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2020年09月16日15:10

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最初の3ヶ月 10(作成中)

「昨日はうちのお母さんがなあ、あたしの部屋の前でずーーっと喋っとるから、全然宿題できんかったわ」
次の日の帰り、私がヨッチンをつかまえて話していた。
「何を話していたの?」「うーん、近所の人の話とか?愚痴みたいなやつ。聞かないようにしてるんだけどね、どうしても聞こえちゃうのよ。」「それその時しなきゃダメなん?」「いやー知らないよー。でもお母さんはいつもそうだから。あ、これが大人の世界じゃゆうとった。あたし世間知らずだから教えてやらんと、だってさ」
「ふーん、ところでメイちゃんてお母さん似だよね」「どういう意味?」「あー、いや、見た目が」「似てないよー」「似てるよ。昨日挨拶した時に思った」「えーいやだー」「なんで」「あんな人になりたくない」「えーそれひどくない?」「ひどくない」あんたあのひとになんて言われてるか知らないからだよ。「優しそうなお母さんだよね」「ははは、そう?優しい?」
外面はいいもんな。あのひと地雷だよ。誤解されたら終わり、反論しても話聞かないよ、逆らったゆうてブチ切れられるだけ。なんて、この子に言ってもしょうがないから言わない。
「ナカヤマさんだけはお母さんにウケが良かったんだよね」「ん?誰?」「前の学校の子だよ。あたしのお世話係みたいになってた子がいるのよ」「お世話…」「頭良くてね、親切でしっかりしていたから」
ヨッチン小さいのは仕方ないけど、もうちょいシャキッとしたらいいのかなあ。なんだろう。フワフワ…ダラダラ…?「髪型かなあ」「なに?」「あんた髪もっと短くしたら?」「は?」「いっそ坊主とかでもいいかも」「なんで」「うーん」坊主だったら地味になっちゃうのかな、もっとキリッとしてないとな。「あ、まつ毛長いね。そんなにパッチリしてる訳でもないのに。」「そうかな?」「うん。いいなあ。ちょうだい。」「は?一本抜いたろか」「そうじゃなくて、いや、なんでもない。あたしまつ毛短くてさあ。いいなあって」
ホワッとしてるから、意外と女装メイクとか似合うかも。いつかやってやる。

「なあなあなあ、あんた、なんか得意なことってある?」と聞いてみた。
「なあ、メイちゃん。さっきからなんの話をしてるの」「へ?」「話が飛び過ぎ。なんの話かわからん。」「あ、そう?…ごめん」「なんかあった?さっきからあんたひとりでずっと喋ってるよ」「えっ?!うそ」「ほんと」「あ…、ひとりでずっと喋ってるなんて、お母さんと一緒じゃん…」

しばらく無言で歩いていたが、耐えられなくなったのか「ごめん言い方悪かった。話していいんよ?」と言われた。「ええと、得意なことな?うーんないなあ」
「ああ、へー…。」「うーん…。おーい、メイちゃーん」目の前で手を振られた。「うん。」「メイちゃん、こっちみてー」「…ちゃん付けやめろ」「わかった。これあげる」オリガミの…これは、カメ?「なぜにカメ?」「かわいいから。ウミガメ」「リクガメじゃなくて」「トータスじゃなくてタートル。えーとどっちだっけ?逆かな」「多分あってる」

「得意なことなんかいいよ。あたしも特に無いもん。苦手なことならすぐ出てくるけど。」「あんたは勉強はできるんじゃない?」「別にできないよ。知らんでしょ。」「うん、まあそうだけど。」「適当だな。…でもあんただってほら、得意科目くらいあるよね?」「今どっちでもいいって言わんかったっけ?…って、算数は得意かな…そうでもないか」「数学な」「うん。」「あーでも、小さい時ピアノやってたよね」「弾けるゆうても別に上手くはなってないし」「そうなの?」「うん、作文も苦手だし絵も描けんし、何もないな」「うーーん、でも、…あっ!これだ!」「何?」「これ。オリガミだよ。あんたえらい難しげなん作ってたじゃない。」「得意ていうのかな?でもこんなん何も使えないよ」「お花とか折れる?」「花?」「そう、アヤメとか」「アヤメかあ。バラとかは?福山ローズ折れるよ」「ふくやま?どんなやつ?」「今ここで折ったろか?」「そんなすぐできるの」「自転車止めよう」

「あんた本当に器用だよねえ」多分机に置いてしっかり折るべきものなんだろうけど、空中に浮かせたままどんどん折り込んでいく。「適当だけど、なんとなく形にはなると思うよ、」魔法のように裏を止めて形を整えて「できた。ぐちゃぐちゃだけど、ほい」
「うわーすごーい。こんな立体的なやつ。本物みたーい」「本物は言い過ぎだから」
「これいっぱい作れる?」「まあできるけど。ごめん、まだ話見えないんだけど、これ作ってどうするの?」「どうしようかな」「おい」

「小さい時にな、色紙や広告の紙を細かく切って、橋の上からよく散らしてたんよ。紙吹雪。下が川でな。今やったら怒られるんだろうね」
「えっと、折り紙流されちゃうんかな〜?それはやめて。」「やらないよ。ただ思い出しただけ。綺麗だったなあって」「ああそう。よかった」「で、どうしようかな。」

それから次の日バラは3つに増え、翌日には5つになり、「飽きた」と言ってアヤメに変わり、チューリップになり、ツル星人になり、キングギドラになり、手裏剣になった。
「何にするか決まったらまた作ってあげるから、教えて」出来上がったのを全部もらって帰ってきた。とりあえず机の引き出しの奥にしまい込んだ。

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