トマス・ピンチョン
再読してもやっぱり分からない[V.]だったが、こちらはどうだろう、ピンチョンの初期短編集。今回再読したら少しは分かった気がし
た。スロー・ラーナー(のろまな子)は収録された短編集の標題で、ピンチョン自身を指す。ちっともスローじゃないだろう。
作品の構成を音楽に例えてみる。ピンチョンはあたかも現代音楽のよう。リズムやメロディ、ハーモニーという耳に馴染みやすい要素でできていない。鑑賞力のある人にしか楽しめない。音楽の素養はなくてもブラームスの美しさは感じられるが、武満徹くらいになると聞き手を選ぶ。
さらにサンプリング。先行する各種の文学作品からの引用が多数あると解説にある。そういった素養がなければまったく気が付かない。解説にそう書いてあったからそうなのだろうが、引用元を知らないからなんともかんとも。メルヴィル、フォークナーと並ぶ米国文学史上最大の小説家なのだと言われましても、そもそも読んでない。
wikipediaによるとピンチョンの[V.][重力の虹]は前サイバーパンク的作品とある。後者は読んだことないのだが本作を含め私の印象は異なる。ピンチョンはサイバーパンクではないな。サイバー味というよりビートニク文学。
先に読んだヤング作品の解説に「米国SF界でブラッドベリ、スタージョンと並ぶ地位のヤング」とあったがメルヴィル、フォークナー、ピンチョンに比べるとどうにも小物感が否めない。これだからSFは下に見られるんだなあ。いや現代音楽の作家がすべて偉いというわけではないはずなんだが。
ログインしてコメントを確認・投稿する