1つ前の日記で、
「ミュージカル映画はいきなり歌い出すのが苦手/とても違和感がある」
という、よく聞くご意見を伺った。
【ヒスパニック讃歌】『イン・ザ・ハイツ』
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子供の頃からミュージカル映画を観てきた私は
決して「いきなり歌い出して」なんかいないのになー(泣)と思う。
そこで、できるだけ分かりやすく説明してみよう!と。
ミュージカル映画における歌やダンスは「心象風景」「ファンタジー」だ。
舞台のミュージカル(板の上で繰り広げられることは丸ごと「虚構」)と違い、
映画のミュージカルは「ストレートプレイ」と「ミュージカルパート」が
同じ(リアルに作り込まれた)セットの上でシームレスに展開しがちなために、
「現実から虚構に切り替わるポイント」が判別しにくいのかも。
いくつか具体例を示しながら「スムーズに楽しむポイント」を解説したい。
まず、「きっちりミュージカルの文法に則っている」分かりやすい例から。
『The Shape Of Water』唯一のミュージカルパート、「You'll Never Know」。
ヒロインのイライザは「口が聞けない」ため手話を使っている。ここは現実。
バックには小さな音で「You'll Never Know」が流れている。これが伏線。
イライザの想いはこの歌の通りだが、恋しい半魚人にはそれが伝わらない。
0:27 あたりから現実=周囲の風景は闇に沈み、イライザにスポットが当たる。
ここが、「今から心象風景=ミュージカルパートになりますよ〜」というサイン!
だんだんBGMが大きくなる。 0:35、イライザが歌詞を呟き始める。
ミュージカルパートがひそやかにスタートした。
0:48、画面がモノクロになる。「今からは完全に想像の世界です」のサイン。
1:00、黒バックの中で立ち上がって歌い出すイライザ。そして、場面転換。
1:08から、アステア=ロジャースのオマージュが繰り広げられる。
1:57、ドレスアップしたイライザは再び黒バックの中で独りになる。
これが(彼女の心象風景である)ミュージカルパートから現実の世界に戻るサイン。
2:00、普段着姿に戻ったが、まだ「歌っている」=想像の世界は続いている。
画面に色が戻り、周囲は徐々に明るくなり、彼女の声は消えて、手話になる。
始まりと同様、とてもスムーズに「現実」へ戻って着地。
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次は名作『雨に歌えば』より。 「Moses supposes」
冒頭、ドナルド・オコナーが百面相をしている時点で、映画を見慣れた人なら
(これから何か面白いこと=ミュージカルパートが始まるんだな)と分かる。
0:15、聖書を音読するジーン・ケリーが(からかおう)とドナルドに目配せする。
0:20、ドナルドがまるでラップのようにリズムをつけ、クレッシェンドで暗唱する。
0:26、ジーンとドナルドが踊り始めながら唱和。実はここから歌が始まっている。
0:35、「フッビルリルリ♪」をきっかけにメロディや伴奏がつく。踊りも本格的に。
このように、ミュージカルパートは「段階を踏み、シームレスに」始まるのが定石。
歌のないミュージカルシーン(ダンスシーン)も見てみよう。
『La La Land』の元ネタになった、『バンドワゴン』の傑作ダンスシーン。
公園を散歩するフレッド・アステアとシド・チャリシー。二人の恋が始まる場面。
BGMは移動遊園地の音楽から徐々にオーケストラ(劇伴)へと転換していく。
0:23、シドが足を振り上げてターン。艶やかなストリングスの音楽が盛り上がる。
ここからは心象風景だ、と分かる。
シドに呼応するようにアステアもターン。二人の思いはシンクロしていると分かる。
0:35、プレパレーション(ポーズ)が決まり、本格的なダンス=心の交流が始まる。
3:07、アステアがシドの腰に手を回し、エスコートする形に。
そのまま馬車に走り寄り、3:13でアステアが座席に座った瞬間からは現実世界。
ここでも「現実世界→心象風景→現実世界」の転換はシームレスに行われている。
ついでに、『La La Land』のオマージュシーンもチェック。
0:25、それまでは夜の屋外の音(虫の声)だけだったが、BGMが入り始める。
現実的な台詞を交わす芝居は続いている。徐々に音楽が盛り上がっていく。
見晴らしのいい場所で佇む二人。1:01、ライアンが小石?を投げる。イントロ。
1:08、背を向けていたライアン・ゴズリングが街灯を掴んでクルッとターン。
エマ・ストーンに彼の顔が見える。囁くように歌い始める。
ここまで劇伴にガイドされてきているので「歌が唐突に始まる」感じはない。
2:14、ホーンできっかけが入ってエマも歌い出す。
エマがドライビングシューズに履き替え、3:29から二人のタップダンスが始まる。
うーん、久しぶりに見たけど、ヘタだーー!爆
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一方、わりかし「突然歌が始まる」作品もある。例えば『マンマ・ミーア』。
これは「ABBAの名曲クリップ集」的な作品なので、まぁアリですよね(笑)。
それでも、イントロはちゃんとつけているから、事前の心構えはできようかと。
『グレイテスト・ショーマン』もこの系譜。 やはりMV集()と感じる。
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さて、『In The Heights』も確認してみよう。 曲は「No Me Diga」。
冒頭、ニーナが美容院に入ってきた瞬間は現実世界。店内BGMなし、劇伴もなし。
0:08あたりから、ラテンのリズムが刻まれ始める。徐々に劇伴が大きくなる。
0:15、イントロが終わり、歌が始まる。現実世界とファンタジーが渾然一体。
2:15、ニーナの「Stop!」で歌が終わる。「中退したの」でシリアスな現実に。
ところが、ここは曲でいう「ブレイク」。 凝ってるねー!
「What hell happened ?」をきっかけに「I don't know♪」と歌が再開する。
これはなかなか洒落た趣向。キビキビしたラテン音楽ならでは。面白い。
現実から歌に移行するまでの時間は短いが、ちゃんと文法は押さえている。
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こんな感じです。
ミュージカル映画には「文法」があります。
つたない説明でしたが、ご理解いただけましたでしょうか。
何か不明点がございましたら、ぜひ遠慮なく教えてくださいませ〜。<(_ _)>
【INDEX】音楽関連日記 / 2011〜
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