アカデミー賞には果てしなく縁遠いところに位置する作品群・・・でもこういう映画が好きです。今年も頑張って計12本を鑑賞。全国公開になっても遜色ないと思える傑作から、全身脱力してしまう駄作,問題作まで。世界各国の独自文化や思考を知ることができるのもこのイベントの面白さ。蓋を開けてみないと判らないおもちゃ箱的な楽しみを満喫します。
キャプテン・ノバ(オランダ)
ブラックサイト(アメリカ)
スナイパー コードネーム:レイブン(ウクライナ)
スモールワールド(ポーランド)
スランバー・パーティー大虐殺(アメリカ)
アブソリュート 服従者(アイスランド, イギリス, アメリカ)
地縛霊 5階の女(ベトナム)
ザ・ローブ THE HEROES HIGHT VOLTAGE(アメリカ)
バトル・オブ・サブマリン(ポーランド)
ミッドナイト・マーダー・ライブ(アメリカ)
ユー・アー・ノット・マイ・マザー(アイルランド)
ベニー・ラブズ・ユー(イギリス)
『ベニー・ラブズ・ユー』(イギリス)
幼少時に誰もが経験する ぬいぐるみのお友達。独身35歳の誕生日を迎えるジャック(カール・ホルト)の友達はベニーだった。セサミストリートのキャラクターを連想するアメリカンファンキーなビジュアルのベニー。両親が死んで借金苦となったジャックは、実家を売るための断捨離でベニーを処分しようとしたところ「ジャジャーン!」と叫んで動き出した。ぬいぐるみベニーに命が吹き込まれ、とんでもない殺人鬼になった。
親友ジャックを溺愛するベニーは、彼に親しげに近付いてくる人間を次から次へと容赦なく殺していく。その冷淡さはチャッキー、アナベル、ブラームスらの比ではない。映画史上でも最恐最悪の殺人マペットとして、傍若無人に大暴れするベニーが最後まで突っ走り続ける90分のスプラッターホラーコメディ。
ちょっと間の抜けた主人公、お色気ヒロイン、パワハラ上司、嫌味なライバル・・・というステロタイプにも程があるシチュエーション。それがまた面白くて、雰囲気が近いのはカナダ産ホラーコメディ『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』(2012年)のような妙に明るいスプラッター感覚。ただし明るいといっても殺人描写は相当エグいので注意。冒頭にピクサー映画的な短編があるが、そこで少女が目玉をくり抜かれる映像あり。殺人鬼ベニーの無頓着で憎めないしぐさのギャップがたまらなくて、血みどろになった家を掃除しながら遺体を庭に埋める主人公のシュールさはアイロニカルに溢れる。
ベニーをモチーフにした商品が売れて会社のライバルを追い抜いて出世。しかし社長が可愛がるペット犬を瞬殺するベニー。平和ボケした警察官。ジャックが憧れの彼女と仲良くなれば、ベニーの嫉妬の標的となり命を狙われる等など、展開どれも全てがベタ。
ベニーの喉元に刃物をぶち込んで息の根を止めるジャック。だが埋められた森にベニーの死体はなく、ジャックの会社オフィスで大量殺人が勃発。これだけ大量に人が死んでいるのに最後はなんとなくハッピーエンドになるところもイカレている。
主演カール・ホントが脚本,監督も努めており低予算は一目瞭然。出演者の演技力にも難ありだが「未体験ゾーンの映画たち」作品として観れば得した気分になれるから不思議。
『ミッドナイト・マーダー・ライブ』(アメリカ)
リスナーからのお悩み相談に毒づくトークが人気のベテランDJエルビス(メル・ギブソン)が、恨みを買われた何者かによって絶体絶命のピンチに追い込まれる。
生放送中に繋いだお悩み相談電話の男は、エルビスの妻と娘を監禁していると嘯き、その一部始終がラジオで流される。番組ADとの不倫を告発され、妻子を助けて欲しければラジオ局のビルから飛び降りて罪を償えと迫られるエルビス。
犯人は元ADで自殺した女性の恋人だったことが判明。自殺したのはエルビスのせいで、その復讐を果たすのが男の目的。だが警察がエルビス宅に突入しても、そこには犯人も家族もいなかった。番組スタッフは放送局ビル内に犯人が居ることを突き止めるが・・・
メル・ギブソンが100分間ほぼ出突っ張り。舞台がラジオ局のビル内のみで展開するというワンシチュエーション。悪戯が過ぎるエルビスの突飛な振る舞いで最後まで引っ張りきる強引さがストーリーを支配するが、途中で正体を明かし爆弾魔となって現れる犯人によって次々と関係者が殺されていく。ラストの大どんでん返しが若干予想できるところに爪の甘さを感じつつ、そこも含めて計算された緻密な仕掛けを堪能するのが楽しみ方。
それにしても憎らしく下衆っぽい、減らず口の慢心中年男の演技があまりにも上手過ぎるメル・ギブソン。もしかして素なのだろうか。
『スモールワールド』(ポーランド)
ポーランドで誘拐された実子を必死で追いかける母親の車をスピード違反で呼び止めてしまったため、ロシアの国境を越えて誘拐犯に逃げられてしまった警察官ロベルト(ピョートム・アダムチク)。母親からは「あなたのせいで娘は誘拐された!」と責められる。奪われた少女ウーラを探し出すことに、生涯を懸けることになるロベルトの捜査が始まる。
犯人は国際的児童人身売買組織。誘拐されたウーラは当時4歳。そこから12年にわたる追跡劇は、ロシアから始まり世界各地を渡り歩く。誘拐から3年後にようやくウーラの手掛かりを掴んみ、少年少女を預かり養う男をロシアで追い詰め確保するロベルト。治安の酷さがことさら強調されるロシアの街で、捜査に協力する地元の女刑事がクールで魅力的。だが期待したロベルトとのバディ関係もなくあっさり退場してしまう。
更に4年後のウクライナ。ついに組織の中核機関に潜入できたロベルトは、そこでウーラと思われる少女と再会する。11歳になっていた彼女はいくつもの源氏名を持ち、ロベルトを客扱いで誘惑し自らの身体を売ろうとする。そこには誘拐後の7年間を生きるために、彼女がしてきた壮絶な人生が伺い知れることとなりロベルトは戦慄する。これがきっかけで彼は、小児性愛性癖傾向の自覚を持つことになった。この展開はかなり衝撃的で、長年にわたって少女を追い求めていることが自らのトラウマとなり、感情のコントロールが効かなくなっていくロベルトの葛藤は例えようのない悲壮感あり。
舞台はタイへ。ウーラの洗脳を解くために捜査を続けるロベルトの信念は揺るがないが、幼女売買の犯罪心理を調べるうちに自らが侵されてしまった小児性愛癖を否定できないところはリアリティがあると言うべきなのか。16歳になったウーラが11歳当時の異常性と比べて意外と更正していたのは救いだが、それでも彼女が自ら選んだように判断を導いたのはロベルトの執念であったと信じたい。彼の精神崩壊がもう止まらないことは、本人が一番理解していたのだろう。
『バトル・オブ・サブマリン』(ポーランド)
第2次世界大戦中ナチスの侵略によってイギリスに亡命したポーランド海軍の潜水艦オジェウが、祖国からの命令により再びドイツ軍に戦いを挑んだ実話を元にした作品。画作りの空気感はドイツ映画『Uボート』(1981年)に似ているので、まるであの作品の敵軍側を描いているかのように脳内保管して観ることがでる。
狭く暗い艦内の閉塞感に終始支配された息苦しさは最後まで続き、地上の富裕層のパーティーを潜望鏡越しに見つめる兵士たちの悲壮感は辛辣。突如襲ってくる敵軍からの魚雷に怯え、それでも戦うしかない乗員65名の運命は翻弄される。
計器の裏側から乗員を捉えたアングルの映像が印象的。事実上の最後の戦いとなる3隻のドイツ艦隊を迎え撃つ戦闘がクライマックスだが、派手な戦争描写は殆どなくただ只管に混乱する艦内の描写が続く。結末は字幕で語られる異色作。
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