チャールズと家族　２

チャールズが出来ることは何でもするから、遠慮なしに言いつけて欲しいと言ってくれたので、甘えて年に２、３度お願いしていた。
殆どは私にできない木を切る仕事。
必要な用具持参でついでに草刈りもやったりとすごく助かっている。

ある時彼等夫妻を食事に招待、彼等と長女と私の４人で夕食。
チャールズと私の長女は肉を食べないので魚料理にした。
黒鯛の生姜蒸し。
しかし奥さんは魚は苦手だったとは知らなかった。
でも一生懸命食べてくれた。
私たちも彼等も猫好きで、その夜は猫の話で楽しんだ。

あれは4月の天気の良い日だった。
裏庭の雑木や繁り過ぎた月桂樹が小さな畑の日差しを遮ってしまうので、枝を切って欲しいと頼んだ。

チャールズは早速やってきて手際よく仕事をしてくれた。
キッチンで道具を片付けている彼のためにお茶を入れながら世間話をしていた。

ところで娘さん達は元気？

ああ、元気。
でも相変わらず長女は態度悪いんだよね。

中学生だもの。
殆どがそうじゃない？

うん、まあそうなんだけど
でもあいつは別格だと思う。

そお？
私たちだってそうだったと思うけど。
親に対して批判的で反抗もして。

まあ、、、ね。
それとは別にね、もう一つ弱っているんだ。

なに？

ある日突然、自分は今日から男として生きると宣言したんだよ。中学校にも伝えて明日から学校でも男子として扱って欲しいと。名前もリサではなくマイクとして扱って欲しいと。

あらら！

いやね、本人の希望だからそれは受け入れるべきと思ってはいるんだけど、決めつけるには若すぎると思う。
娘は性転換も希望しているんですよ。
だからそれが心配で。
後で実はそうじゃなかったと後悔しても、元に戻すのは不可能で後悔するケースも結構あるんでね。

そうよねー、それは心配だわね。

全く知らなかったのだが、今日の中学校ではLGBT（レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー）の教育に力を入れるよう要請されているそうで、差別をしないようにの目的であると思われる。だが、自分がもしそうだと思うなら何も恥ではないのだから、一人で悩む必要もないと。そこまでは良いとしてどうも積極的に協力もしますみたいな教育らしい。
それらに関して相談できる組織や医療関係の紹介まで含まれているようだ。
ま、間違いではないと思うが、まだ自分のことをわかっていない１０代の初期にこれは危ないなと思うがどうだろう。

チャールズは最後に笑いながらこう言った。
まあね、僕は娘を一人失ったけれど、代わりに息子を得たってこと。