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2021年08月02日14:32

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映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』作品レビュー

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』作品レビュー

 地方都市「小田市」を舞台に、そこで暮らしている少年と少女によるさわやかな夏の恋物語。何の特徴もないショッピングモールで出逢った、人と付き合うのが苦手な俳句少年・チェリー(声・市川染五郎)とコンプレックスをマスクで隠す少女・スマイル(声・杉咲花)が言葉と音楽で距離を縮めていく姿を描いたもの。

 最近はやりの俳句ですが、本作の俳句の紹介の仕方があまりに唐突。場面ごとの登場人物の心境に併せて、街の落書きとして突然俳句が出てきて劇中で読まれても、詩心のない観客は、その俳句の意味するところが理解できません。せめて俳句の意味するところを説明する台詞が欲しかったです。

 またもの凄くシャイな主人公が意を決して告白するシーンでは、俳句の連呼のなかで『サイダーのように言葉が湧き上がる』というタイトルも自由律俳句として読まれます。でも気持が空回りしていて、『言葉が湧き上がる』感じに見えないのです。
 やっぱり言葉通りのエモーショナルな感情の爆発する表現が欲しいところでした。

 ただ映像は大変独特で、夏の恋物語としてよくマッチングしています。吸い込まれそうな青い空、入道雲、夏祭りでにぎわう街並み。彩度とコントラスが高めな表現は、『ハートカクテル』のわたせせいぞうタッチ。これでサントラを故・松岡直哉が担当していたら、ぴったりだったでしょう。吟味された描写や言葉に大人も思わずじんと来ることでしょう。



 人との会話が苦手で、他人から話しかけられないようにとヘッドホンをいつも身に付けているチェリーは言葉に表わせない感情や想いを、趣味で親しんでいる俳句に乗せて書き綴っていました。
 
 一方で、コンプレックスから歯科矯正中の大きな前歯を隠すため、いつもマスクをしている女子高校生のスマイル。スマイルはライブ配信を手がける人気ライバーで、日頃から目に留まった「カワイイ」を見つけて配信しながら過ごしていたのです。
 
 趣味の俳句以外では思い浮かんだ心情を表現できないチェリーと、見た目のコンプレックスをどうしても受け入れることのできないスマイルは、地元「小田市」の大型ショッピングモールで偶然出会います。互いにコンプレックスを抱えたふたりは、ライバーである少女スマイルの配信を通じて少しずつお互いを知るようになり、距離を縮めていったのでした。
 
 やがてふたりはショッピングモールにあるデイサービスの福祉施設で一緒にアルバイトをするようになります。
 その施設でふたりがいつも面倒を見ているフジヤマ(声・山寺宏一)という老人がいました。彼がむかし失ってしまったという想い出の「レコード」を捜しながら、ふたりは心の距離を縮めていきます。
 ふたりはレコードの正体を突き止め、フジヤマが探していた理由に触れるとともに、スマイルは少しずつ自分のコンプレックスを受け入れていくのでした。一方、チェリーにはある予定があったが、それをスマイルに話し出せないでいたのです。
 
 監督は本作がアニメ映画初監督となるイシグロキョウヘイ。主人公のチェリーの声を歌舞伎俳優の市川染五郎、ヒロイン役のスマイルの声を女優の杉咲花が務めました。なお、市川染五郎は初映画、初主演での声優初挑戦でシャイな男の子の感情表現をそつなくこなしていました。大貫妙子の劇中歌もよかったです。(2021年7月22日に公開☆)

☆公式サイト
http://cider-kotoba.jp/





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