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2020年12月13日17:12

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【展覧会】ベルナール・ビュフェ回顧展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

ビュフェの絵をまとめて70点以上見るのは初めての経験だ。研ぎ澄まされた黒い輪郭線は内省的かつ攻撃的。ニューヨークの摩天楼を描いた作品などは、ビルの窓ガラスが刺さってきそうな怖さがある。写実的な風景画からモダンで洒落た作品までいろいろあって面白いのだが、いずれも心休まる雰囲気はない。
芥川龍之介の最晩年の小説を読んだ時や、金沢生まれの洋画家・鴨居玲の作品を見た時の印象を思い出す。あまりに内面に入り込みすぎてしまい、作品が作家自身を傷つけていくイメージだ。「狂気」とでも言えばいいのだろうか。自分を傷つけることによってのみ自分の存在を確認するような行為は、しかし、ある意味、純粋さやストイックさの表れなのかもしれない。

趣味がお茶・お花・お琴という友人は、ビュフェが大好きだった。楚々とした大和撫子が、なぜ鋭利な刃物を連想させるビュフェの絵が好きなのか、その理由は分からない。だが、彼女の、芯が強く、ややシニカルな面を知るようになると、ビュフェの作品が持つ冷徹で強力なエネルギーと波長を合わせられるのは、私の周りでは彼女しかいないだろうと思うようになった。
その後、親友だと思っていた彼女からある日突然連絡を絶つ旨を告げられ、10年以上が経つ。
彼女はビュフェのどこが、何が好きだったのだろうか。今回の展覧会の私の感想を、彼女はどう受け止めるだろうか。
今は、連絡を絶つと決めてそれを実行に移した彼女の生き様に敬意を表するとともに、彼女が元気でいてくれることを祈るのみだ。
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