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2021年09月29日02:28

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それでそれで?2

40年前にたまにロンドンのボロアパートに遊びに来てくれた高校時代の同級生は大人に言わせるとよくできたお嬢さんだった。
勉強もできおしゃれもこざっぱり、よく気がつき礼儀正しい。
立美(たつみ)さんは模範的な娘さんと言える。

「その立美さんとどう知り合ったの?」
「だから洋裁学校よ。学校には全然行かなかったけどね。」

面白い。
私もその洋裁学校に行っていた、嫌々ながら。
が、一応学校には真面目に通っていた。
遅く入学した私は立美さんとは学年が違っていたので、同じ東京にいながらあまり交流はなかった。
その立美さんは日本に帰国してのち、会社を変えながらデザイナーとして仕事を続け、最終的にはロンドンのバーバリー社のライセンスを持つ会社で、日本人向けバーバリーのデザインを受け持った。

「そうなの、私も洋裁は好きじゃなかったわ。」
嬉しくて笑いながら言った。
「でね、立美さんのこと好きじゃなかったのよ。」
アキさんの目がまるくなって次の言葉を待っている。
「だってそうでしょ。あの人我が家の大人たちが褒めそやすんだもの。わたしは一度も褒められたことなかったのに。」

記憶が甦った。
祖母が4度目の胃がんの手術をした時、末期状態だと言うことで田舎に呼び戻された。
ちょうど夏休みで立美さんも田舎に戻っていて、祖母の見舞いに病院を訪れてくれた。
草花を束ねた可愛い花束を差し出し
「ご気分はいかが?来る途中可愛い草花が咲いていたので摘んできたんです。花屋の花よりも自然を感じられていいかなと思ったんですけど。」
その頃の田舎の若者は大人の前では社交術もなく沈黙しがちだったのに対して、彼女の挨拶は淀みない。
そしてさりげなく会話を進める。

祖母は
「なんとまあよく気のつくお嬢さんじゃのう。」
と感激。
「わかるわかる」
とアキさん。
「立美さん横浜の私の家にもよく遊びにきてくれていたのよ。そしたら両親が彼女のこと大気に入りで、父なんかいつもお小遣いあげていたくらいよ。」
へーえ、そうなんだ。
あの人評判が良いのよねー大人に、と羨望と嫉妬を交えた私の感想。

ここからアキさんの代々大工だという家族の話になった。




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