もうひとつ東京大会からの続編。男子走り高跳びで全試技を含めてトップ同位時に行うジャンプオフを行わずに、金メダルを分けあって美談となったムタズエサ・バルシム選手(カタール)とジャンマルコ・タンベリ選手(イタリア)のパリ五輪。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979993825&owner_id=4380531
今大会でのふたりは不運が重なります。タンベリ選手が開会式で結婚指輪をセーヌ川に落とした話までは笑って聞けるのですが、彼はその直後に腎臓結石を発症。応急処置で痛みに耐えながらの予選で何とか2m33を3本目で跳びますが満身創痍の状態。
一方のバルシム選手は予選の2m27の助走中に左ふくらはぎを痛めて倒れ込み動けなくなります。慌てて駆け寄ったタンベリが、トレーナーよりも先にバルシムの患部を診ているシーンが映像で流れて感動を呼びました。バルシムは2m27を跳んで決勝に進出しますが振るわず4位。タンベリも結石が思わしくなく2m27でリタイヤ。それでもふたりは互いの健闘を讃え合っている姿を見せて会場を去っていきました。
因みに東京五輪の記録は2m37で、今回の優勝記録は2m36まで。しかもこれがまさかの2大会連続のジャンプオフ。ハミシュ・カー選手(ニュージーランド)とシェルビー・マクウェン選手(アメリカ)は決着をつけるべく競技続行を選び、勝ったのはカーでした。この選択の裏には金メダルを分け合うことに対して、臆病者だとか弱虫だとか言われる過去の事例かららしいのです。自分にとってベストだと思える判断が重要なのに、周囲の非難中傷がアスリートの選択を苦しめるような事態は好ましくないです。
非難中傷を最も多く受けたのはこの人でしょう。女子ボクシング66キロ級のイマネ・ケリフ選手(アルジェリア)。XY染色体を女性が持つのは医学上異例なため、彼女をトランスジェンダーだと決めつける報道が流れだし、世間から厳しい非難を浴びることになりました。対戦したアンジェラ・カリニ選手(イタリア)が試合開始46秒で棄権したことが火に油を注ぐことになりSNSは大炎上。でもイマネの正体はアンドロゲン不応症=性分化疾患という病気を持つ歴とした女性。東京大会では準々決勝で敗れています。彼女が女子競技枠から外されたのはその後の国際ボクシング協会選手権。これは詳細を調べれば調べるほどスポンサーや委員会の利権が絡んでいそうで胡散臭い感じがしました。
棄権したカイニ選手が事態を察して声明を出したのは試合当日の夜→「私は参加資格についてコメントする立場にはありません。私がリングに上がったのは戦い、勝ちたかったからです。しかし鼻に強烈なパンチを喰らって耐え切れないほどの痛みに襲われた。2発目を喰らった時に呼吸ができなくなり、これ以上続けられないと覚って棄権を選びました。それ以上でもそれ以下でもありません。私は戦士ですが、戦士も時には降伏を選ぶものです。握手をしなかったのは、自分に対する怒りが強過ぎたから。イマネには謝りたい。彼女が世界中から叩かれている? 彼女には何の罪もありません」
こちらも話題になりましたレスリング女子フリースタイル50キロ級ビネシュ・フォガット選手(インド)。準決勝を勝ち上がって銀メダル以上が決定したところで体重超過による失格。計量結果は僅か100gの規定オーバーという際どいものでしたが、彼女の減量は凄まじくて断食はもちろん、夜通しのランニング、サウナ、水分も取れないどころか血液も抜いて、最後は髪の毛も切ったとのこと。準決勝までは計量が終わると一気に食事を摂って試合に挑んでいた訳ですが、試合間隔が短くなると体重を戻しきれない。
失格が決定したビネシュ選手はそのまま点滴治療で入院。オリンピックに懸けるアスリートの執念は、時に命の危険さえ伴う凄まじさを感じます。彼女は翌日に引退を表明「私の勇気は折れた。これ以上の力はありません。さようならレスリング」 一方で地元インドでは失格に抗議する運動が起きていて、CAS(スポーツ仲裁裁判所)へ銀メダルを求める提訴をしている模様。たしかに準決勝までは体重クリアで勝ってきたのだから、銀ではなく銅メダルはあげてもいい気はしました。でも見た感じこのビネシュ選手、体格的にもうひとつ上の階級でもっとがっつりパワーを付けた方が強そうな気がしたのも正直なところ。
インドのレスリングといえばアーミル・カーンの映画『ダンガル きっと、つよくなる』が自国で大ヒットするくらいの人気スポーツで注目度が高い。ビネシュ選手にはもう1度大会にチャレンジして欲しいとも思いましたが、実は彼女インドレスリング連盟の会長を相手取ってセクハラ訴訟(連名)を起こしているそうで、後進のためインドのスポーツ文化環境を、クリーンで真っ当なシステムにするという大きな使命が待っているようです。これも後々映画にできそうな気がしてきますね。
ログインしてコメントを確認・投稿する