歴史上の人物と大河ドラマ

NHKの大河ドラマは歴史上の人物を主人公にしている。その内容が史実と少々違ってもドラマなのだからドラマとして楽しめればいい、と思うがあまりに史実と違うと興ざめする。

今年は紫式部と藤原道長を主人公とするドラマをやっているが、やはり史実と違うところがいろいろある。
これをどう見るかは見る人の感性によるので一概には言えないが、私は以前「源氏物語」を読んだとき紫式部についても少し調べた。源氏物語について書いたもの
　https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1947206451&owner_id=39904538

藤原道長についても以前書いたことがある。
　https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979540350&owner_id=39904538

年代について年表で調べてみると
藤原道長：生没は９６６年（生）ー１０２８年（没）６２歳
父藤原兼家：９９０年（没）
花山天皇：在位９８４年ー９８６年
紫式部：生没不明　（生）９７０年ー９７８年　（没）１０１４年ー１０１９年？
など。

テレビドラマでは兼家が病気で倒れるが、花山天皇がまだ在位中となっている、これはありえない。兼家の病気は９９０年と思われるが花山天皇はすでに出家している。この時期兼家は関白を息子の道隆に譲っている。なにより花山天皇を退位させたのは病気する前の兼家自身だったはず。
ドラマでは紫式部はこの時期宮廷に上がっているがこれもあり得ない。（９７０年生まれとしても１４，5歳、９７８年生まれだったら６，７歳しかならない。）
紫式部が宮廷に召しだされたのは１００４，５年頃と言われている。紫式部は１９，２０歳で父為時の越前赴任について行ってるが、任期途中で単身京へ戻って結婚している。
紫式部は２５歳ごろになって藤原宣孝と９９８年ごろ結婚したが、１００１年に宣孝が疫病で死んだ。娘（賢子）がいる。
その後紫式部は歌人としてまた源氏物語を書き始めた作者として名をなす。（才女として有名になる）そのため１００５年ごろ藤原道長に召しだされ一条天皇の中宮彰子（道長の娘）の女房（家庭教師）となり１０１３年ごろまで彰子に仕えた。
１０１４年〜１０１９年ごろ４０歳前後で亡くなったとされる。
これらをつなぎ合わせると９７５、６年ごろ生まれ１０１５，６年ごろ死んだというのが一番ありそうな話になる。

ドラマでは藤原道長とは子供のころから知り合いで、道長の兄道兼に母を殺されたことになっているが、ドラマとしては面白いが史実としてはあり得ない。
道長の兄の藤原道兼は９９５年に３５歳で死んでいるため、道兼が為時の屋敷に訪れたのが花山天皇が在位中だとすると９８５年ごろになりまだ２５歳ごろで、紫式部の母を殺したのがさらに１０数年前だとすると１０歳〜１５歳ごろになってしまう。
紫式部はまだ生まれてないか、赤ん坊のときになってしまう。（９７５年ごろだとすると）

ドラマでは藤原惟規は紫式部の弟ということになっているが史実では兄という説が多い。これは生年がはっきりしないため兄か弟かがはっきりしないといわれる。（没年は１０１１年となっている）。父の為時は１０１４年ごろ出家しているがこれは惟規も紫式部も死んでしまったので、はかなんで出家したともいわれている。

紫式部という名前は本名ではなくしいていえば役職名だ。ドラマでの”まひろ”という名前は全くの創作だ。（本名は香子という説がある）平安時代は女性は本名を明かさないものとされた。だから役職名や＊＊の娘、＊＊の妻、あるいは＊＊の君、や番号（一の宮、二の宮、三の宮）で呼ばれた。（枕草子・・清少納言、和泉式部日記・・和泉式部、蜻蛉日記・・道綱の母、更級日記・・菅原孝標の娘など）紫式部は最初は藤式部と言われた。（藤原の藤）式部は父の役職名（式部丞）からきている、紫は藤の色からとも源氏物語の若紫からとも言われている。清少納言は姓の清原からきていると言われている。
平安時代は女性作家が多く輩出しているが、それは宮廷で天皇の后などに多くの教養を身に着けさせるため才女が女房として仕えたからといわれる。
彼女らは男性が使わないかな文字でさまざまな表現をおこなうことが出来たのがその要因と言われる。平安以後宮廷サロンが無くなるとともにすたれてしまった。

それやこれやで年代的にはかなりあやしいところがたくさんあるが、ドラマとして楽しむならばそれもまた面白い。
しかし大河ドラマを史実と思ってしまうと、北条義時も徳川家康も西郷隆盛もだいぶおかしくなってしまう。
史実は史実ドラマはドラマとして楽しむのがいいのだろう。

追伸
と、ここまで書いた後、３日の放送を見たら兼家の病気は詐病だったという話になった。これでようやく史実に近づいた。