守るために先に核の発射ボタンを押すこともできたはず。つまりアメリカがやりかけていたことを敵対国側はやっていないのだ。それをもしアメリカが核を撃っていたら完全にエンティティの勝ちだった。あそこで葛藤する大統領の思考は浅過ぎて響かなかった。
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最終決戦はエンティティの避難先「終末の保管庫」がある南アフリカ。ここでついに予告編で度肝を抜かれた複葉機での空中スタントに突入するのだが、イーサンとIMFチームはここでもほぼ別行動。お互いが離れた場所でそれぞれエンティティを封じ込めるための勝負に挑む。イーサンがガブリエルからポイズンピルを奪取し、ポドコヴァに接続した瞬間に、グレースがハードドライブを引き抜くという実にアナログな手法に挑む。
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クライマックスの空中戦では旋回する尾翼にしがみ付いてガブリエルを追うイーサン=トム・クルーズがもはや正気の沙汰とは思えない。シリーズ最後にして最強最高のスタントシーンが長尺で続くが、この構成に最も割りを食っているのはガブリエルで、威厳のある悪役ぶりを発揮していた前作から一転、この最終戦でもキトリッジの乱入で知能的な行動を見せる場面もないまま憎まれ口だけを叩いて逃走する。前作で匂わせていたイーサンとの過去の因縁(マリーの存在はなんだったのか)も語られることなく最期を遂げる。ガブリエルへの復讐に執念を燃やしていたパリスとの決着も叶わなかった。
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因縁という意味ではキトリッジが現場に出向いているのだからウイリアムとの絡みも見せて欲しかった。それらのサイドストーリーを削ってでも、複葉機空中戦を長めの見せ場にするのも理解できなくはないが、伏線が回収しきれなかった歯痒さは大いに残った。ポイズンピルに接続されたポドコヴァからルーサーのメッセージが流れる「大義は善に比例する。それは君の運命だ。」1作目から登場してきたルーサーの言葉はシリーズのラストを飾るに相応しい重みがあった。そしてこのメッセージもやはり5秒後に消滅するというオチあり。人混みにまみれたロンドンでの無言解散は、格好良過ぎてどうにも続編を期待したくなる雰囲気があった。だが、全力疾走する姿が人類で1番美しいトム・クルーズによるイーサン・ハントは、ここで幕を閉じるのがちょうどよいとも心底思う。
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