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2022年02月14日23:00

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映画『ソウルメイト/七月と安生』

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『ソウルメイト/七月と安生』(中国,香港)
中国小説家アニー・ベイビーによる同名ネット小説が原作。『少年の君』でアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたデレク・ツァン(実父があのエリック・ツァン)監督の単独デビュー作。

日本公開でもヒットした『少年の君』は原作小説が東野圭吾の盗作ではないかという疑惑が持ち上がり紛糾。実際に鑑賞すれば中国/香港社会における受験戦争、いじめ、自殺問題を抱える少女と不良少年の交流が人生を切り拓くという王道青春賛歌。ストーリーは想定内のオーソドックスさで、主演のチョウ・ドンユイとジャクソン・イーの魅力、躍動的且つ情緒的な映像美が売りだった。つまり原作云々はあまり関係がなかったというのが感想。大賞は逃したが(受賞は『アナザーラウンド)』)業界評価は高く、これが新鋭デレク・ツァン監督の力量が特筆されるきっかけとなった。

『少年の君』日本公開に合わせて同監督が同じくチョウ・ドンユイを主演に据えて撮っているのが『ソウルメイト/七月と安生』。2016年の作品だが日本での公開は初めて。新宿武蔵野館など限られた劇場で一週間限定というレア上映。『サンザシの樹の下で』でチャン・イーモウ監督に見出されたチョウ・ドンユイ(当時16歳)は “中国13億人の妹” という愛称で親しまれ、以後は演技派の若手女優として現在に至る。29歳にはとても見えない童顔は『少年の君』でも女子高生を演じ、本作『ソウルメイト/七月と安生』では13歳から27歳までの14年間を綴る。

安生=アンシェン(チョウ・ドンユイ)と七月=チーユエ(マー・スーチュン)の出会いから別れ、更にその後までを時系列を交錯させて描かれる展開は、若干の混乱を招きつつもストーリーを最後まで見届けることで、その演出意図が理解できてくる。冒頭はチーユエが書いたとされるベストセラーのネット小説「七月と安生」を読み始めるアンシェンによって、13歳からのふたりを振り返る。

やがてジアミン(トビー・リー)をふたり同時に好きになったことから故郷を去るアンシェン、その理由を知りながら内に秘めて恋愛を優先する自分に失望するチーユエ。数年後の再会はすれ違う気持ちを埋めることもできず、もう昔のような関係には戻れなことをお互いが知る。

「その男たちはみんなあんたを愛してたと本当に思う? 愛していたのは私だけ。他に誰もあんたを愛したりしていない…うちに来なければ一人ぼっちだったくせに。」温厚で奥手だったチーユエのこの台詞によって、ジアミンの存在をアンシェンが疎ましく感じ本音の気持ちを涙のみで表現するチョウ・ドンユイの演技が冴える。アンシェンの快活で自由奔放な性格が親友のチーユエの人生に影響を与え、その数奇な運命は27歳で死にたいと言っていたアンシェン自身の生き様にも繋がる。友情と憎しみが相半ばする状態まで縺れたお互いの感情は複雑で、気持ちの裏表が紙一重のふたりの関係は第三者には理解し難い。だから気持ちを分かち合うのもふたりだけなのだ。ここで「ソウルメイト」というタイトルの重さが伝わる。

ジアミンと結婚することが決まるチーユエの人生は大きく変わり、物語はやや加速的に急転〜集約へと向かっていく。愛憎が果てた先のふたりが再び心を通わせる展開は、謎解き要素も交えてラストまで真実が明かされない。好き嫌いでは表現できない関係は、お互いが影と日向になりながら歩んできた過去で築かれてきた。会わない期間も含めて感じ合い続けたことを訴え、小説の作者は本当は誰なのかを語る最終章へ向かう。

虚構をメタファ的な感覚で導入することが物語のスパイスになり、ありきたりではない異色のストーリーという風味をもたらす。同じシーンを違うカメラワークで繰り返す演出も特徴的。それぞれの心理を映像だけで気付かせる(ジアミンのお守り等)ので鑑賞後にもう1度観たくなる衝動にかられる。『少年の君』のクオリティ昇華はこの作品を経ているからこそだと思った。

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