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2021年02月17日07:43

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ブレードランナーの歌舞伎町で

· 美容の通訳をしていた私はある時期毎年ビダルサスーンの方々と仕事で東京に行くという幸運に恵まれました。
サッスーン杯(サスーンカットコンテスト)の為にVSチームと東京で仕事していた時のある夜の話。専門雑誌「新美容」に執筆した散文の一部です。

「本当のペアードレッシング」
美容のことをヘアードレッシングという。
その業界でも有名な組織の一つにビダルサスーンがある。そのサスーンスクールで通訳をしていた私はある時期サスーンチームと一緒に毎年東京で仕事することになった。
マーク ヘイズ他4名のVSチームが毎夜遅くまでショーの準備に奮闘。
仕事が終わると夕食のために夜の街に出かけます。
新宿は歌舞伎町。ネオンとハイテク、ワイルドで何処か原始的なブレードランナーを思わせるところが彼らのお気に入り。
寿司以外ならなんでも食べると言いながらも,結構好みにこだわるボスのアニー ハンフリー先生の為に時間をかけてレストランを物色。厳選の上入ったのが今では数少ない炉端焼き。その夜は特に遅くなって11時近かった。狭い階段を降りて地下に入ったそこには,長方形の木のテーブルを囲んだ人々が,ビール瓶を何本も並べて楽しそう。
私たちも長い大きなテーブルを占領、野菜の串焼きや焼き鳥は勿論、焼き魚その他いろいろ注文。所狭しと並んだ馳走を頬張りながら体験談や失敗談をジョークを交えながら披露しながら1日の疲れを発散します。
ほとんどは話し上手なマーク先生がエンターテイメント。ビールと日本酒もたっぷり堪能した頃です、誰ともなく果物が食べたいねと。 生憎その店には果物は置いていません。となるとますます欲しくなるもののようです。こまったなと思いながら足を動かした時、その足が何かに触れたのです。あ、そうだ、私はコンビニでなしを買っていたんだ。お店の方に事情を説明し持参のなしを食べる許可を得ると共にナイフも貸してもらいました。
そこで何度も来日しているアニー先生が知識を披露となった。
「このペアー(梨)はね、ヨーロッパのペアーと違って,カリカリしていてアップルみたいに美味しいのよ。」
一同梨を見つめる中、借りたナイフで6等分にカット。テーブルの中央におきました。
VSチームはなぜか手を出さず見つめるばかり。
するとサイモン先生が「これは実に見事に切れている。すごいカットだね。」
そう云えばイギリスのキッチンナイフは切れないものばかり。なので日本のナイフの切れ味に感心しているとわかった。そしてこのナイフの切れ味と日本製のシザーの切れ味が結びついて皆さん見惚れるばかり。
そこにマーク ヘイズ先生が日本酒を一気に飲み干し,マイルドセブンの煙をゆっくり吐き出した後、トドメの一言。
「これが本当のペアードレッシングだね。」

座布団3枚!
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