12月8日、シネリーブル梅田【odessa music】で2度目の鑑賞。
9日で興行終了と知って駆けつけた。
ネットフリックスで配信中だが、音響が良い劇場で観る体験は格別だから。
県外まで遠征するついでに『チェイシング・トレーン』も観た次第。
親切なファンが、トラックリスト付きフルアルバムをアップしてくれていた。
https://youtu.be/utc2a3tSA7c
ーー あらすじ解説 ーー
物語は『tick, tick... BOOM! 』ワークショップの場面から始まる。
ジョナサン・ラーソンがまだ『RENT』を書く前の話。彼が亡くなる前の話。
彼はピアノを弾きながら、自虐的かつユーモラスに、自分について歌い始める。
彼はムーンダイナーという食堂でウエイターのバイトをしながら、ロックミュージカル『スーパービア』をもう8年間も書いていた。ヒロインが歌う重要な曲を残し、ほぼ完成していた。だが、どうしても最後の1曲が書けなかった。
ワークショップ(試聴会=プレゼン)は目前なのに! あと8日で30歳なのに!
尊敬するソンドハイムは27歳で脚光を浴びた。
ジョンとポールは30手前でビートルズを解散した。
僕の両親が30の時には2人の子持ちで住宅ローンを抱えていた…。
ジョナサンは「若さの終わり」に焦っていた。猛烈に。
いつでも時限爆弾のカウントダウンが聞こえるような気持ちがしていた。
「30/90」
https://youtu.be/kCt1MWLel1Q
ソーホーとグリニッジヴィレッジの中間に、ジョナサンは住んでいた。
狭いアパートをルームメイトとシェア。同居相手は14人も替わり、今は募集中。
持ち物はキーボード2台とMac1台、「他人が書いた」山ほどの音源と本。
生活は苦しかった。電気代を払えず、本を売って現金を得る。先は見えなかった。
N.Y.は、成功をつかんでいない人たちにとって「生き抜くのが超厳しい街」だ。
だからこそ、彼は恋人を喜ばせようとパーティーを開いたりして楽しんでいた。
「Boho Days」
https://youtu.be/BGIc8kb7dAA
「Green Green Dress」
https://youtu.be/lv0VZGty_m8
恋人のスーザンは、ダンスカンパニーに入団できたものの、ケガでチャンスを失った。
最近、田舎の学校から音楽教師のオファーがあり、話を受けるべきか悩んでいる。
彼女はジョナサンに付いてきて欲しい。それは彼が音楽の道を諦めることを意味した。
スーザンに意向を尋ねられても、ジョナサンは答えを先延ばしにしていた。
「Johnny Can't Decide」
https://youtu.be/zmSprl2moqI
幼なじみのマイケルは、ブロードウェイを目指し田舎から一緒に出てきた仲間だった。
だが、彼は自分の才能に早ばやと見切りをつけ、役者から広告営業に転職した。
今やドアマン付きのマンションに住み、高級車に乗る贅沢な暮らしをしている。
ジョナサンは手堅く生きるマイケルを見て、羨ましさに日和かけていた。
「No More」
https://youtu.be/V8tAX5Z4aBs
マイケルは日銭を稼げるモニターのバイトを紹介してくれたが、ジョナサンはしくじり
彼の顔を潰してしまった。(「Play Game」)
互いに相手のことを「恵まれているのに!」と喧嘩した。
ジョナサンは大学で作曲コースを取り、2年間学んだ。学生たちの作品を複数のプロが講評する、厳しい試練の場だった。自分の作品(スーパービア)を発表した日に来たのは、ジョナサンが憧れる作曲家スティーヴン・ソンドハイムと、もう1人。ソンドハイムは学生のみならずプロからも一目置かれる天才だが、内気そうで口数の少ない男だった。
ソンドハイムはジョナサンの作品をよく理解し、高く評価してくれた。また、「少し複雑にしすぎている。あと、あの場面でヒロインの歌が必要だ。分かってるだろ?」と的確な助言をくれた。
尊敬するソンドハイムからもらった褒め言葉を心の支えに、ジョナサンはひたすら作曲に打ち込んできた。だが、もう30歳。果たして、自分には才能があるのだろうか…?
焦る。焦る。HIVの友人が入院したと知っても見舞いに行く余裕さえ持てなかった。
作曲の締切が迫っていても仕事は休めない。日曜午前は食堂の書き入れ時だ。
「日曜日。愚か者たちが食堂にやってくる。トーストやコーヒーを摂るために。
家で食べればいいのに…これがサンディ ブランチ」
「Sunday」
https://youtu.be/Xjv8vNCfdUA
厳かな曲調にどこまでも美しいハーモニー。皮肉が効いた歌詞がトホホで笑える。
この「Sunday」はソンドハイムへのオマージュだそうだ。(替え歌になっている)
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?&oldid=83174957
元歌・"Sunday" for Sondheim
https://youtu.be/OVSAdMxV1y4
どの曲も良いが、私が特に好きな「Sunday」と「Why」が、どちらもソンドハイムの曲だと知ってビックリ。やっぱりサントラCDは買っておくものだ。
閑話休題。
切羽詰まったジョナサンは、返事を迫るスーザンとギクシャクする。
綺麗に韻を踏んだ「Therapy」の言葉遊びセンスは、ラーソンならではと感心。
「Therapy」
https://youtu.be/BAcG_tVWKM4
試聴会が翌日に迫った夜、ついに電気が止められた。作曲ツールが使えない!
業を煮やしたスーザンも乗り込んできた。「本当は、止めて欲しかったのかも」
抱き合う2人。だが、スーザンの肩を抱いたジョナサンの指は、思わず弾いていた。
「あなた、今の経験を歌にしようとしているわね!信じられない!」
スーザンはキレて出て行った。ヤケクソになったジョナサンはプールへ走る。
雑念だらけで泳いでいるうち、突然メロディが湧いてきた。
「Swimming」
https://youtu.be/nVbPr7x_Ws4
試聴会の朝。
滑り込みで曲が完成した。
ソンドハイム来場にざわつくキャストたち。喧嘩別れしたマイケルも来てくれた。
だが、スーザンは姿を現さない。
彼女は招待席に座らず、入口付近でこっそりジョナサンの作品を見届けていた。
『スーパービア』は素晴らしい作品だった。キャストたちも非常に歌が上手かった。
( Superbia ワークショップの練習
https://youtu.be/-YVcVYs7HqA )
金がない新人のワークショップに出てくれるキャストだから、全員無名の人だろう。
それでも上手かった。ブロードウェイのレベルの高さ、競争の厳しさを実感した。
やっと仕上げたヒロインの独唱は、スーザンの思いを代弁するかのような曲だった。
「Come to Your Senses(目を覚まして)」
ヒロイン役とスーザンの二重唱は絶品。
https://youtu.be/OvoDSHEVMww
エージェントに試聴会の反響を尋ねたジョナサンは、ショックに打ちのめされた。
「みんな絶賛よ。次回作に期待!って」
「次回作だって!? スーパービアは?」
「引き合いゼロね」
「私は前から忠告してたけど、あれはダメよ。SFはウケないし費用もかかりすぎる」
「決して、そんなことはない!」
「でも、皆はそう思うのよ。業界の大先輩として、ひとつ助言するわ。
次は『あなたがよく知っている、身近な話』を題材に書きなさい。いいわね?」
絶望したジョナサンは、夜にも関わらずマイケルのマンションに駆け込んだ。
「もう無理だ!俺は辞める!こんなバイト暮らしを、さらに5年続けるのは嫌だ!」
マイケルは驚いてジョナサンをなだめた。
「僕程度の俳優はゴロゴロいるから就職した。でも、君はワン&オンリーじゃないか。
スーパービアは本当に素晴らしかった。時間はたっぷりあるさ。夢を諦めるなよ」
「君にだって時間はあるじゃないか!」
「僕にはない。HIVポジティブと分かったんだ。
運がよければ1年かそれ以上生きられるかも。時間に関しては僕の方が切実だ」
「そんな…いつ分かったんだ?」
「数日前かな」
ジョナサンはマイケルに「話がある」と言われたことを思い出した。試聴会の準備に必死で放置していた。僕はなんて自分勝手な…。ジョナサンはショックで飛び出した。
(「Real Life」を歌うマイケルの横顔はフレディ・マーキュリーに似ていた)
https://youtu.be/6yYSm5fU1tU
走って走って、ジョナサンは野外ステージに忍び込んだ。舞台には1台のピアノ。
覆いを取ったジョナサンは、ピアノを弾きながらマイケルとの思い出を歌い始めた。
(「Why」もソンドハイムの曲をベースに、歌詞をアレンジした名曲)
雨に打たれて歌い、気持ちを整理したジョナサンは、マイケルの部屋に戻ってきた。
「びしょ濡れじゃないか!」「本当に悪かった。自助グループを探してきたよ」
お互い泣きながら、固く抱き合う二人。
自分のアパートで、床にアイデアメモを広げたジョナサンは独り悩んでいた。
マイケルのためにも夢を諦めるわけにはいかない…でも、どうしたら…。
電話が鳴ってもジョナサンは考え込んでいた。留守電が起動した。「Speaーk!」
「ソンドハイムだ。作品はとても良かった。それを伝えたくて電話した。おめでとう。
もし良ければぜひ会って話をしたい。あの作品は最高級で将来性がある。君にもね。
また電話するよ。誇りに思って(Be proud.)」
この台詞はソンドハイム本人がリライトし、自ら録音した声だそうだ。…胸熱。
https://theriver.jp/tick-tick-boom-voice-mail/2/
ジョナサンは30歳の誕生日を迎えた。食堂の同僚が誕生パーティーを開いてくれた。
歓談していると、通りに人影が。スーザンだった。慌てて表に出るジョナサン。
「この間はごめんなさい」「いや、僕の方こそ」「これ、誕生祝い」
手渡されたバッグから出てきたのは、いつぞや本屋で見た高価な楽譜ノートだった。
「これからどうするの?」「次回作にかかる」
「頑張って。私は教師のオファーを受けたわ」「そう…どうか幸せに」
泣きながら抱き合う二人。それぞれの道を歩むために、別れる時が来た。
場面は変わって、『tick, tick… BOOM!』のワークショップ。
ジョナサンは自身の経験をもとにした『tick, tick… BOOM!』を発表した後、数年がかりで傑作『RENT』を書き上げた。だが、彼はオフブロードウェイ・プレビュー公演日の未明、急性大動脈瘤破裂で急逝。『RENT』の大ヒット&ロングランを知ることはなかった。享年35歳。
このナレーションを初めて聞いたときは、ショックでただ呆然とした。
鑑賞2回目は「Real Life」あたりからすでに泣いており、ここで泣きまくった。
来し方を語り終えたジョナサンは、最後の曲を紹介する。
「Louder Than Words」
https://youtu.be/su6urM6Li5k
Cages or Wings, Which you prefer?
Ask the birds
Fear or Love, baby?
Don't say the answer
Actions speak louder than words
伸びやかなメロディ、瑞々しい歌詞。心地よいアンサンブル。
ラスト、ジョナサンが「Happy Birthday」のメロディを弾くと
場面は「食堂での誕生パーティー」にカットバックした。
青いロウソクを3本立てたケーキを捧げ持ってきたフレディが、ジョナサンに言う。
「Make a wish!」
その瞬間、ジャーン!という大音響とともに、モノクロのタイトルが出る。
ジョナサンが何を願ったのかは分からない。
エンドロールは有りし日の本人映像。
https://youtu.be/w0nRmpUAUKI
アンドリュー・ガーフィールドが本人そっくりで驚いた。
『イン・ザ・ハイツ』に比べれば、本作はスケールも完成度も劣るかもしれない。
それでも、私がこの作品に惹かれ、愛おしさのあまり語り倒してしまうのは、
早世したラーソンを惜しむミランダ監督の熱き思いが心を激しく揺さぶるからだ。
How Sondheim & Larson Woke Up A Generation
https://youtu.be/vtswKLJHN4A
ミュージカルを愛するすべての人に鑑賞を勧めたい。 視聴は Netflix で。
【傑作】『tick, tick... BOOM!: チック、チック...ブーン!』 2021年12月07日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981041788&owner_id=1833905
ケスさんの日記 2021年12月05日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981020174&owner_id=12923117
tamaさんの日記 2021年12月16日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981112201&owner_id=10258677
ーー ミュージカル関連日記 ーー
【ヒスパニック讃歌】『イン・ザ・ハイツ』 2021年08月13日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980062155&owner_id=1833905
【解説】ミュージカル映画の文法 2021年08月14日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980073082&owner_id=1833905
【2回目】『イン・ザ・ハイツ』鑑賞 2021年08月20日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980123066&owner_id=1833905
関連・ミランダが名唱を聴かせる『メリー・ポピンズ リターンズ』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1970559997&owner_id=1833905
関連・ミランダが解説で登場したドキュメンタリー『サマー・オブ・ソウル』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980656827&owner_id=1833905
【INDEX】音楽関連日記 / 2011〜
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1668576988&owner_id=1833905
【INDEX】映画/舞台 関連日記(2)2019〜
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979079540&owner_id=1833905
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