mixiユーザー(id:1833905)

2021年08月14日21:40

96 view

【解説】ミュージカル映画の文法

 
1つ前の日記で、
「ミュージカル映画はいきなり歌い出すのが苦手/とても違和感がある」
という、よく聞くご意見を伺った。

 【ヒスパニック讃歌】『イン・ザ・ハイツ』
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980062155&owner_id=1833905


子供の頃からミュージカル映画を観てきた私は
決して「いきなり歌い出して」なんかいないのになー(泣)と思う。

そこで、できるだけ分かりやすく説明してみよう!と。



ミュージカル映画における歌やダンスは「心象風景」「ファンタジー」だ。

舞台のミュージカル(板の上で繰り広げられることは丸ごと「虚構」)と違い、
映画のミュージカルは「ストレートプレイ」と「ミュージカルパート」が
同じ(リアルに作り込まれた)セットの上でシームレスに展開しがちなために、
「現実から虚構に切り替わるポイント」が判別しにくいのかも。

いくつか具体例を示しながら「スムーズに楽しむポイント」を解説したい。




まず、「きっちりミュージカルの文法に則っている」分かりやすい例から。

『The Shape Of Water』唯一のミュージカルパート、「You'll Never Know」。


ヒロインのイライザは「口が聞けない」ため手話を使っている。ここは現実。

バックには小さな音で「You'll Never Know」が流れている。これが伏線。
イライザの想いはこの歌の通りだが、恋しい半魚人にはそれが伝わらない。

0:27 あたりから現実=周囲の風景は闇に沈み、イライザにスポットが当たる。
ここが、「今から心象風景=ミュージカルパートになりますよ〜」というサイン!

だんだんBGMが大きくなる。 0:35、イライザが歌詞を呟き始める。
ミュージカルパートがひそやかにスタートした。

0:48、画面がモノクロになる。「今からは完全に想像の世界です」のサイン。

1:00、黒バックの中で立ち上がって歌い出すイライザ。そして、場面転換。

1:08から、アステア=ロジャースのオマージュが繰り広げられる。

1:57、ドレスアップしたイライザは再び黒バックの中で独りになる。
これが(彼女の心象風景である)ミュージカルパートから現実の世界に戻るサイン。

2:00、普段着姿に戻ったが、まだ「歌っている」=想像の世界は続いている。

画面に色が戻り、周囲は徐々に明るくなり、彼女の声は消えて、手話になる。
始まりと同様、とてもスムーズに「現実」へ戻って着地。

  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965535602&owner_id=1833905




次は名作『雨に歌えば』より。 「Moses supposes」


冒頭、ドナルド・オコナーが百面相をしている時点で、映画を見慣れた人なら
(これから何か面白いこと=ミュージカルパートが始まるんだな)と分かる。

0:15、聖書を音読するジーン・ケリーが(からかおう)とドナルドに目配せする。
0:20、ドナルドがまるでラップのようにリズムをつけ、クレッシェンドで暗唱する。

0:26、ジーンとドナルドが踊り始めながら唱和。実はここから歌が始まっている。
0:35、「フッビルリルリ♪」をきっかけにメロディや伴奏がつく。踊りも本格的に。

このように、ミュージカルパートは「段階を踏み、シームレスに」始まるのが定石。




歌のないミュージカルシーン(ダンスシーン)も見てみよう。

『La La Land』の元ネタになった、『バンドワゴン』の傑作ダンスシーン。


公園を散歩するフレッド・アステアとシド・チャリシー。二人の恋が始まる場面。
BGMは移動遊園地の音楽から徐々にオーケストラ(劇伴)へと転換していく。

0:23、シドが足を振り上げてターン。艶やかなストリングスの音楽が盛り上がる。
ここからは心象風景だ、と分かる。
シドに呼応するようにアステアもターン。二人の思いはシンクロしていると分かる。

0:35、プレパレーション(ポーズ)が決まり、本格的なダンス=心の交流が始まる。

3:07、アステアがシドの腰に手を回し、エスコートする形に。
そのまま馬車に走り寄り、3:13でアステアが座席に座った瞬間からは現実世界。

ここでも「現実世界→心象風景→現実世界」の転換はシームレスに行われている。




ついでに、『La La Land』のオマージュシーンもチェック。


0:25、それまでは夜の屋外の音(虫の声)だけだったが、BGMが入り始める。
現実的な台詞を交わす芝居は続いている。徐々に音楽が盛り上がっていく。

見晴らしのいい場所で佇む二人。1:01、ライアンが小石?を投げる。イントロ。

1:08、背を向けていたライアン・ゴズリングが街灯を掴んでクルッとターン。
エマ・ストーンに彼の顔が見える。囁くように歌い始める。
ここまで劇伴にガイドされてきているので「歌が唐突に始まる」感じはない。

2:14、ホーンできっかけが入ってエマも歌い出す。
エマがドライビングシューズに履き替え、3:29から二人のタップダンスが始まる。

うーん、久しぶりに見たけど、ヘタだーー!爆

  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958873745&owner_id=1833905




一方、わりかし「突然歌が始まる」作品もある。例えば『マンマ・ミーア』。


これは「ABBAの名曲クリップ集」的な作品なので、まぁアリですよね(笑)。
それでも、イントロはちゃんとつけているから、事前の心構えはできようかと。



『グレイテスト・ショーマン』もこの系譜。 やはりMV集()と感じる。


  https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=1833905&id=1965596919




さて、『In The Heights』も確認してみよう。 曲は「No Me Diga」。


冒頭、ニーナが美容院に入ってきた瞬間は現実世界。店内BGMなし、劇伴もなし。

0:08あたりから、ラテンのリズムが刻まれ始める。徐々に劇伴が大きくなる。
0:15、イントロが終わり、歌が始まる。現実世界とファンタジーが渾然一体。
2:15、ニーナの「Stop!」で歌が終わる。「中退したの」でシリアスな現実に。

ところが、ここは曲でいう「ブレイク」。 凝ってるねー!

「What hell happened ?」をきっかけに「I don't know♪」と歌が再開する。
これはなかなか洒落た趣向。キビキビしたラテン音楽ならでは。面白い。

現実から歌に移行するまでの時間は短いが、ちゃんと文法は押さえている。

  https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980062155&owner_id=1833905




こんな感じです。

ミュージカル映画には「文法」があります。
つたない説明でしたが、ご理解いただけましたでしょうか。

何か不明点がございましたら、ぜひ遠慮なく教えてくださいませ〜。<(_ _)>



【INDEX】音楽関連日記 / 2011〜
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1668576988&owner_id=1833905

【INDEX】映画/舞台 関連日記(2)2019〜
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979079540&owner_id=1833905


 
3 10

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年08月>
日 月 火 水 木 金 土
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031