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2024年09月04日00:00

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映画『マッドマックス:フュリオサ』

『マッドマックス:フュリオサ』 (オーストラリア, アメリカ)
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『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015年)前日譚。シリーズ独自のプリクエルストーリーが否応なしに展開していく世界感で崩壊から45年後、現世なのかも判らない渇き尽くされた砂漠の大地。傍若無人に暴れまわるバイカー軍団は前作の空気を完全再現しており、前日譚としての高揚感を掻き立てる要素が随所に散りばめられる。
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フュリオサの左腕が義手になった経緯、今回は登場しないマッドマックスの存在を匂わせるワンカット、ウォーボーイズ、ウォータンク。とにかく爆走し続けた前作と比較すると、スペクタクルアクションを維持しつつも、ストーリー重視に変調されたエモーショナルな要素が盛られている。
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フュリオサの過去は前作でも大枠が台詞で語られているので2作品は違和感なく融合できる。他作品を比較に出すのも失礼だが『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』との決定的な違いはここにある。フュリオサが目指していた故郷「緑の地」をシリーズ史上かつてない唯一無二の楽園として描く冒頭。ここで深い郷愁に駆られるのは、荒廃した同じ場所を前作で見ているからであり、そこにいる少女フュリオサ (アリーラ・ブラウン)と母メリー・ジャバザ(チャーリー・フレイザー)の姿だけでも目頭が熱くなる。
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このように前作との“繋がり”を補完しながら紡がれるストーリーは、9年前の時点で構想が完成されていたらしい。バイカー愚連隊に拐われたフュリオサを救うため、乗り捨てられた破損バイクのパーツを手早く組み替えて跨るメリーの戦士ぶりにも、これが語られていたあの母親か!という連作の醍醐味に心が躍る。
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意外だったのはイモータン・ジョーが母親の仇ではなかったこと。フェリオサのジョーへの怒りは、民衆が苦しめられてきた大義を担っての復讐だったのだと本作で知ることになる。しかもシタデルを支配しているイモータン・ジョー(ラッキー・ヒューム)は今回やや影が薄く、メリーを処刑したディメンタス将軍 (クリス・ヘムワーズ)こそが最狂最悪のヴィランとして裏主人公のポジショニングされる。
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航空用7気筒エンジン搭載のモンスターバイクを2台繋いだBMW R18を愛車とする男は、野心と暴君を兼ね備えた行動力で物語を支配する。イモータン・ジョーをも出し抜く腹黒さをみせながら、ガスタウンやバレットファームの陥落を仕掛けて猪突猛進。だが常に威厳を誇示しつつ、なんとなく中途半端感が漂うカリスマ性の薄さは、クリス・ヘムワーズならではの人物像でベストキャスティング。絶対的権力者に君臨するとは思い難い稚拙な部分が見え隠れする小物っぽさも面白い。
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一方のフュリオサは目前で母親を殺されたその瞬間から、我々が知る前作の人物像形成が始まり、復讐への修羅の道を歩みだす。少女時代を演じるアリーラ・ブラウンが名演で出番も長いので、アニャ・テイラー=ジョイの登場は中盤まで待たされる。『スプリット』(2017年) の女子高生役から注目株だったアニャは『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021年)『ザ・メニュー』(2022年)でも類い稀な個性を放ち、彼女の演じるフュリオサが鑑賞前の本作最大の楽しみだった半面、シャーリーズ・セロンのフュリオサへ果たしてどう上手く繋いでいくのかの不安も過ぎる。それは眼力による強烈な存在感から始まり、色々な部分で異りがあった。
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屈強なシャーリーズ版フュリオサとの差異を感じざるを得ない線の細さ。アリーラ・ブラウンからアニャ・テイラー=ジョイに演者が変わる境目はVFX処理していると公表されているので、そうであれば前作の冒頭に繋がる本作のラストシーケンス(ウォー・タンクを奪って逃走する)でも同様の処理を期待したかったところ。実際によく観ると体格の加工処理が入っているようにも見えたが実態は不明。復讐心を秘めた寡黙でクールなアニャ版フュリオサは、鋭さが研ぎ澄まされ台詞は30行程度しかないそうだ。
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少年を装いシデタル内で肉体労働に従事→警備隊長のジャック(トム・バーク)指揮下で物資運搬に参加→敵攻撃対応行動が認められてウォー・タンク警備副官に任命。イモータン・ジョーの子産み女=ワイブズが幽閉されるハーレムに遭遇するのもこの頃。信頼するジャックをも失いながらも、ついにディメンタスを追い詰めて始まる長い会話のクライマックスシーンは2人の生き様の対峙となる。抵抗できない状況でもまだフュリオサに高慢な態度を取るディメンタスは序列認識が強い。彼もこの狂気の世界で家族を失っているのだが、それを受け入れて同族と化した自覚がある故の覚悟なのだろう。
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フュリオサは母親が磔刑された日から苦しみの意味と価値を見出すために守り続けていた植物の種を取り出す。これこそがメリーの思いを継ぐ未来が詰め込まれた切り札であり、これが本作の空気を一変させる。感情の拠り所に戸惑うあまりにもクレバーな決着は、深い叡智を感じると同時に衝撃的。その後、彼女が警備大隊長に任命される背景は、明らかにディメンタスを始末した功績からなのだろう。
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執念のみに囚われてきた彼女がそれを乗り越え、ワイブズ達を連れ出して真の英雄となるきっかけの脱出劇を企てる。ポストクレジットでカットインされる鳥頭蓋骨のボブルヘッドは、前作でニュークス(ニコラス・ホルト)が運転していた車のダッシュボードにあったもの。『マッドマックス 怒りのデスロード』に繋がる見事なラストだが、もしかしたらマックスとニュークスの過去物語でもう1作あるのではないかと期待してしまう。いずれにしてもシリーズ新作によって、前作のプライオリティを更に向上させた事例は珍しい。
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