香港で去る１日、習近平も出席して、「香港返還２５周年」記念式典が開かれた。１９９７年に宗主国のイギリスからスターリニスト中国に香港が返還されて２５年たつわけだが、その時にイギリスと香港住民に約束された「１国２制度」を５０年間続けるという国際公約は、２年前に強制施行された「香港国家安全維持法」で弊履のごとく放り捨てられた（写真＝返還記念式典に出席のために香港を訪れた習近平。左後方に林鄭月娥がいる）。
◎国連の代表権簒奪直後に早くも香港の運命を左右する歴史の改ざんが行われた
国際公約破棄も歴史の改ざんも、旧ソ連時代からのスターリニストたちの常道だが、最近、スターリニスト中国は「香港は１度もイギリスの植民地だったことはない」と言い始めた。ただイギリスに占領されていただけだと強弁し、歴史の改ざんを正当化しようとしている。
香港のメディアが、香港の学校で教えられる新しい歴史教科書で、そう書かれると報じた。
今になってみると、スターリニスト中国のしたたかな狡猾さに舌 を巻くのだが、実はこのデマ＝歴史の改ざんは、スターリニスト中国が台湾の国民政府に代わって国連の「中国」の代表権を奪った１９７１年の翌年に早くもなされていた（写真＝１９４５年８月２４日に国連憲章に最初に署名した中華民国（現・台湾）の代表、蒋介石総統。中華民国、すなわち後の台湾は国連の原加盟国だった）。
◎「イギリスの植民地だったことはない」という歴史の偽造
７２年、スターリニスト中国は、国連の創設間もなく作成された「非自治地域リスト」から香港とマカオを削除させたのだ。この時、スターリニスト中国は「香港とマカオはイギリスの植民地だったことはない」と強弁していた。国連の助けなど借りず、独自にイギリスから香港・マカオを取り戻すという意思表示だった。
国連が８０を超える地域を「非自治地域リスト」に指定したのは、第二次世界大戦後に高まった民族自決・脱植民地化を後押しするためだった。
インドシナなどアジアの大半は、いち早く脱植民地・独立を成し遂げたが、アフリカは大半が長らくヨーロッパの植民地のままに置かれた。それも１９６０年前後に、一気に独立の旗を掲げた。国連の理想は、実現したのだ。
実は、その「非自治地域リスト」に香港とマカオが含まれていたわけだ。
◎改ざんさえなければ「独立」も可能だった
台湾に政権を置く国民政府が中国代表だった時は、両地域が植民地であったことに異議を唱える向きはなかった。しかし前述のように、中国代表権論議の果てに、台湾の国民政府が国連から追放され、スターリニスト中国が招き入れられたことによって、香港・マカオの運命が変わってしまったのだ。
あの時、例えば香港自治政府と宗主国イギリスが異議を唱え、リストから削除されなければ、２０１９年に香港で燃え上がった「逃亡犯条例改正案の完全撤回」や「普通選挙の実現」などを含む「５大要求」を超えて（写真）、若者たち本土派が要求した「香港独立」も達成できたかもしれない。
植民地ということであれば、香港住民の代表は宗主国のイギリスと交渉し、シンガポールのような独立した都市国家をつくることも可能だった。
◎密かに歴史の改ざんをするスターリニストども
しかしスターリニスト中国の言うままに、占領地として認めてしまったために、香港（とマカオ）はイギリスからの「返還」に歪曲され、その将来は香港住民の意思と関係なく、イギリスとスターリニスト中国との外交交渉に委ねられてしまった。
そしてスターリニスト中国に「返還」されてしまった後では、スターリニストどもがチベットや東トルキスタンのように絶対に認めない、したがって不可能な独立要求をスターリニスト中国に申し立てるしかなくなった。
その答えが、流血の弾圧と獄中送り、であった。
誰もが気づかないままの１９７２年の「非自治地域リスト」からの香港・マカオの削除は、そうした吐き気を催すほどのスターリニスト中国の歴史の改ざんと暴力を許すことになったのである。
このことを、私たち日本人も忘れてはならない。例えば、尖閣諸島では現実にスターリニスト中国が歴史の改ざんを行い、あたかも自国領のような顔をして領海侵犯をしているのだ。
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