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2021年01月13日02:31

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みこちゃんの恋

2017年の日記です。


絵描きの親友から電話。
彼女は10月から2ヶ月半日本で過ごし、東京、岡山、山口で個展を開きクリスマス前にこっちに戻ってきて以来まだ会っていない。
クリスマス中は長男の家で孫たちの面倒を見ながら過ごしている。
長男夫婦は仕事柄(映画関係)友人間のパーテイが多く留守番が必要なのだ。
「これから行くね」
と親友。
昼過ぎについた親友はロンドン東から南の我が家まで電車を乗り継ぎやってきて疲れた様子もない。
相変わらず元気ハツラツ。
「読んだ、愛子さんの本?」
「あっ、あれね、読んだ読んだ。すぐ読んだよ、ありがとう。」
親友がお土産にくれた佐藤愛子著の2冊の本のこと。
「すごいよねー、90歳で本を書けるんじゃから。」
「うん、すごいねー、元気そうで嬉しいね。」
二人とも愛子さんのファン。
70代の私たちは愛子さんから見ればまだまだ若造なのだろう。
親友にスナックとお茶を出して色々聞く。
どうやら日本での個展は成功で30点ばかり売れたとのこと。
「あのね、聴いた、みこちゃんのCD?」
「まだなんよ、CDプレイヤーが壊れちょってね、残念ながらまだ聴いちょらんのよ。」
「上手よ、みこちゃんの恋人だった人もね、すごく上手なんよ。」
みこちゃんとは高校時代の同級生。
美人で成績も良く明るい生徒だった。
なので私も親友も気がつかなかったが、中学時代に父親が家を出てしまい母親が働いて生計を立てていたために、随分と辛い思いをしたらしいのだ。
そのみこちゃんから見ると私と絵描きの親友はお金持ちのお嬢さんに見えたらしい。
「そうじゃったん、みこちゃんいつも明るかったから全然わからんかったね。」
「そうなんよ、でも一つ不思議なんがねえ、あの頭のええみこちゃんがなんで仕事を持たんかったんか、これがわからんのよ。」
と絵描きの親友。
「実は私もそう思いよったんよ。不思議なねえ。」
みこちゃんは子供に手がかからなくなった時から好きだった歌のトレーニングを受け始めたらしい。
それもカンツォーネ。
そこで知り合ったテノールの男性と恋に落ちたと。
やがて家を出てその男性と暮らすようになった。
けれど長男が結婚式の時に両親揃って出席してほしい、そのために戻ってきてほしいと懇願した。
みこちゃんは悩んだ。
反省もした。
そしてかわいい息子のために自分の幸せは諦めるべきと判断した。
止める恋人を振り切り夫の元に戻った。
そして結婚式に出席した。
その間に恋人の方は認知症がで始めた。
彼の子供達は父親を入院させ、父親を訪ねないでほしいとみこちゃんに告げ情報を一切教えてくれないのだそうな。
「子供から見たらみこちゃんは家庭を壊した憎い女に見えるじゃろうね?」
ため息が出る。
「違うんよ。」
と親友。
「???」
「相手の奧さんにはね、恋人がおっちゃたんよ、そいで父親が家を出たらさっさと自分も恋人と暮らし始めちゃったんよ。」
「まあ、そうなん。みこちゃん仕事があったら自立して、ねえ。」
「そうなんよ。そいでねその恋人とCDを出すのが夢じゃったんて。でやっとみこちゃんが恋人の分もまとめてCDを出したんよ。で、それを渡してあげとうて必死なんよ。」
二人で叶えたかったゆめのCD。
そのCDができそれを彼に渡したいのに、そしてお詫びもしたいだろう、告げたいことがいっぱいあるだろうに。
恋は人を傷つけ自らも傷つき切ないものだ。
多分50代後半から60代後半にかけての恋だったのだろう。
そのCDももらっている。
早く聴きたいものだ。
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