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2022年05月29日09:18

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暗闇のスキャナー

P.K.ディック

しばらくディックを読んでいなかった。飽きたか。でも確か本書は異色作だったよなと手にとった。覆面麻薬捜査官が薬物に溺れる話。ともかく生々しい、薬物は怖い。本書を読んだあと普通の感覚なら薬物に手を出そうとは思わない。

そのぶんSF味は少なかった気がする。主人公はヤク中のグループに潜入していて自分自身の監視を命ぜられる。ある晩一緒に寝ている女が別人に変わるところを目撃する。そこまでならクスリによる幻覚と解釈できるが、捜査官として監視映像をチェックしていると、映像の中でも女が別人に変わる。自身のヤク中が現実世界を侵食しつつある、というところがSF味のキモと記憶していた。

それはそうなんだけれどそれだけではなかった。監視するものとされるもの。右脳と左脳をつなぐ脳梁の機能不全による人格の分裂。施設に収容されるも人格崩壊した捜査官はさらに利用される。暴くのは療養施設と薬物生産のつながり。それはディックの薬物システムに対する批判、陰謀論の疑い。あああまたここでも陰謀論か。ディック自身は本作を最高傑作としており、それはそうだと思うけれど、背後に陰謀があることにしてしまうと文学としては軽んじられる。惜しい。
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