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2024年04月14日07:16

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師匠[読書日記982]

題名:師匠
著者:立川 志らく(たてかわ・しらく)
出版:集英社
価格:1700円+税(2023年12月 第2刷)
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ご存じ立川志らく師匠の『師匠』を読みました。
もちろん、志らく師匠の『師匠』、立川談志のことです。

帯の惹句を引用します。

“立川談志という
 落語家が
 大嫌いだった。

 人気落語家の自伝的エッセイ決定版!”

ちなみに、冒頭に次のような一節があります。
“かつて私は、立川談志という落語家が大嫌いだった。
 落語家のくせに議員になったり、テレビに出てくれば生意気なことばかり言って、こんな落語家がまともな落語をやるはずがないと思っていた。
 子どもの頃から好きだったのは、いわゆる「名人」と呼ばれていた本寸法(ほんすんぽう)の落語家だ。”(7p)

目次は、第一章から第四章までの構成です。

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印象に残った文章を引用します。

【第一章】から、師匠が食べ物を大切にした(しすぎた)話。
“談志の家には冷蔵庫が五、六台あった。もらい物はかたっぱしから凍らせて、のちに解凍して食べていた。
 談志曰く、
 「常に古いものから順に解凍して食ってるから、オレは新しいものを食ったことがない」
 この食に対するこだわりは、やはり戦争体験者だからであろうか。
 「近頃の連中は食い物を粗末にしすぎる。ちょいとばかり腐りかけた食い物があったとする。食って腹を下すのと捨てるのとで選択を迫られたら、オレは腹を下すほうを選ぶ」”(43p)
 ⇒“ちょいとばかり”という物言いに「さすが落語家」と思いました。

【第二章】から、前座修行中に談志のカバン持ちで初めてハワイに同行した時の話。
“「落語っていいぞ」
 談志がぽつりと言った。
 「世の中のすべてのパターンが落語にはあるんだ。こんないい商売はない。やめていくやつらはたくさんいるが、オレには信じられない。なんで落語を捨てることができるのか」”(80p)
 ⇒談志のこういった言葉を覚えているのも弟子ならではですね。

【第二章】から、アイマスクを忘れた談志に気を遣って、最新式の冷たいアイマスクを買っていった時のエピソード。
“「使い捨てのアイマスクか」
 談志はそう言いながら袋から取り出すと、アイマスクを目に貼り付けた。が、しばらくすると悲鳴をあげてそれを剥がし、投げ捨てた。
 「なんだこれは! 目がヒヤヒヤするじゃないか! おまえ、これはアイマスクじゃねえぞ。 サロンパスだ!」
 いや、サロンパスではない。まちがいなくアイマスクだった。しかしこの件以来、私は、「談志の目にサロンパスを貼った弟子」になってしまった。”(59p)
 ⇒自身のことも面白おかしく語るあたりが、さずが噺家です。

【第三章】から、二つ目試験で談志が弟子たちに言った言葉。
“「いいか、おまえたち、下手なやつに教わるなよ。下手に教わると下手になるからな。名人のテープでもレコードでもかまわないからどんどん覚えちまって、あとは自分でつくっていけ。
 誰に教わったんだと聞かれたら、談志だと言っておけ。ただし、最低限のルールはある。『地獄八景(亡者 戯)』のように(桂)米朝さんに特許があるような噺は、きちんと教わりにいけ。米朝さんに教わった、という事実がメモリーになるからな。以上。おまえたち、二つ目になっていいぞ」”(124p)
 ⇒“米朝さんに特許があるような噺”を尊重するあたり、談志もただの破天荒な噺家ではなかったということですね。

【第四章】から、師匠が番組に読んだ長嶋茂雄を待たせたエピソード。
“『家元ショー!! ダダダダッ談志ダ!』という番組があり、毎回ゲストを呼んで談志が対談するのだが、ゲストに長嶋茂雄を迎えた回でのこと、なんと談志は、あの長嶋を三時間も待たせた。
 しかも遅れてスタジオ入りした談志は、長嶋に頭を下げることもなく、こう言った。
 「あんたは天才だから、こんなことでは怒らないだろうな」
 「ハイ!」
 答える長嶋も長嶋であった。”(188p)
 ⇒“あの長嶋”三時間も待たせるとは。

随所で笑いを取りながら、師匠 談志を描いた素晴らしい内容でした。

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立川 志らく(たてかわ・しらく)
1963年東京都生まれ。85年、立川談志に入門。
95年、真打ち昇進。著書に『全身落語家読本』『雨ン中の、らくだ』『立川流鎖国論』『進化する全身落語家 時代と芸を斬る超絶まくら集』『決定版 寅さんの金言 現代に響く名言集』などがある。
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