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2023年09月18日23:55

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映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』作品レビュー

映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』作品レビュー

 アガサ・クリスティ作のエルキュール・ポアロシリーズ『ハロウィーン・パーティ』(1969年発表)の映画化で、『オリエント急行殺人事件』、『ナイル殺人事件』に次ぐケネス・ブラナー監督・主演の映画エルキュール・ポアロシリーズの第3作目。
今回の原作は「ポアロ」シリーズの中でも余り知られていないマイナー作品から題材をとっており、あくまで着想を得たというだけで、映画では大幅に脚色しています。

 時は第二次世界大戦終戦直後。美しくもどこかミステリアスな水上の迷宮都市ベネチア。謎解きからは身を引いた名探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は穏やかなこの水の都で静かに暮らすことに徹していました。
 今も事件を解決してほしいという依頼がわらわらと舞い込んできますが、頑なに無視。ヴィターレ・ポルトフォリオ(リッカルド・スカマルチョ)という真面目なボディガードが守ってくれていました。
 そんなある日、アリアドニ・オリヴァ(ティナ・フェイ)という旧友のミステリー作家が訪れてきました。親しいのでさすがに無下にはできません。オリヴァは降霊会に参加しないかと持ちかけてきます。なんでもジョイス・レイノルズ(ミシェル・ヨー)という名の「死者の声を話せる」という霊能者がいるらしいです。
 当然、理屈で考えたがるポアロはそんな非科学的な話を信じません。オリヴァもそれをわかったうえで、あえて持ちかけてきたのでした。
 ポアロは、霊媒師のトリックを見破るために、子どもの亡霊が出るという謎めいた屋敷での降霊会に参加します。
 しかし、その招待客が、人間には不可能と思われる方法で殺害され、ポアロ自身も命を狙われることに。犯人が実在するかさえ不明な殺人事件に戸惑いながらも、真相究明に挑むます。
 はたしてこの殺人事件の真犯人は、人間か、亡霊か。世界一の名探偵ポアロが超常現象の謎に挑む、水上の都市ベネチアを舞台にした迷宮ミステリーが幕を開けるのでした。

 今回の作品では、完璧な密室殺人など、目の越えたミステリーファンを唸らせる謎が用意されています。疑い深いポアロでも最後には降参して、霊の存在を否定できなくなるほどでした。
 先ずはレイノルズから離れた位置にあるタイプライターが文字を1文字ずつ打ち、霊と思われる存在からのメッセージを伝えるという謎。
 ポアロは即座にこのトリックを見破ります。隠れていたアシスタントのニコラス・ホランドが(アリ・カーン)無様に転がり出てきました。手元のスイッチで文字を打てるという仕組みだったようです。まぁ、この辺は序の口。
 その後にバルコニーから転落したのか、衆目の前でレイノルズは中庭の彫像に体を突き刺さされて死亡します。犯人は誰なのか?一同は戦慄にかられます。
 そして謎なのがドクター・フェリエ(ジェイミー・ドーナン)の死亡。彼はナチス・ドイツの強制収容所にいた経験があると判明し、明らかに戦争による心の傷を負っていました。死亡する直前に精神的に錯乱し、息子のレオポンド(ジュード・ヒル)らによって、鍵のかかった部屋に拘束されていたのです。このように完全密室であるにもかかわらず、フェリエは刃物で刺されて死亡してしまったのです。
 一連の事件の根源にあるとボレロが睨んだのが、ロウィーナ・ドレイクの娘アリシアの死。自殺とされているようですが、最終的にこれは他殺だと明らかになります。ではアリシアは、誰が殺したのでしょうか。それとも亡霊の呪いにかかって転落死したのでしょうか?

 さて過去2作の観光映画的な見映えを期待している向きには、違和感を感じる仕上がりです。何しろ今回は、舞台のスケールも小さく、地味で、何より暗いテイストなのです。あれこの作品ミステリーではなくて、ホラーなのかと思うくらい、怖い話になっていくのです。
 それでも安心してください。ポアロはキチンと推理し、超常現象の原因と真犯人を突き詰めていきます、
 但しケネス・ブラナー監督はその超常現象に完全な解明を求めていません。原作との共通点として、謎解きで全部が解決せず、不可解さをほんのり残すことです。映画でも全ての現象が真犯人の仕業や幻覚のせいだと言い切れません。もしかしたら本当に怨念があるのかもしれないと臭わせるオチが、本作の魅力でしょう。
 なので全2作をご覧になっていない方でも、本作はこれ単独で充分楽しめる一作となっています。

公開日 :2023年9月15日
上映時間:103分
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/poirot-movie3


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