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2022年03月17日23:00

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映画『ベイビーわるきゅーれ』

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『ベイビーわるきゅーれ』(日本)
阪元裕吾監督『ある用務員』で登場した女子高生殺し屋コンビがスピンオフで主役となる本作。昨年7月の公開直後から評判の噂は聞こえてきていたが、『ある用務員』が今ひとつ響かなかったので敬遠していた。だが池袋シネマ・ロサで4ヶ月目のロングラン上映が続いているとなると、これはかなりの傑作臭を感じてようやく鑑賞。
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『ある用務員』とは比較にならないメリハリが効いた洗練度。緩いコメディとブラックユーモア、そこに阪元監督お家芸のキレッキレのアクションが加わった。人殺しを敢えて軽いタッチで殺伐と描く手法が、大衆的メジャーメソッドとして確立したのは北野武監督作品からだと思っているが、痛感したのはその手法が極端に記号化されると、快感にも浄化にもならないというアンチカタルシス。前作でハイライトとなるべき学校でのバイオレンスシーンが無駄に長い殺し合いと感じてしまった瞬間から、鑑賞の集中力は散漫になる。
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唯一目を見張ったの伊澤彩織のアクションが次作でフォーカスされたのは嬉しい。緩急をつけた絶妙のテンポが最後まで崩れず、日常と非日常の落差を意図したシチュエーションギャップの妙味にハマると、中毒的に愛おしくなるという世界観構築が上手い。
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女子高生にしてプロの殺し屋・ちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)は卒業して学生寮を出ることになり、所属する組織から共同生活を強制させらる。普段は一般社会人として生活するように指示を受けてアルバイト探しを始めるまひろだが、コミュ障で社会不適合を自覚する彼女は、コンビニバイトの面接で不採用となる。対するちさとは人当たりが上手く仕事には着けるが、後輩イジメが執拗な職場の先輩にイラつき、つい殺し屋の手腕を発揮して問題を起こしクビなる。
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作中でふたりの生い立ちが語られることはないが『ザ・ファブル』の少年時代回想シーンのような少女時代を送ったであろうことを脳内補完。日常生活の知識がないことが度々露呈される無駄な会話が楽しく、特にまひろは活舌も悪く台詞が聞き取れなかったり、引き篭もり寸前の危うさ。その心理を察しない発言を繰り出すちさととの痴話喧嘩。これがエスカレートしていく過程が面白い。日常のダラダラ感から非日常の殺し屋稼業にスイッチが入る瞬時の凍り付くような緊張感にも痺れる。
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ヤクザとのトラブルを巻き起こすのはちさと。メイドカフェでの一連の事件がスイッチオンの醍醐味となる見せ場では、高石あかりの演技力に脱帽する。彼女はおそらく将来有望な大女優候補。最終抗争勃発のためお預けを食らったショートケーキを冷蔵庫にしまい、マシンガンを買い物かごに入れた自転車に二人乗りで決戦地に向かうオフビートなセンス。
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ちさとのポジティヴながらも相手に容赦しないキツイ言動と、まひろの日頃のオドオドした様相が一変するクライマックスでは、スタントアクトレスが本業の伊澤彩織による、反応速度抜群の身体能力が尋常じゃない迫力。これだけアンリアルな世界感なのに、体格差のある男とのタイマン勝負には嘘がない。小柄の少女が繰り出す攻撃に殆どダメージを受けずに男有利で展開する肉弾戦は、まひろが地面に転がる拳銃をいかにして拾い上げるかを目指して闘う姿にハラハラする。ここは『アトミック・ブロンド』で家具や電化製品をフルに利用して闘うシャーリーズ・セロンを彷彿させる。
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出番が僅かしかない脇役キャラがクセモノばかりなのも印象的。冗談の通じないヤクザの親分と、ひと昔前の今どきギャル風の長女を筆頭に、ちさととまひろのマネジメントを担当する組織サラリーマン、団子屋のオヤジ、果ては冒頭のコンビニ支配人ですら一般人なのにインパクトあり。極めつけはワンシーンしか登場しない死体処理屋の男(この男が黒幕の田坂さん?)で、殺し屋に事務局側のメンタル配慮を訴えるクレーム場面は最高に可笑しい。主役のふたりがメジャーになってしまう前に続編を撮るべき。

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