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2024年02月25日14:34

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世界の終わりの天文台

リリー・ブルックス・ダルトン

人類が滅んだらしい、原因は不明。核戦争でもパンデミックでもないらしい。残ったのは北極圏の天文台に勤務する老天文学者と、なぜか少女。そして木星調査船のクルーが6名。北極でも調査船でも通信に応答は得られずとにかく情報がない。SFとしてはどうなんだという設定。

本書が記されたのは2016年、邦訳が2017年で、その頃パンデミックは遠い記憶だった。ウクライナ戦争もなかった。だがNetflixによる映画化が2020年。人類滅亡の理屈はどうするつもりなんだろう。だがテーマはそこにない。復活の日を再演するのでなく、それぞれ孤独でいびつな人生を歩んできた天文学者と調査船の通信担当の女性の心情描写にある。話の最後で天文学者と女性の間でわずかに通信が成立するが、それも短時間。彼らの間にも読者にも情報は増えない。

結末は救われない。宇宙船のクルーは3名が地上に戻るがそこでサバイバルできるかは描かれていないし、天文学者は老いに倒れる。実はその女性は天文学者が唯一愛した女性の子であることが匂わされる。そして少女の伏線は回収されないまま。泣かせにかかっている。以前読んだ[世界を変える日に]のようだ。映画の原作にはよろしかろう。そういう意味では本選びに失敗したかもしれないが、時にはこういうものも読まねばなるまい。

余計なことを書くと、天文学者は天文台にいない。天文台にいるのは技官と修行中の院生だけで学者は制御室にいる。またイマドキの天文学では地上からの光学観測で大きな成果は望めない。そのへん取材をサボったのか、思い込みで書いたのか、読者に受け入れられやすいからそうしたのか。
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