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2023年01月31日00:00

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映画『ウルトラセブン55周年記念4K特別上映』

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『ウルトラセブン55周年記念4K特別上映』(日本)
幼少時から学生までの期間に数えきれないほど繰り返し観ている『ウルトラセブン』。当時は平日夕刻→夏休み午前→登校前早朝というパターンで繰り返されていた再放送。やがてリーズナブルなソフト市販が始まり、ビデオ、LDを経てDVD時代へ。自宅でいつでも見られる環境を得ることになり、更に現在はオンデマンド配信での視聴が可能となった。

そんな現代の劇場公開は4Kリマスター版とはいえ鑑賞し尽くしてきた作品を今さらまた観る価値感をやや疑問に感じつつ・・・どのような客層が足を運ぶのか? そもそも客席は埋まるのか? という関心も相まって公開2日目の日曜午前回に挑んだ。集客は7割程度と午前中にしては盛況。ざっと見て半分が50歳以上男性、残りが50歳未満、全体の2割程度が女性という印象。少数ではあるが未就学児〜小学校低学年を連れた家族鑑賞も数組。

1本目『宇宙囚人303』は前半ホラーテイスト演出のため「怖いよ〜」を連発するお子さんがいたのが微笑ましい。自分も幼少時、全容を見せずに画面いっぱいに目や手だけのアップでヌッと現れるキュラソ星人はとても怖かった。映画館は時にこのように観客の反応を楽しむ場にもなる。だが画面に向かって野暮な独り言を声出しする中年男性には閉口したので注意させてもらった。そういうのは心の中でするか、自宅鑑賞でやってくれ。

なにしろ55年前の作品。社会性や価値観の変化はあってあたり前。いま観ることで昭和の悪癖を浮き彫りにしてしまう部分が当然ある。西洋人女性の滑稽なイントネーションによる日本語アフレコはその典型だろう。未確認物体を調べもせずに即爆破してしまうウルトラ警備隊や、一般人からの電話がダイレクトに作戦室に繋がってしまうところも当時は特に気にならなかったものだ。後半、アンヌ(菱見百合子)を人質にウルトラホークのベータ号を奪って逃亡するキュラソ星人を、アルファ号とガンマ号を駆使して追い詰めるウルトラ警備隊の活躍に今さらの興奮。早くもこの時点で劇場に足を運んだ価値を実感。

今回の上映は鈴木俊継監督作品『宇宙囚人303』『超兵器R1号』『盗まれたウルトラ・アイ』の3本と、満田かずほ監督による『史上最大の侵略(前編)』『同(後編)』の2本。全話を通して描かれる人類ナショナリズムの光と影、孤高の宇宙人ダン(森次晃嗣)の葛藤にフォーカスした作品群が厳選されたと理解する。特に改めて胸に突き刺さったのは2本目『超兵器R1号』。ベトナム戦争を表舞台に軍備拡張競争を招いた東西冷戦(本放送は1968年)の背景を、より解りやすく且つSF性を取り込んで魅せる見事な脚本。

各大国が核配備に向かってリアルに動いていた当時、米国が世界に力を知らしめるために投下したとも言える広島・長崎への原爆が根本にあったのは言うまでもない。誇示された「脅威」を更なる「脅威」で対抗する方向に世界が動く真っ只中の時代。同年に岡本太郎が核兵器に焼かれ立ち向かう人間の誇りを描いたという『明日の神話』(現在渋谷に恒久展示中)が時代を象徴する。

R1号の実験成功により宇宙に「脅威」を示して平和を維持するというロジックを誇らしげに語るセガワ博士(向井淳一郎)とマエノ博士(田村奈巳)を、最低限ぎりぎりの所で正統性を持たせないようにする会話劇の旨さ。血を吐きながら続けるマラソンは、55年経った現代でも未だ全世界から撤廃されることはなく、寧ろ再び拡大してしまう懸念に晒されている事実を、当時の製作陣が知ったら果たしてどう思うだろうか。

異国の教会跡のような廃墟に立つギエロン星獣のコミカルな挙動が無邪気で、そこに一方的に攻撃を仕掛けるウルトラ警備隊の冷酷な正統性に疑念は免れない。放射能灰を口から吐くことが判明し、退治しなければならない対象であることを改めて知らしめたうえで、セガワ博士はR2号の早急な開発を言及する。その台詞の直後に入るギエロン星獣の顔面アップが印象的。ほんの1秒もないカットなのだが鳥肌が立った。

皮肉にも美しい花畑を舞台に戦うウルトラセブンの勇姿は、表情変化のない仮面越しだからこそ伺い知れないセブン=ダンの心情を想像させられ身に詰まされる。屈強で固い翼を有するギエロン星獣を倒すため、接近した肉弾戦に戦法を変えると、そこから始まる勇ましい主題歌のマーチアレンジ。セブンが優勢となり勝利の凱旋に向かうシーケンスなのだが、もがれた腕から巻き飛ぶ羽毛のような内臓物が花畑を覆う様は、戦場を彩る映像が残酷さを正当化するかのように思えて胸中を掻きむしられる。

セブンは容赦なくギエロン星獣の喉元をアイスラッガーで掻き切る。ゆっくりと瞼と口を閉じて絶命する生物的リアリティが悲壮感を煽りつつも、流れる曲は勇ましい主題歌マーチのままなのだ。何年ぶりに本作を再見したことになるのかは記憶を辿る術もないが、恐らく10回以上・・・いや20回は鑑賞している作品なのに、こんなに感情を揺さぶられたのは初めてだった。

続く『盗まれたウルトラ・アイ』では人類の立場は前話から逆転し、地球を消滅させようとマゼラン星人が放った恒星間弾道ミサイルが刻一刻と地球に向かってくるという物語。幼少時は怪獣が出ない退屈でよく解らない話という印象ながら「こんな狂った星を? 見てご覧なさいこんな星、侵略する価値があると思って?」マヤ(吉田ゆり)のこの台詞だけは子供心に衝撃だったのを記憶している。やがて少年期になると本作の骨子が理解できるようになり『ウルトラセブン』という “SFドラマ” に感銘していくことになる。

今回の再見で思ったのは、戦後最大の株価暴落を記録した当時、経済成長が飽和の兆しを見せていく過渡期の混沌が「ボウリング場にジャズ喫茶、地下に潜ればアングラバー」の台詞に込められていると感じ、70年安保問題を皮切りに反政府学生運動が世間を騒がせる中、3憶円事件が起きたのもこの年。それらを背景にデカダンスな空気を漂わせたゴーゴー喫茶で対峙する宇宙人同志は、テレパシーは交わせても心を通わせることは最後までない。母星に捨てられたことを確信したマヤにとって、その瞬間に唯一縋れるのがダン=ウルトラセブンでもあったはず。地球を救うためにすぐさま自分の元から飛び去っていくセブンを見て、絶望した彼女は自分の運命を決断したのだろう。実はマヤは地球を救うためにウルトラアイを返したのではなかったのだ。

「何故、他の星でも生きようとしなかったんだ…」その問いの答えは、ダン自らが気付いて、マヤに応えてあげるべきだった。彼がマヤを思う気持ちの浅さに、今の年齢になって鑑賞することでようやく気が付くという、自身の視点の変化を思い知る。おそるべし『ウルトラセブン』の奥深さ。劇場観賞して本当によかった。

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