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2021年06月09日21:36

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新旧ピンク

 上野オークラで山内大輔監督の新作「淫靡な女たち イキたいところでイク!」を観る。尊大な夫に悩まされるヒロインは、なぜか瞬間移動の能力を手に入れる。前週の竹洞哲也監督「恋愛相談 おクチにできないお年頃」も他者の心の声を聞く超能力ものだったが、また超能力だ。以前も自主映画を撮る話が続いたが、大蔵映画は意識的なのか。何か意図があるのか。
 序盤に出てくる夫が実に嫌な奴で、この男がどんな殺され方をするかと思ったが、なんと今回は流血描写がない。暴力場面も巧妙に避けている。
 ヒロインの瞬間移動は意図したものではなく、どこへ行くかわからない。しかし繰り返すうちに、登場人物たちの関係が見えてくる。これは「ひまわりDays 全身が性感帯」「スナックあけみ 濡れた後には福来たる」と同じく山内流ハートウォーミング路線と分かる。
 夫の元に戻らないことを決めたヒロインが、不動産屋に空き物件を紹介してもらい、そこに侵入して寝泊りする意外性。そして不動産屋の青年の視点となり、好意を持っている女性が、実は風俗で働いていると分かる驚き。人間関係が繋がる面白さは変わらず。
 女性の名前が「スミレ」なのは、山内組を観続けてきた者としては、ニヤリとさせられる。 
 瞬間移動の最後の謎であった海で、2組のカップルが顔を合わせるラストもいい。加藤ツバキさんの久しぶりの主演も嬉しく、あけみみうさんの前作とは打って変わった佇まいもいい。山内監督作は今回も楽しめた。
 「海底悲歌」は、OP映画のロゴが出ない。これは堂ノ本敬太監督の大阪芸術大学の卒業制作の自主映画。自主映画がピンク映画として上映されるのは、井筒和幸監督「行く行くマイトガイ 性春の悶々」がある。細山智明監督「実録 桃色家族性活」もそうだったか。
 奈良でコンパニオンをしている元教師のヒロインは、職場で疎まれ、家では認知症の父親から性的虐待を受けている。ヒロインを送迎する運転手の青年は、かつての教え子。
 ヒロインは青年に暴力を振るう父親を撲殺、2人は逃避行に出る。
 ヒロインは日記帳で父親を殴るが、描写が弱弱しく、死んだとは思えなかった。在りし日の父親からもらった日記帳で殺す悲劇が浮かび上がらない。2人が出会う家出の少年少女や、親切そうで実はレイプ目的の漁師たちなど、もっと描きようがあったのでは。先駆者2人に比べ、物足りなかった。
 渡邊元嗣監督作とは違った面を見せる生田みくさんや、いつものコメディ演技を封印したフランキー岡村さんなど、いいところもあったし、勝負はこれから。
 シネロマン池袋で旧作を観る。「最新!! 性風俗ドキュメント」は94年の深町章監督監督作品で、公開時以来の再見。荒木太郎監督が、イメクラ店で働く林由美香さんを取材するピンク映画の体裁を取っている。
 主演の2人は本人だが、企画の中田新太郎さんは池島ゆたか監督が演じ、原田兼一郎、今岡信治の助監督も俳優が演じている。なぜか深町監督は声しか出てこないが、現実とのメタ構造が面白い。脚本ならぬ「構成」は甲賀三郎。これは瀬々敬久監督ではないか。
 イメクラのプレーをする中で、2人は接近する。撮影後2人が雑踏でキスする場面は覚えていたが、今観ても名場面。
 ここから2人の関係に焦点が定まる。荒木は由美香が中田とラブホテルに行くのを見て、由美香に冷たくなる。そして本番中の意外な告白を経て、悲劇の終幕へ。
 当時と違って、現実の由美香さんの運命を知る今となっては、これはつらいと思ったが、その後のオチでホッとさせられる。公開時と同様楽しめた。上野オークラがこの映画を上映しないとはもったいない。
 「ザ・レズビアン 甘い蜜の誘惑」(公開題『レズビアンレイプ 甘い蜜汁』)は、91年の佐藤寿保監督作品。寿保監督は好きなのだが、この作品は見逃していた。
 大学の研究室に勤めるヒロインは、新人の女性に惹かれる。ヒロインは出入り業者の青年に女性をレイプさせ、それを助けることで接近しようとする。
 タイトルバックの試験管越しに見えるヒロインに異様なものを感じたが、レイプされたことでレズビアンになったいかにも寿保映画の人物。善良そうに見えた青年も、夜な夜なモデルガンを改造し、それでレイプすることを妄想する。
 子どもを欲しがる女性に、ヒロインは拳銃に「硝子のサイレンサー」をつけ、精液を入れて青年に襲わせる。ヒロインと青年の関係性が面白いが、私が夢中になった80年代の寿保監督の鋭さに欠けた。しかし、ようやく観られたことは嬉しい。
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