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2024年04月07日12:38

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よもだ俳人子規の艶[読書日記981]

題名:よもだ俳人子規の艶
著者:夏井 いつき(なつい・いつき)/奥田 瑛二 (おくだ・えいじ)
出版:朝日新聞出版
価格:900円+税(2023年9月 第1刷)
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マイミクさんお薦めの正岡子規を語る対談本を読みました。
対談は映画監督・俳優の奥田瑛二さんと俳人の夏井いつきさんです。
表紙裏の惹句を引用します。

“三十四年の短い生涯で約二万五千もの俳句を残した子規。
中には遊里や遊女を詠んだ句も意外に多く、
そのような句においても透徹した観察眼が味わえる。
ユーモアあり、反骨精神あり、ダンディズムあり。
見つめるものをあるがままに切り取り十七音で詠む表現者。
そんな子規俳句を縦横無尽に読む、全三夜の子規トーク!”

目次は次のとおりです。
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 はじめに 「よもだ」という勲章 夏井いつき
 〈第一夜〉松山
 〈第二夜〉東京
 〈第三夜〉道後
 推し十句
 おわりに 子規のダンディズム 奥田瑛二
 子規の艶俳句

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印象に残った文章を引用します。

【はじめに 「よもだ」という勲章 夏井いつき】
“「よもだ」という言葉は一筋縄ではいかない複雑な意味を内包している。天野(祐吉)さんは「よもだ」という言葉について、別の文献で以下のように分析しておられる。
 標準語で言うのはとても難しい。が、乱暴を承知で言ってしま
 うなら、「反骨の精神をおとぼけのオブラートでつつんだよう
 な気質」ということになるだろうか。
そうなのだ。まさにこれが「よもだ」の真髄というヤツだ。”(5p) 
 ⇒コラムニスト天野祐吉さんの言葉が引用されているのは、彼も松山出身だからです。

【〈第二夜〉東京】《艶俳句の子規》から、子規の艶俳句についての夏井先生の説明。
夏井
“子規の艶俳句には、「傾城」の語が出てくるものだけでも、百数十句。そして、「傾城」というキーワード以外にも明らかに遊郭関連を示す言葉もたくさんある。「出女」「辻君」「禿」の他にも、「吉原」や「見返り柳」など。吉原遊郭の入り口に構えていた「大門」も、吉原情緒たっぷりに詠んでいる。”(67p)
 ⇒「傾城」が美女の代名詞であることは知っていましたが、遊郭の女性を指す意味もあるとは知りませんでした。

【〈第二夜〉東京】《等身大に描く》から、夏井先生の解説。
夏井
 "傾城の菫は痩せて鉢の中"
“遊郭に上がり、ふと室内を見渡すと、菫(すみれ)の鉢が置いてある。「ああ、こんなのを育てているんだな」と情緒を感じる一方で、よく見ると菫はか細く元気がない。野に咲く菫との雲泥の差を感じてしまった。これは実際に体験しないと、なかなか生まれない。絶対に実景だなと。”(74p)
 ⇒このほかに "傾城の噛み砕きけり夏氷" という句も紹介されています。

【〈第三夜〉道後】《生きている季語》から、奥田さんの説明。
奥田
 "ふきもせぬ風に落ちけり蝉のから"
“この句には、生きとし生けるものすべてにある時空というか、無常観というか、そんなものを感じてしまったんです。
 蝉については、諸説あるみたいだけど、古くから言われてるのは、幼虫として土の中で数年過ごすけど、地上に出てきても生きられるのは七日間で。(略)
 その切なさが根底にあって、そこに一種のロマンチシズムを感じてしまった。”(148p)
 ⇒蝉はにぎやかに鳴く虫なので、その短命さが更に切ない感情を呼びますね。

【〈第三夜〉道後】《「よもだ」対談》から、奥田さんが子規の俳句に惹かれる理由。
奥田
“子規の俳句には、彼の生きざまが表れてたよね。限りある命の中で、詠まれていく、子規の魂の声。そこには、この世を眺める温かな眼差しもあって。
 もちろん、健康面や経済面で、思うような人生を生きられなかった悔しさもあったんだろうけど、どこか「来る者拒まず」の明るさがあった。周囲の人を慕い、周囲からも慕われる、子規の天性の伸びやかさだよね。”(165p)
 ⇒子規が肺結核と診断されたのは二十二歳だったそうです。当時は不治の病だった結核と診断された時の気持ちはどんなものだったか想像できません。

夏井先生が出演される「プレバト!!」は毎回みて楽しんでいますが、それでも俳句に疎く、これまで句集を読んだことはありませんでした。
それでも頭の中で思いつく言葉が七五調になっていたり、やはり俳句は文化として染みついたものなのだと改めて感じました。

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夏井 いつき(なつい・いつき)
1957年愛媛県生まれ。俳人。俳句集団「いつき組」組長。8年間の中学校国語教師を経て俳人へ転向。94年「第8回俳壇賞」、2000年「第5回中新田俳句大賞」受賞。
創作活動に加え、「句会ライブ」や講演など、俳句の種まき運動の傍ら、MBS「プレバト!!」など各メディアで幅広く活躍。15年より初代俳都松山大使。
主な著書に『句集 伊集院 鵺』『夏井いつきのおウチde俳句』(共に朝日出版社)『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)、『子規365日』(朝日文庫)、『瓢箪から人生』(小学館)など。

奥田 瑛二(おくだ・えいじ)
1950年愛知県生まれ。俳優、映画監督。79年映画『もっとしなやかにもっとしたたかに』で初主演。86年『海と毒薬』で毎日映画コンクール男優主演賞、89年『千利休 本覺坊遺文』で日本アカデミー主演男優賞を受賞。94年『棒の哀しみ』ではキネマ旬報、ブルーリボン賞など8つの主演男優賞を受賞する。2001年監督デビュー。近年の出演作に、主演映画『洗骨』(19年/照屋年之監督)、連続テレビ小説「らんまん」(23年度前期/NHK)などがある。主な著書に『男のダンディズム』(KKロングセラーズ)、『私の死生観』(共著/角川Oneテーマ21)など。

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