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2020年09月28日15:08

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最初の3ヶ月 15(作成中)

翌日の昼休み。
またお腹が痛くて少し遅れたけど、昨日予告したから行かなきゃいけない。緊張する。ちゃんといるだろうか。
そうっと窓からのぞく。人がいて見えない。前の方の席だった。机に伏せて寝てる子がいる、あれかな。
入口からそっと入っていく。違ったら怖くて近づけない。名前も呼べない。どうしよう。
少し席に寄って顔を傾ける、ああそうだ。良かった。ぐっすり寝てる。ツンツンと頭をつついたが反応しない。髪の毛引っ張ってみる。起きない。しゃがんで鼻つまんでやろうかと考えていたら動いた。「おーい」霞のような声で呼びかける。「うん…?うわ、」「おはようございます」「びっくりした」「…。」別に用事ないんだよな、どうしよう。「じゃあ、また後で」「…起こされただけかい」「すまん」

こんなふうに会いに行くみたいなのは好きじゃない。もっと自然にね、ふっとそのへんにいたらいいのに。
でもクラス違うからさ、仕方ないんだな。面倒くさい。

「あ。また来た。」
5時間目の後に寄ると言われた。
こうなるでしょ。だからイヤなんだよ。来るって言ったじゃん。「帰りに寄るよ」「また来るの?」
「来たらダメなん?」「いや、程度があるだろ」
「うん。…ストーカーですから。」「え、何?」「なんでもない」
しつこいのは知ってる。しょうがないじゃん。
「ええよ別に用事ないし」「本当に?」「うん」
別に断ってもええんよ?あたしが来たいだけなんだから。無理じゃない?
「いいの?」「うん」「本当に来るよ?」「やめる?」「やだ」へんな言い方したな。「じゃあ後で」

「ええっと、これは何なん?」放課後に行くと言われた。「え、」来ていいって言ったよね?
「いや、別にいい、」「…。」「?」私が無言になると、不思議そうな顔をした。「だいじょうぶ?」ブンブンとうなずいた。だいじょうぶ。きっと大丈夫。
「帰ろ」「なに?声小さい」「一緒に帰ろ」「あ、はい」

「メイちゃん、どうしたの?全然しゃべらんけど」「…あたしはこれが普通なの」「いやいやいや、いつもめっちゃ喋ってるじゃん」「そうだっけ?」となりで自転車押して歩いてる子の頭に手を伸ばす。グシャグシャグシャ。「それ何なん」あれ?「ちょっと背伸びた?」「成長期だから」「早くない?あたしより越さないでよ」「なんで」「届かなくなる。」「なんだそれ」

「嫌がらせ。もしくは仕返し」「ん?なに?」「さっきの質問の答え。」「えーと、どの質問?何聞いたっけ」「休み時間ごとに邪魔しに行くやーつ」「仕返し?」「そう」「うーん…。いやいいけど、あんた暇なん?他の友達とかどうしてるの?」「いないもん」「いやいや、お昼とか誰かといるでしょ」「いない」「へ?もしかして、まだひとりなの」「うん」「友達いないの?なんで?」「悪い?」「誰かにイジメられる?」「それはない」「作らないことにしてるの?」「してない。えーと、リキコさんからどうせ聞いてるんでしょ」「いやー特に、今のところなんにも」「ウソだー」「なんかあったの」「無いよ、、もういい?」ウザい。
「あのさあ、あたし一人で大丈夫な人なの、友達なんていなくていいの、あんたらみたいにずっと群れてグダグダしてる子とは違うの」
「別に好きで群れているとは限らんよ」と言った。「その場の空気とか、いろいろあるよ」
「そんなん知らんし。とにかくあたしはそういう風にはならないの。」
「よくわからんな。…まあいいや。」

「あのさあ今更あれなんだけど、あんたほんとの名前何だったっけ?」「ほんとに今更だなー。」「だってヨッチンはヨッチンだもん。小学校はひらがなだったし、」「よしたか」「どういう字書くの?」「りゆうのゆうにきぞくのき」「んー?書いて。」
「へえええ、初めて見た。これ読み間違えられない?」「うん。ゆきちゃんとか。女の子と思われたり。そう読めるんかな」「だと思う。いいじゃんかわいくて」「よくない」

「それでさあ、あたし本当はメイカじゃないの知ってるよね」「えええ?違うの?」「…なんだよ。小1の時一緒だったよね」「自分だって」「あ、そうか」「で、本当はなんなん」「えっとね、そのまんま梅の花で、ウメカ」「えええそうだっけ?」「なんで知らんの。名簿にもちゃんと書いてたし」「そう言ってた?」「言ってた。ていうかクラスの子に名前で呼ばれたことないんだけどね。」「あー、苗字のほうか」「うん、いや…」「大人しかったよね」「大人しいっていうか話したことない」「誰と」「誰とも」「全然?」「うん」「そんなだったっけ?」「だったよ。意外と気が付かれてないんだな。」

「明日のお昼も行くよ。…あ、寝てたら起こさないから」「なんで来るの」「だから嫌がらせ」「寝てて気が付かなんだら意味ない」「起きたら気がつくかもよ」「は」「そういうことにする。いま思いついた」「なに」「だから気をつけて」

名前の話、やっと聞けた。緊張した〜。
と言って呼ぶことはないだろうな。ヨッチンはヨッチンだよ、今更なあ。だってなあ。

昼休み。3組の教室をのぞく。あの子は今日は寝ていない。たぶん待っている。友達と話してる。そこへ向かって歩いていくと、友達が先に気が付いてこちらを見る。私は思わず目を伏せて、背後からツンツンと肩を叩く。
あの子が振り向いて「あ、もう来た」と言う。立ち上がって「行こう」と言う。黙ったまま後をついていく。

「教室では大人しいんな」とその子は言った。「ここから出ないと話せないみたいだから」
下に降りて渡り廊下に出て「どうする?」と聞いた。どうするとはなんだ?「売店でも行く?パン食べてみたいんでしょ」「うーん、でもお金持ってない」「また返してくれたらいいよ!」「でもすぐお腹壊しちゃうから」「じゃあ、半分こにしよう。それなら食べられるよね」「ああ、うん、」「なんにする?」「クリームスネーキ食べたい」
売店でヨッチンはパン2個買って戻ってきた。「今日は友達の分はないの?」「あー、ないない。これはおやつで食べる用。どうしよう…こっち来て」と私の手を引っ張っていく。どんどん歩いていく。
校庭の端っこの大きな木の植えてある下に石で囲いがしてあって、そこに腰を下ろした。隣に座って「はいどうぞ」とパンを渡された。袋を開けて半分に割って返した。「お金はもらわなくていいわ、」と言った。
いや、それより、ここまで、かなり恥ずい状況になっているんだけど、気付いてるかー??
あああ。恥ずかし過ぎてパン食べられない。

「今日は寝なくて良かったの?」と聞くと「寝とったら何されるかわからんし。頑張って起きてた」「なんもせんよ。特にサインペンで顔に落書きするみたいなことは絶対にせん」「…怖いなあ」「あははは」
「明日はお金持ってくるよ」「返さなくていいって」「また買いたくなるかもしれんし。あたしお小遣い無いんだけど、小銭なら多少あるの。おばあちゃん家に行ったら少しは貰えるからな」「そうなんだ」「あたし親に信用ないからな。お金持たせたら危ないんだってさ」「でもそういう家もあるよね。うちは小1から小遣いもらってる」「いいなあ」「うち共働きだからかな、いくらか自分で買えるように持たされてるから。夕食自分で買ってくることもあるし」「へええ」そっか、それで幼稚園一緒じゃなかったんだ。この子は保育園だったから。それがその頃はうらやましかったな。
「パン食べんの?」「あっ、食べます食べます」

いい天気だなあ。
この木の下には他にも座っているグループがあって、だからそんなには目立ってはいないと思うんだけど、、まあ、あんまり隠れているのも、それはそれで変だし、って気にしすぎなんだろうなあ。
「お茶持ってきたほうが良かったな。めっちゃ水分とられる」…っておい、寝てるよ。そっか悪かったな。いつも眠い時間なんだろうな。しばらく肩を貸してあげるよ。起こさずに時間までほっとくことにした。でもよく寝られるなあ、うらやましいなあ。

これはチャンス??と一瞬思ったけれど何もしないことにした。いや何もしようとはしてませんけど。
…やっぱりまつ毛長いなあ。女の子にしたら可愛いのになあ…。こうやって横の髪伸ばしたら、結構いけるんじゃないかな。耳のところを手でかくしてみて、うん、やっぱりそうだなあ、、などと思っていた。いや、何もしないけどね。
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