雲光が にじんで宙空に 沁みいるような恒星の渦星雲か雲なのかどこに しみてゆくのかあのひかりのゆくえは 何処かわからないあの星雲は 神か神でなければ 何か?あの星は 絶対に魔ではない神でなければあれは 何なのだ。指田悠志
ひとをみていると涙がながれる心の涙がながれるひとはよかれと思ってやっていても思いがつうじない傷つかなくてもいいのに傷だらけになって生きている結果を出せなくて気づくといつしかそこは人生の吹きだまりそういうひとをたくさんみてきた貌は泣いていなく
あるお星の冬にお天気がいいので日なたのひとりになれそうなところに腰を下ろしたココアを飲みあったまりながら思ったあの雲とぼくは友だちあの山はぼくの父さんあの海はぼくの母さんだからぼくはここにいてうれしいぼくに友だちはすくないさびしいことが詩を
深けゆく夜も深けてくると心はそのうえに石をのせたように重たくなるがこの重たい心から蝶々が舞いたつ何もしていなくともどんなに凍える夜であっても透きとおるように蝶々は舞いたってゆくただ陶然とぼくはその白い生きものをみつめている目で追っているふと
大世界この歳になってぼくはやっと気づいたぼくは大きな円にまもられているこの円からうつし世をみているのだここは天国なんぞじゃないし地獄なんぞでもないうつし世から5センチ遊離した世界この円から手をのばしちょん、ちょん、ちょん、と標をつけぼくはそ
だから、じぶんを立ててくれるじぶんの内の小さな勇気をおもうじぶんが崩れそうなときそんなときは幾度もあったけれどそのたびにぼくをまもってくれたのはその勇気がもたらす幾片かのことばだった励ましじゃない自分をときはなつ言葉それはぼくを耀かせてくれ
ボールのことボールの縫い目に指をかけて握るそうしてそのボールをくちびるに近づけるかすかに革の匂いそれと 枯草の匂いにぎりつづけているとほのかにぬくもってくるのはいまこの季節が冷たい所為だあたたまろうとするぼくの体温がボールをやさしい生きもの
星ふと口にしたことは痛みをともなっている言葉でした見て星があんなにどの星も降りそうでいて降りもせず激しく輝いているきみにはわかりますかあの激しさのなかで星はほろびも生まれもすることを。指田悠志
つばき風景はもうことごとく冬になりきってしまったけれど真赤なつばきが雲間より顔を見せた日のひかりのせいで咲きみだれ(鳴いて)いるこどものようにしゃがんで(ふくらんで)いると達磨のかたちの影法師が揺れている そんな風にも見えるつくづく 歳をと
ひとみのんびりとねこのねがおになつきながらねむりたいとおもうほんのりとやさしいおはなのようにいいにおいをさせていたいとおもうほのぼのとやさしいことばをいえるひとになりたいとおもう。指田悠志
想像ある日ぼくは太陽の数をかぞえた月の数をかぞえた火星や水星、金星、木星や土星の数もかぞえた明けても暮れてもぼくは数ばかりかぞえつづけたかぞえることが答だと思っていたそれで果てしなく続く数をかぞえつづけた自分に有益なことだと思っていたいくら
日向ぼっこ裸の枝に蒼いタオルが干してある見てあんなにたくさん干してあるこどもが枝に登り 干している大人が背伸びして干している春みたいな日向ぼっこがいまはじまるところだ風が吹いてきた風は未だつめたいがこどもたちはたのしそうだ声はきこえないがあ
永遠に瞼に風景が映えているありありと僕にはあの世界が甦る1978年11月1日僕の時計は永らくその日で止まっていたお父さん、お母さんごめんなさい僕は償うことができません償う術を知らないのです一生償っても償い足りない罪を僕は犯してしまった僕はあな
石をにぎる石をにぎる石に指をめりこませてゆくと石が指にめりこんでくるにぎればにぎるほどに指にめりこむ石への畏怖心は自分というものに宿れる魂にまで及ぶそれを考えることは自己啓発の扉への鍵ではないのかそんなことを思いながら僕はいまもこうして生き
おさな児おさな児があそんでいるおさな児は絵がすきだおさな児は芸術家で大人のぼくたちにはその真価がわからないおさな児はみな神に似ているなぜなら欲望も憎しみも知らずやさしいものに充ちていてほんとうのことしか云わないからだほんとうにおさな児が神さ
雨がぼくを救う雨がぼくを救うそう思ったことがある10年前25年前或いはもっと前ぼくはそう思ったことがある雨の旋律はぼくを救い雨の鼓動はぼくを救う世間のひとびとは声をそろえ雨をきらいだというけれどそんなに嫌いなものばかり増やしてどうやって生きてゆ
小夜時雨雨がふりだしたよおもてへ出雨つぶにぬれてみなよ頸すじをつたう雫は伝いながらもからだの芯まで沁みとおるよ心が腫れてゆくようだよぼくはこの痛みを氷に変えたいよ痛みをもっと間近に感じたいんだよ。指田悠志
おのれが毀れそうな夜におのれが毀れそうな夜に自分の絶望を紙に書き丸めるいろんな絶望を紙に書いては丸め、書いては丸める哭くいや、哭かないそしてそれがあまたの紙の花になっているのを見つめるそれにアルコールをかけて燃やす燃えてゆく紙の花の美しいほ
おのれが毀れそうな夜におのれが毀れそうな夜に笑い声がするぼくのことを嗤う数十億の笑い声が聞こえる誰にもわかってもらえない苦悩をあらいざらい紙に書き、それを燃やした死ぬためにじゃない自分を否定するためにそして自分を肯定し、援けるために。指田悠
何もしなかったそのひとは ぼくのことをたそがれのひと と云ったぼくはそれを肯定も否定もしなかったあるときぼくは河川敷に行き何もしなかった足あと一つ 遺してそのひとは 水に入っていったぼくはそれを肯定も否定もしなかったそれからぼくは河川敷に行
月猫竹藪に月のひかりが射しているかわいそうにこの子は迷子なのだねぽつねんと 途方に暮れては啼き暮れては啼いているうちに久しく鳴っていなかった つよい西風がおもむろにがざわ ぞわら と鳴りだした竹藪は 風にあいされ竹藪は 月に焦がれている途方
ここ一年ぐらい、ぼくはスーパーで買いものをする時、牛乳とかは特になのですが、古いものを買うことにしています。要はね、ぼくの牛乳の消費は回転が早く、きょう買った牛乳は明日には飲み終えてしまう。だから賞味期限が5日先でも10日先でも全然関係ないの
雲山のうえの雲は山を夫にしていつも眠そうに濁っている人生が終わってしまったひとにぱらぱらぱらぱら と落葉が舞う 路上に赤んぼは泣き刹那のおならをした。指田悠志
誕生神樹のまえに坐りいくにちも生きつづけたもうだめだ耐えられないと思うまで目をつむってぼくは細胞から目ざめる耳、耳目。指田悠志
ふくらすずめまずこのココアそしてきょうは何を描こうかと思う文字によるクロッキー頭よりは心をうごかす故意に動揺したりかなしくもないのに悲しくなったり画帖にそれを描いてゆくおもてへ出たすずめすずめ、すずめ、すずめふくらすずめすずめっ子はいつも啼