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2022年02月13日07:30

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【本物志向】『ウエスト・サイド・ストーリー』2021年版

 
2月12日、大和郡山IMAXで鑑賞。封切り直後の連休中日なのに客は少なかった。泣


公式 https://www.20thcenturystudios.jp/movies/westsidestory

 スペシャルメイキングブック 2,970円/本体130ページ(300mm×225mm)
 https://www.toho.co.jp/goods/info/WEST-SIDE-STORY-MB.html



邦題では1961年版が『ウエスト・サイド物語』、2021年版が『ウエスト・サイド・ストーリー』と、やや紛らわしいものの区別できるが、原題は同じで略称『WSS』。


1961年版と比べて作品のクオリティは明らかに上がった。本作は社会派作品としても非常に見応えがある。スティーヴン・ソンドハイムの手になる歌詞が60年以上経っても全く古びていないどころか、より深く問題を描き出し、より強く観客の心に訴えてくることに感服! さすがは『RENT』のジョナサン・ラーソンが憧れ続けた天才だけある。

不良少年の境遇をドライに語っていく「Gee, Officer Krupke」には目を見張った。こんなに深い内容の歌だったんだ!と衝撃を受けた。2021年版では警察署内に置かれた少年たちが仲間内でふざける設定だが、1961年版ではクラプキ巡査をからかっていたように記憶する。設定が変われば意味が変わる。
89歳のリタ・モレノ(1961年版ではアニータ役、2021年版ではプエルトリコ移民と白人との梯となるヴァレンティナ役)が切々と歌い上げる「Somewhere」は、『Cats』の「Memory」に匹敵した。
いずれも1961年版よりも格段にインパクトと重要度が増したナンバーだ。
ソンドハイムは本作完成前に亡くなったが、生前にラッシュを観て非常に喜んだという。そうだろうな、リメイクで彼の本意を表現してもらえて本当に良かった。

「Cool」は新解釈。1961年版ではカチコミで興奮したジェッツの仲間を副団長のアイスが落ち着かせるナンバーだった。2021年版では決闘のために銃を手に入れたリフを止めようとするトニーが歌っている。なるほど、これは上手く使ったな!と唸った。
際どい足場を気にしながら動くトニーに対し、現役の不良であるリフはとてもしなやかで俊敏だった。

1961年版では可愛らしさと楽しさが全面に出た「I Feel Pretty」、2021年版では悲劇を予感させた。シーンを見ながら1961年版が頭の中で流れていたのでアレンジの違いがよく分かった。2021年版は全体にスマートで、マリアの「ラ♪ラ♪ラ♪」という印象的な合いの手がない。コーラスの響きも落ち着いていた。ナンバーが終わってマリアが百貨店(2021年版では店内清掃の夜間バイトという設定)通用口から出てくると、チノが「兄ベルナルドがトニーに殺された」と告げる。このつながりがスムーズだった。


目まぐるしく展開する喧嘩シーンや、凄惨な決闘シーンもパワフルでスリリングだった。特に、白い塩倉庫で対峙する両グループの影がバックギャモンの盤のように刺さり合う画の力強さには圧倒された。

若者たちの激しい人種間抗争を象徴する「Mambo」。移民の現実と男女の意識差を鮮やかに切り取る「​America」。ダンスシーンは迫力満点で『イン・ザ・ハイツ』にも劣らない。
プエルトリコ移民のキャストは全員「本物の」ラティーノだ。マリアの歌が本格的なプエルトリコ訛りなのは楽しい。彼らが話すスペイン語から「バリオ(街)」や「パラ・シエンプレ(永遠)」などが聞き取れると嬉しかった。


ダンスといえば、体育館のシーンは色彩設計の巧みさを堪能できる。ジェッツ(ポーランド系移民)一党は寒色系の衣装、シャークス(プエルトリコ系移民)一党は暖色系の衣装で統一されており、集団の動きが非常に美しかった。(1961年版は衣装の色がまちまち)
そんな中で「何の色にも染まっていない」マリアの白い衣装はまばゆく際立ち、皆よりも「頭ひとつ大きい」トニーが遠目からマリアに釘付けになる成り行きは自然だった。


トニー役のアンセル・エルゴートは身長193cm。ガタイの良いベビーフェイス、まさにギャップ萌えタイプだ。(2017年の『ベイビー・ドライバー』も良かった)
声はいいけど歌は下手(1961年版でトニー役を吹き替えたジミー・ブライアントは巧かった)と思ったが、1961年版の音源を確認すると五十歩百歩だった。マリアの歌が巧すぎて、相対的に下手と感じただけ。ごめん、アンセル。

トニーが殺人未遂罪で服役後に保護観察となり、ヴァレンティナの店で更生中という設定や、地下鉄に乗ってマリアと(刑務所に護送された時に見つけた)美術館デート、信心深いマリアが十字架の前で跪いた流れで二人だけの結婚式を行うシーン、衝動でベルナルドを殺した後にマリアの部屋を訪れベッドを共にするシーンなどが、2021年版には追加されていた。
アンセルは、影のある難役に再構築されたトニーを繊細に演じていた。だからこそ、体育館での一目惚れ翌日にマリアと結婚、その日の夜中に駆け落ちし損ねて殺されるというジェットコースター人生に真実味が生まれて共感できた。

マリア役のレイチェル・ゼグラーは本当に美声! 彼女の歌を聴いていると泣けてくるほど巧かった。予告編では「変顔」に見えるが、本編ではとても初々しくて可愛かった。大物になる予感。
それにしても、マリアはNYに来たばかりなのに「兄も恋人も、他人を殺して自分も死んでしまった」とはなんたる悲劇! 彼女のその後が気になる。

ミュージカルの要であるアニータ役のアリアナ・デボーズは1961年版よりもセクシー。歌も踊りも演技も完璧だった。筋肉隆々のベルナルド(デヴィッド・アルヴァレス)とイチャイチャする様子は、初々しいマリア&トニーと好対照だった。

ベルナルドは、面差しが少しプリンスに似ていた。ワイルド&セクシー。
リフは正反対で白く細身。若い頃のイーストウッドはこんな体型だった気がする。

リタ・モレノが演じるヴァレンティナは素敵なおばさん。あの美しい白髪は地毛だろうか? 撮影当時89歳だったと知って驚愕した。草笛光子よりも見た目が若い!



激動の157分を駆け抜けて大満足したが、1点だけ気になることがあった。
スカートのパターンが「1950年代」じゃない。

最初に「あれっ?」と思ったのは、ダンスパーティーに出かける前のアニータが
鏡の前でくるくるっとスピンした時だった。…おパンツが、丸見えやん…。爆

名ナンバー「​America」の群舞でしっかり検証できた。スカートのパターンが違う。
時代設定である1950年代のワンピースは、身頃とスカートの接ぎ方に工夫があって
回ろうが飛ぼうが脚を上げようが、そう簡単にはパンツが見えないデザインだった。
バレリーナのチュチュや、フラメンコダンサーのスカートにも通じる美学があった。

21世紀の美学は違う。「脚が長く見える」「インパクトが大きい」ことが正義だ。
だから、スカートはウエスト直下で接ぎ、回ると盛大に広がるよう作ってある。
だが、これは1950年代の女が着るには「はしたない」衣装だ。まるでアバズレだ。
この点、1961年版は「時代の価値観を正しく表現した衣装」だった。

時代考証=リアリティを取るか、現代の観客ウケを狙うか。難しい問題ではある。


オープニングの空撮から警察が不良を追い散らすまではリアリティを追求していた。
都市再開発によって移民など低所得者層の居場所が失われていく光景は、『イン・ザ・ハイツ』や『ブラインド・スポッティング』でも描かれていた。アイリッシュパブがプエルトリコ系の店に変わるなど、住民の勢力図も変化していた。それを象徴するプエルトリコ国旗が描かれた壁を、ジェッツ(ポーランド系の不良グループ)が汚しにかかる。反撃するシャークス(プエルトリコ系の不良グループ)は当時禁じられていたプエルトリコ国家を歌った。
古参であるジェッツ側には「居場所を奪われる・行き場を失う」焦りがある。
新参者のシャークス側も「いつ排除されるか分からない」立場だ。
警察は、狭いエリアを取り合う貧しい移民たちは皆追い出される運命だと告げた。

塩倉庫から逃げてヴァレンティナの店に集まったジェッツの男たちが、トニーを探しに行くFtMの子を初めて仲間と認めた後、トニーへの伝言を伝えに来たアニータを襲うシーンには怒りが湧いた。これにはリアリティを感じたから。
ジェッツの女たちはアニータを庇ったが男どもに追い出された。間一髪でヴァレンティナがアニータを救う。「お前たち全員が子供の頃から私は知っている。情けない。リフの死に泥を塗った」と叱られて小さくなる不良たち。本当に愚かな連中だ。
トニーもチノも愚かだった。マリアの怒りが大爆発し、初めて「銃を向けられる立場」になった時、不良たちは反省し、人種を超えてトニーたちの死を悼んだ。
現代日本で起きている事件を考えると、結末はファンタジーかも知れない、と思う。

トニーとマリアの恋物語は「ファンタジー」だろうか。
瞬間的な一目惚れは、古今東西よくある話だが、決して廃れることはない。「そういう純粋な恋愛に憧れる気持ち」は人間の真実だと思う。小手先の恋愛ドラマを見飽きた私も、この古典的な恋愛物語に新鮮な感動を覚えた一人だ。



https://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=5290064


IMAXで鑑賞。(YouTube公式予告編の画質とは雲泥の差!!! )
金をかけて作られたミュージカル作品は、金をかけて観るほど値打ちがよく分かる。
良い音を大音量で浴びる贅沢。バーンスタインの名曲群がいっそう輝きを増していた。


巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が、御年75にしてミュージカル映画に初挑戦。
60年も昔の名作をリメイクしたのには深い深い訳があった。

エンドロール冒頭に「For Dad」と白文字が出た。家に帰って調べてみた。

スティーヴンの父アーノルドは、『WSS』撮影中に103歳で大往生したという。
父は13歳の息子に8ミリカメラを託した。それがきっかけで息子は映画作りに熱中した。「映画を作ることで、私は恥ずかしさや罪悪感から解放されました。映画制作は、私にとっての『大脱走』だったのです」と、スティーヴンは後に語った。
アスペルガーでLD(難読症)のスティーヴンは、「映像を目で見る」「音を耳で聞く」映画やTVドラマならば問題なく楽しめたのだ。
また、スティーヴンはサントラアルバム集めが趣味で、特に『WSS』が好きだった。全楽曲を丸暗記し、文字通り「家族全員からうんざりされるほど歌っていた」という。
彼にとって、『WSS』と、彼の映画制作を終生応援し続けてくれた父とは、大きな愛着対象であったに違いない。


もちろん、スピルバーグ監督がリメイクに挑戦した理由はそれだけではないだろう。

人種間の分断・抗争が深刻化する昨今の社会を憂え、一石を投じたいという思い、
プエルトリコ移民の役を白人が演じたり、歌声を吹き替えたりした1961年版を
「もっと真実を描く、本物に仕上げたい」という思いがあったのではないか。

だから、2021年版は

・プエルトリコ人役はプエルトリコ人俳優を起用し、劇中でスペイン語を話させる
・トランスジェンダー(FtM)役も、本物の俳優を起用する
・役を演じる俳優本人に歌わせ(たとえ下手でも)吹き替えはしない
・「街で躍動する不良少年たち」を描くため、オープンセット撮影を多用する
・物語により深いリアリティを持たせるべく、あらすじを加筆修正
・ジェッツやシャークスの彼女たちも全員役名をつけ、エンドクレジットで表示
・白人移民は寒色系、プエルトリコ人移民は暖色系の衣装に統一する
・撮影角度や照明の使い方を工夫してドラマチックで象徴的な画面を構成する

などなど、隅々にまで「監督のこだわり」が光っていた。
こういう点に気づいて感動すると、1961年版がちゃちな出来にすら思えてくる。



Making Of WEST SIDE STORY (2021)


West Side Story OST | Full Album  https://youtu.be/b_GXUIXcjrI
WSS / OST トラックリスト  https://spice.eplus.jp/articles/296146



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2020年12月公開予定だった頃のPR記事
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「ウエスト・サイド・ストーリー」7つの必見理由
https://eiga.com/movie/91412/special/

名作の復活にあたり、スピルバーグは何を守り、何をアップデートしたのか
https://cinemore.jp/jp/erudition/2348/article_2349_p1.html

リメイク版『ウエスト・サイド・ストーリー』の絶妙さ  Newsweek日本版
https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2022/02/post-98040.php

「ウエストサイド物語」 1961年版の解説
http://zip2000.server-shared.com/westsidestory.htm

1961年版 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?&oldid=87546856
2021年版 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?&oldid=87990902

バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンス
http://www.shinkyo.com/concert/p208-2.html



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