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2023年11月24日23:00

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映画2023年10月/『パーフェクト・ケア』

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『パーフェクト・ケア』(アメリカ)
『ゴーン・ガール』『プライベート・ウォー』でアクの強い気丈な人物としてのインパクトが強いロザムンド・パイク。今回は高齢者の財産を合法的手段で巧みに横取りしていく悪徳弁護士を演じており、彼女にこういう役をやらせたら間違いなくハマるだろうという予想通り。偽善者ぶる表向きの言動と、正体を見せている時の不敵な態度、更にはそのエリート然とした振る舞いが強烈な嫌悪感となるため感情移入の隙はまったくない。

主人公がここまで嫌な奴なのも珍しいが、アメリカ資本主義経済の盲点を狙い定めて突いている合法詐欺を具現化したストーリーは面白い。鑑賞後の爽快感は皆無で気分は最悪。なにしろキャッチコピーが「100%共感不能!」で、決して納得できるものではないだけに、逆にその周到なやり口に唸らされる。

高齢者を介護施設で保護するという大義名分を表向きにして、その財産の法定後見人となるのがマーラ(ロザムンド・パイク)の常套手段。その手口は痴呆症でもなければ判断力の衰えもない健康な高齢者を、共犯に囲い込んでいる医師に虚偽の診断書を作成させて介護施設に強制入居させる。財産は法廷後見人であるマーラが管理することになり、彼女の一存で売却もしくは私物化するのは思いのまま。被害側が控訴して法廷で争うことになってもそこはプロの弁護士、表面的な物的証拠をズラリと取り揃えて正当性を主張。更にはその巧みな話術を武器に被害者親族たちを払い除ける。マーラはこれで次々と高齢者のターゲットを見つけては財産を奪っていた。

新たなターゲットとした資産家で身寄りのない老女ジェニファー(ダイアン・ウィースト)には知られざる肉親がいて、そこに現れたのはロシアンマフィアのボスであるローマン(ピーター・ディンクレイジ)。実母であるジェニファーの財産と日常を奪ったマーラに、組織を使って全力で復讐するローマン。悪人同士の対決が始まった。

冒頭のマーラのモノローグ「人間は2種類に分かれる。奪う者と奪われる者、捕食者とその餌食、ライオンと子羊。私はマーラ・グレイソン。私は子羊じゃない。獰猛な雌ライオンよ」。手段を問わず勝利を勝ち取ることに異論を挟まないアメリカらしい実力至上主義を貫く彼女が、マフィアに命を狙われることになった時にどうするのかが本作の見どころ。狡猾で強欲主義を徹底しているマーラに対し、母親を心から愛する御菓子好きな小人症というキャラクターで登場するローマン(仕事に関しては冷酷無比)。

適側に比較的感情移入しがちになるのが本作異色の仕掛けで、マーラの髪を掻き上げるしぐさですら鼻につく憎々しさ。そのため本気を出してきたマフィア側の攻撃で、絶体絶命のピンチに陥るマーラですら同情する気になれない。ところが殺されかけたところで見せる生への執着心と、死をも恐れず逃げずに反撃体制に舵をきるその後の展開は、演出の上手さもあって鳥肌モノのカッコ良さを感じずにはいられない。

闇夜で雄叫びをあげてからズブ濡れ状態でコンビニでチョコバーをしゃぶりつつ、服を脱ぎ捨てていくシーンに高揚感は頂点を極める。悪徳後見人の主人公がしっぺ返しを食らう展開程度を想定していた期待値は、ロザムンド・パイクの迫力とパワーでそれを上回る作劇へと向かい、マフィアに知恵と計算で逆襲するところはカタルシスを禁じ得ない。彼女の情け容赦のなさは、弱者だけでなく巨悪傲慢な強敵に対しても同じだったというところに芽生える初めての感情移入。

媚びることを嫌い一貫したスタンスを終始貫くマーラにはブレがなく、最後の最後まで改心どころか反省すら一切しない。マーラは公私のパートナーであるフラン(エイサ・ゴンザレス)とは同性愛の関係にあり、台詞や描写の節々で男性嫌悪主義のきらいが伝わってくる。それが最後の結末へと繋がっていくのだが、このオチは個人的には好きではない。この物語をアメリカンドリームでは終わらせないということなのか。そもそもの合法的な手段で詐欺を行ってきた主人公の犯罪行為への警告になっていない。アメリカ資本主義社会の法律的な盲点は残ったまま。倫理的な部分だけで決着を見立てているのは残念。

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