君のポケットのどこかにぼくのびい玉がある
しょぼしょぼと 夜来の雨が降りつのっている
雨は時折弱まったり強まったりするが
止む気配は一向にない
君がぼくの目の前に立っている
傘をさしたその姿は いくらかしょぼくれている
ビニイルの傘は重たげな雨をやりすごすには
いささか心もとないし それ以前に
君のポケットのどこかにぼくのびい玉がある
先週ぼくが貸したびい玉を君は未だに返さない
君のポケットのどこかにぼくのびい玉がある
ぼくはきみを抱きしめたいけれど
それ以前に返されないびい玉を思うと
君への憎らしさがつのりにつのって
君を愛したい気持ちがどうにかなってしまいそうだ。
指田悠志
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