【ぴいぷる】映画監督・前田哲、3度のピンチ乗り越えて…永野芽郁主演「そして、バトンは渡された」と天海祐希主演の「老後の資金がありません!」でメガホン
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「超売れっ子監督? 何を言ってるんですか。このまま映画監督廃業か…。そんなピンチを3度も経験しているんですから」
“マエテツ”の愛称で慕われる人気監督はこう語り、豪快に笑う。
ただ、そう謙遜はするが、ワーナー・ブラザース、東映の配給で2作品が同時期に公開とあっては、こちらとしては、こう言いたくもなる。
「1本はコロナ禍の影響で公開が延びたから、重なっただけですよ」。どこまでも謙虚さを忘れない。
以前、佐藤浩市を取材したとき、こんなことを言っていた。
「マエテツとは助監督時代からの尽き合いで、『君が監督になったら必ず出演するから』と約束したんですよね」
俳優に限らず、伊丹十三、井筒和幸、黒沢清…。そうそうたる大御所に怒鳴られながらも、かわいがられる。この人の持つ愛嬌もそうさせているのだろう。
下積み時代は長かった。
「当時、スーパー助監督と呼ばれてたんですよ」
だが、ある先輩助監の働く姿を見て思い知らされた。
「自分よりもできる。そう認めざるを得ないウルトラスーパー助監督がいたんです」。その後、監督となり、米誌「タイム」のベストホラー映画にも作品が選出された鬼才、三池崇史だ。
「勝てないかもしれないけど三池監督を手本にしよう」。そう覚悟して助監を卒業、フリーの監督となった。あれから23年…。
2本同時期の映画は、永野芽郁主演の「そして、バトンは渡された」(29日公開)、天海祐希主演の「老後の資金がありません!」(30日同)だ。
それにしても、3度も危機があったんですか?
「本当ですよ。大作を撮った後にピンチは訪れる。いくら自信作が撮れたと思っても、映画はヒットしないと評価されない。3回、ヒットしなかったんです」
厳しい現実に打ちのめされた。佐藤が出演した大作も「ヒットしなかった…ですね」。だが、くじけなかった。煮えたぎる悔しさを創作の原動力に変え続けた。それが今につながっている。
「そして、バトン〜」は「本屋大賞」を受賞した同名小説(2018年刊)が原作だ。
「原作者の瀬尾まいこさんに『映画化させてほしい』と手紙を書きました。受賞する前にですよ」
ヒロインの永野とは「撮影前に2人で何時間も話し合って演出手法を探りましたね」と明かす。若手に限らずベテランとも信頼関係を築けるまでコミュニケーションを重ねに重ねる。この作業こそが、作品を支える礎(いしずえ)となり、奥行き、重厚さを増す土台になる。
で、少々しつこいかな、と思ったが、ここで「大成功ですね」と、もう一度ふってみた。
「だから何度も言ってるでしょう。そんなこと思ってませんよ」
笑ってくれたが、目はそうではない。
公開までこぎつけたがこの先、結果が伴うかどうか。これが本音なのはわかる。
でも、そう心配しなくてよさそうだ。話題性、前評判は低くない。というか高い。ここにきて、コロナ収束傾向という運もある。
観客も俳優もスタッフも、マエテツ渾身の一作に酔いしれる準備はできている。
■前田哲(まえだ・てつ) 年齢非公表。大阪府出身。フリーの助監督として伊丹十三、崔洋一、周防正行ら重鎮監督の元で修業。1998年、オムニバス映画「ポッキー坂恋物語 かわいいひと」で監督デビュー。主な作品に「陽気なギャングが地球を回す」(2006年)、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(18年)など。新作「そして、バトンは渡された」が29日、「老後の資金がありません!」が30日から全国公開。
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