北海道開拓の村の農村群を観て回っている。
◎明治初期に開始された厚別地区の米作
感動したのは、みすぼらしい１棟の小屋。説明板に「旧河西家米倉」とある。感動したのは、その説明だ（写真＝左が米倉）。
それによると、ここ厚別地区は明治１６（１８８３）年に長野県からの移住者たちによって米作が始められたという。
本州からの移住開拓民は、寒冷な北海道の環境に対し、故郷のような米作に挑んだのだ。開拓民にとって、チャレンジングな米作の結果、初めて収穫できたコメの味は、いかばかりであったろうか。
その名残を示すように、米倉の後ろに、猫の額のような水田が作られていた（写真）。
◎農村群一角の畑で馬鈴薯栽培
ちなみに厚別は低湿地帯で、初期稲作にとっては水に恵まれた土地と言える。したがって道央では、ここは最初期の米作となった。
その代わり、初期農民は泥田に腰まで漬かって苗を植えたり、雑草を取ったりしていただろうし、秋の収穫もたぶん腰まで漬かった状態で稲穂の刈り取りをやっていたのではないだろうか。ちなみに北海道の低湿地の水は、肌を切るように冷たい。妊婦なら腰を冷やすから、とても田には入れなかっただろう。
小屋の日陰になった所で、２人の高齢の男性が休憩していたが、彼らはボランティアで開拓の村農村群の一角の畑で馬鈴薯作りをしている人なのだろう（写真）。
◎超粗末な開拓民の掘っ立て小屋
初期開拓民の厳しい生活を偲ばせる建物が、農村群の西外れのシラカバの林の中に復元建築されていた（写真＝外観と内部）。まことに粗末な掘っ立て小屋で、壁も茅を束ねただけだ。中も囲炉裏の周りに筵が敷かれてあるだけ。夏はいいとして、これで冬期をどのように過ごしたのだろうか。
耐えなければならないのは、冬の厳寒だけではない。
北海道には、本州にはいない猛獣ヒグマがいる。これでは、ヒグマを防ぐこともできなかったはずだ。実際、１世紀以上前の大正４（１９１５）年１２月に巨大なヒグマに開拓部落が襲われ、開拓民７人が死亡するという「三毛別（さんけべつ）羆事件」が起こっている（１９年２月２日付日記：「ヒグマはそんなに可愛いか？ クマのプーさんなどに見られるアイドル化の不可思議（上）；７人を殺した約１世紀前の『三毛別羆事件』」
https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201902020000/を参照）。
◎帰りに見ると駅逓馬車が出発寸前
襲われた開拓民の小屋も、こんなものだった。巨大ヒグマは、茅の壁を破って小屋に侵入し、開拓民主婦などを食い殺したのだ。
現代の北海道、特に札幌などの大都市を見ると、このような開拓時代の面影は全くない。
その意味で、明治から大正期の開拓の頃を偲ばせる野外博物館の開拓の村は貴重だ。
農村群を見学し終わって、開拓の村はほぼすべてを観たことになる。しかしまた数年後には、また訪れてみたい建物がたくさんある。
そろそろ帰りの飛行機の出発時間が気になりだした。
開拓の村の出口に向かうと、右側の旧開拓使札幌本庁舎の前で駅逓馬車が出発間際だった（写真）。
（完：札幌周遊記２０２２は今回で終わります）
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、
https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207210000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。
昨年の今日の日記：「ミュージシャン小山田圭吾、五輪楽曲制作担当を辞任、子どもの頃に障害者などを虐めたことより大人になってからも雑誌に吹聴した精神の荒廃こそ五輪失格」
https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202107210000/
ログインしてコメントを確認・投稿する