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2024年06月29日06:25

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映画『コカイン・ベア』『茶飲友達』

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『コカイン・ベア』(アメリカ)
飛行中のセスナに積まれていた訳ありの薬物がギャングの内輪揉めで地上に投下され、ジョージア州の森林に落下。その薬物=コカインを大量摂取した森のクマが大暴れする本作は、B級映画好きの集まりでは昨年2月くらいから既に話題になっていた。あまりにB級過ぎて日本での劇場公開はないだろうと高を括り、U-NEXTあたりでの配信を待っていたところ、まさかのパルコ協賛によって映画館で観られることに狂喜した。
「この映画は薬物使用を推奨するものではありません」
という毒のある注釈付き宣伝も解禁されて過剰に期待が高まる。公開初日は主役のコカインベア=コーキーの着ぐるみまで来日(?)してパフォーマンスする力の入れようで、渋谷シネクイントでは声出し応援上映回も実現。
1985年に実際に起きた事件をヒントに製作されているが、冒頭の設定部分を除けば内容は全てフィクション。実話ではコカインを過剰摂取したクマはすぐに死んでしまったそうで、事件に関わった人物の証言と再現フィルムで構成されたドキュメンタリー番組も存在するらしい(日本未公開)。主役クマの種類は実話のアメリカクロクマから、ジョージア州には存在しないマレーグマに変更。これは仕草が人間くさいマレーグマの生態をトレースするパフォーマンスを取り込みたいという拘りからで、2020年版『チャーリーズ・エンジェル』で監督兼主演のひとりを演じたエリザベス・バンクスが諸々の方向性を定めている。彼女の狙いは「人間を殺しまくるクマを愛おしく見せる」こと。実事件で人間の不手際により犠牲になった野生のクマへのレクイエムを込めて、愚かな人間を血祭りに上げていくコカインベアの狂騒曲が本作の骨子なのだ。
軽妙なジョークを交わしながら登場する人物たちが、ラリったクマの餌食となって次々と殺されていく顛末を、アメリカンポップテイストで描くコンセプトは露骨な人命軽視となっておりB級映画の真骨頂。しかしVFXクオリティはA級でコカインベアの描写はリアル。ハイになってやたらペロペロと舐めまわす可愛いさから、突如恐怖の殺人アニマルへと変貌する容赦なき惨殺描写はゴア度も高くR15指定となっている。
名作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』主演で当時7歳だったブルックリン・プリンスが13歳に成長して登場。今回はほぼ活劇に徹しているが若干エモーショナルな場面もあり、良い意味で幼さが消えている姿を楽める。また、コカインを回収しようと行動するギャング売人のボスを『グッドフェローズ』のレイ・リオッタが演じている。残念ながらこれが遺作となってしまったが、子グマを守る親グマを躊躇なく撃とうとして「全てあんたのせいでこうなったんだ!」と言われても、なお改心しない悪役ぶりはクライマックスを盛り上げる。
失礼ながら予想に反して完成度が高く、アドベンチャーパニックとしてかなり水準は高い・・・とは言っても志は間違いなくB級なので、そのデリカシーのなさを笑い飛ばしながら楽しむことに徹底できる。
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『茶飲友達』(日本)
実際に摘発された高齢者向け売春倶楽部の事件を元にしたヒューマンドラマ。性的サービスを翳した違法ビジネスであるが故、刑事罰対象となる結末を迎えるのだが、そこに行きつくまでの人間模様を丁寧に描くことで、社会の盲点になっている空虚な心の燻りにスポットを当てている。
新聞の三行広告欄に小さく書かれた「茶飲友達,募集」から申し込んでくる高齢男性に、高齢女性を斡旋する売春組織ティー・フレンドを運営する主人公の佐々木マナ(岡本玲)。働く高齢女性=ティーガール達は、介護疲れの無気力症、極度のギャンブル依存症、万引き常習犯など等の日常生活からの逸脱者。彼女たちはここで働くことで稼ぎ以外に心の虚無感を埋めることに気概を持っていた。働く若いスタッフ達も社会に居場所が見つからない閉塞した人生に行き詰った連中。そこに集まり共感を共有することで仲間意識を持った働き甲斐を得ていた。孤独に耐えられず温もりを求める男性高齢客もまたしかりで、これら社会経済のしくみから外れた場所に位置する人々の居場所を提供するのがティー・フレンドのコンセプトだった。
だがある客が起こした事件がきかっけで、ティー・フレンドは突然として崩壊していく。マナが築いてきたそのコミュニティは、関わる全ての人が幸せになれる完璧なものだったはずなのに、実際は嘘偽りを抱えて虚栄を張った者達の脆い城だったことが露呈される。次々と関係者がその場を去り、独りになっても事態を受け入れようとしないマナが、警察で取調べを受ける場面が印象的。自分の肉親と断絶状態にあるマナは、その寂しさを埋めるために他人の孤独を利用して商売をしていたのだと指摘される。しかもそれがあたかも路頭に迷う人々を救ってきた天使の如く自尊心を満たしていたということ。
絶縁されていたマナの母親が面会にくる場面は一見すると親子の和解のようにも思えるが、個人的にはマナの心傷に塩を塗られているのではないかと感じた。法律は時に残酷でそこに幸せを得る理由があろうとも許されることはない。そんな当たり前の結論に帰結するこの物語に、やるせない気持ちが残ることを否定できない。ティー・フレンドのメンバー達もその客も、大きく空いた心の穴を埋める手段はそう簡単には得られないであろうことは容易に想像できる。正しいことと幸せなことが合致しない物語に、少しだけ余韻を感じながらエンドロールを眺める。

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