雲湖水に みずうみが映っている蒼空にみずうみが映っている富士山の水を湛えた湖水に富士山が映っている湖水に映えた雲はきっと人間なんだろうだからきえるんだろう と思う。指田悠志
閑かな夜閑かな夜であるまっしろな画がまっしろなまま 額のなかに収まっているいつしかぼくも 白髪の漢になってしまった声を上げようとすると 大きな塊が 圧しかかってきてすべてを封印してしまう生きてゆくために ついた嘘は ほんとうになりぼくは何も
怠け病患者の絵日記なよなよと よごれ水がながれてくる住宅街の濠に冬のあさがおが 一、二輪ながら僅かに咲いている赤ん坊を抱いた女の子が通りすぎる年恰好はティーンにしか見えないが 誰の子なんだろう冷たい風は吹きやまず山々の雲は どいつもみなたな
枯れ木ふゆの 枯れ木の 枝えだはみな 空のあちこちを 指しているどの枝も 迷いがないところで この木のように生きられているひとがどのくらいいるかぼくはこれまで生きてきてずっと人を視ていたがどうやらぼくの視ている人々のなかにはこの木のようなひ
夢或る晩のことだったぼくは夢をみた小さな街の 広場には街に似合わぬ巨人のようなゆたかな樹が 立っているもくもくと 常緑の枝葉をひろげ広やかな 愛に似たひかりを浴びながら季節になれば この樹にはどんな花が咲くだろうどんな木の実がみのるだろうい
きたないこどもきたないこどもその子はいつも 笑っていて逃げずに立っているその子はお花のように立っていてお父さんもお母さんもいないその子は悲しく 悪戯もせずにいつも泣けないで笑っているその子はこんないい日に大空を見 泣いているように笑っている
悲しい心私には悲しいこころがあるよ悲しく 重たいこころがあるよ天使になりたいのに なれない心があるよどうすればいいのだろうお花を見るたび おもうよお花はこんなにうつくしいのにどこへも歩いてゆけない蜜蜂を見るたび 思うよ蜜蜂は何処へでも飛んで
心の冬心の冬は松明かかげ やってくるかつては まほら だった国に雪女は 閑かに佇っている夜の蒼空に寒鯉の鰭 ゆらゆらひとは何ゆえ 星の死を超新星と 云うのだろう?心の冬の 松明が過ったあと は星々も 風花もいのちめく夜の蒼空の 寒鯉の冴えつ
正論太陽は まちがっている月は まちがっている星々は みな まちがっている地球は まちがっている大地は まちがっている海は まちがっている山々は みな まちがっている樹々は みな まちがっている生きものは みな まちがっている正しいのは人間
生命太陽は神々の覗き穴蒼空はその神々の素肌空気は蒼空のもたらす蜜その蜜を吸い燃える息を吐きだしてわれらは生きている。指田悠志
自画像ぼくの身体に存る 数個の大ぼくろは母の血をひいていることの証拠で耳から生えた毛は 祖父の遺伝だ何も描かれてはいない スケッチブックにぼくは自分のことを書いた文字による自画像と言っていいものぼくの髪はくせっ毛でこどもの頃から変なウェーブ
樹山々を見る山々にかぶった 雪を見る雪に刻まれた 山々の傷痕を見る雪国の厳しい雪に 刻まれず叫んでも声にならない おのが古傷を見すえる。指田悠志
えがく山のうえの雲を見る雲のうえの空を見るその空の無限を見る無限が立証できるよう数式をえがくぼくは立ちつくす居残り授業どうしてもえがけないのならそれならてのひらが冷たいから泣こう。指田悠志
木枯し曇り空の はざまに見えている 蒼空が好きださむい日誰か好きなひとのためにコートを脱ぐそのコートが 麝香に薫るならぼくは そのひとのちいさな太陽になりたい。指田悠志
雲空を洗いながら羊雲が通りすぎてゆく雲のすがたを 見目に焼きつける何もない こころにだから ぼくは画を描く焼きつけられた心が洩らしたひと言を画に描く言葉にはできないひと言を。指田悠志
失くしもの失くしたものは幾つもある大切なびい玉のほかにぼくには碧の勾玉があった京の小袋にしまったまま失くしてしまった小袋ごとどこかへ行ってしまった人生の失くしものぼくには幾つあるんだろう。指田悠志
こがらしたそがれ時の河へ抛ってしまったこどものようなびい玉ひとりの〈ぼっち遊び〉は淋しく 悲しくてもそれにもまして 楽しかった日々の思い出だったぼくはそのびい玉を棄ててしまった何故抛ってしまったのか言いわけの余裕もなかったたそがれ時の河へ抛
36,500日のはなしおとこはつまらない生きものだけれどにんげんはだまって視ているとおもしろい事故の多い危ない交差点の赤信号を勇気奮って渡ったりコンビニの店員を口汚く罵ったり酔っぱらって駅員にげろ吐いたり観察する対象としてはつまらないなあと
糾える縄の如し数学の時間 ノートに迫真の先生の画を描いていた君物理の時間も 現国の時間もそうだったいっそのこと 教科書が漫画だったらよかったのにと、君はつぶやいた先生にばれないように描いた画帳は全部で七冊にもなった 圧倒的な大作だその後 君
偉大なる敗者(キリアン・エムバペへのオマージュ)僕は夕べも夢に見た絵に描いたような君のゴールだった自身のPKが決まった直後の同点ゴールまさに光速のゴール試合は終り、君は敗者になってしまったが終わってみればチームの得点すべてを叩き出していた偉
石をにぎる石をにぎる石に指をめりこませてゆく石が指にめりこんでゆくにぎればにぎるほどにわが畏怖心は強固なものと化してゆく石への畏怖心が指にめりこんでゆく石への愛着は無論あるが石が指にめりこむその虞れ慄く心のほうが激しいものとなっているのだ体
アルゼンチン&メッシが悲願のW杯優勝! フランスはエンバペ3発もPK戦で涙https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=138&from=diary&id=7230358大いなる勝者へ(リオネル・メッシへのオマージュ)スタジアムの揺れるような歓声のただなかに君は物怖じする
石石をみつめるほんの小さな石を、どのような石かを視るそれがどんな鉱質の石か考えるその石の由来を視る石をみつめるその石が、何歳であるかを考える地球の歴史に鑑みて、石のふるさとを何処なのか思いやる石をみつめる石が有機物か無機物であるかを視る石が
お風呂お風呂にはいろう湯船につかろう息をしよう「あったかーい……」って言ってみようしあわせだなあって言ってみようぼくの深呼吸が自分を倖せにするなんてしあわせなんだろうお風呂にはいろう早くはいろう。指田悠志
壁自分の部屋の壁を写真に撮る壁にかかっているもの、壁に貼ってあるものを撮るそれをアルバムに挟み、棚の奥に保管する十年待つアルバムを開き、それが何であるのかを考え、書き記すそれをアルバムに挟み、棚の奥に保管する十年待つ十年経って何か景色が変わ
水たまり〈湖〉の話水たまり〈湖〉にうかぶ 落葉をかぞえた沈んでいる 落葉をかぞえた哀しみをかぞえた僕は莫迦だから木の葉のようにかぞえられるだから湖にうかんでいる沈んでいる日だまりに日々をまどろみひかりもするし くすみもするはげしく ゆたかに
行う入り日をみつめる入り日を見つめつづける夜を測る夜の永さを瞑目のまま 心で測る空をみつめる日の出前の空の群青を見つめつづける朝を迎え 一杯の珈琲を飲む部屋の玄関を玄関さきを掃ききよめる。指田悠志
レッド・ツェッペリンのペンタングルオールド・ギブソンのアコースティック・ギタ―の調べがマンドリンの伴奏とともに聴こえてくるまるで遠い水音の奥に見たような風景僕が行ってみたかった風景がここにある僕は聴いている羊の群れと牛の群れパン・パイプの響