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2020年09月20日23:33

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最初の3ヶ月 12(作成中)

「春名さん、次の授業理科室に移動だよ」
リキコさんに声を掛けられて慌てて準備する。お世話係ほどでもないが、私が遅れているといつも声をかけられる。余計なことはしない、でもなんだかいつも怒られているみたいで緊張する。
そうしている間にも彼女はさっさと教室を出てしまう。置いていかれないように、ついていかなくちゃ。焦って出口につまづいて、教科書やノートをぶちまけてしまう。ああもういやだ。
意外にもリキコさんは先に行かずに待っていてくれていた。「ほんっとに鈍臭いよねえ」と言いながら、手伝ってくれることはしない。アワアワと集めて、抱えて立ち上がる。「行くよ」
私の前を歩きながら、リキコさんが「そういえば、マキハラ最近学校に来てる?」と聞いた。あたしにきいてんだよな?そんなん知らないよ。だから、「知らない」と答えた。それをどう思われたのか知らないが「ふーん、そう」と言った。「あんたらいつも一緒にいるから分かると思ったんだけど、そうか、まあいいや」いつもはいないです。時々です。友達なんだからあたしなんかに聞かんと直接自分で聞けばいいのに、と思った。そしたら、「この子に聞いてもしょうがないか、」と言う。そうだよ。

友達ってどうやったらなれるんだろう。どうなったら「友達」と呼べるんだろう。「遊ぼう」とでも言えばいいの?そんで一回遊べばいいの?なにして遊べばいい?

理科の授業の時間って楽。ただ座って聞いていればいい。理科の先生が担任なのだが、淡々としていて割と好きだ。あまりやる気にあふれていないのがいい。こうやってぼんやり考え事をしていても何も言われない。
前のとこの小学校の担任だったら、あたしみたいなのはすぐ問題児扱いされて、家に電話を掛けてこられる。その度母親に泣かれて大変だったもの。

実験の薬品にもヤバいのがあるんだろうな。それだけでは大丈夫でも、もし失敗して有毒ガスが出たら。時々ニュースになってる。私ひとり倒れるのもいいけど、みんな少しずつボーッとするのがいいな。そうなったら楽しいだろうな。みんなバカになって、何でもありになって、そうしたら私は自由だ。

家に帰ると、いつものようにお母さんの愚痴を聞かされ、それを振り切って宿題をする。一旦帰宅したらもう出掛けない。お母さんが買い物に行くと、留守番中にお絵描きする。歌を歌う。ひとりで部屋で。
お母さんが帰ってくるまでに洗濯物を入れて、食卓にお皿を並べてみて、残り物を温めてみる。いつものように、だらだら。
お母さんが帰ってくると食事の準備が始まる。私は手を出せない。待機している。気が利かないと言われても、余計なことはしない。
食事の後はゆっくりして、テレビを見ておふろに入って新聞を読んで寝る。

そして朝が来る。朝が来てしまう。


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