mixiユーザー(id:66120937)

2020年09月03日13:05

139 view

最初の3ヶ月 8(作成中)

体育祭が終わって、週明けの月曜日。
その放課後ヨッチンが先に帰っているのを確認すると、自転車で後を追った。飛ばせばまだ間に合うはず。なんであたしがあの子を追いかけないといけないんよ。

大通りから田んぼ道に入るところで見つけた。ゆるゆると走っているのに追いついた。捕まえた。背中にタッチするとあの子が振り向いた。「あ、メイちゃん」ちゃん付けやめろって。と思ったが息が上がって喋れない。
自転車を止めて「これ、」やっと声が出た。リキコさんから預かってきた封筒を差し出した。「何?あーこれかー」「なんなの?」「楽譜」「へ、へえ、」なんか知らんけど何かあるのね。「なんであたしに預けてきたんだろうね。自分で渡せばいいのに」「さあ、あの子も忙しいんじゃろ。ありがとう」「どうも」

「あんた体育祭休んだよね」「うん、だって晴れたら休むって言ったじゃん?」「本当に休むとは思わなかったよ。あたしだって頑張って来たのに」「えー、もしかして寂しかった?」「何言ってるの。そういうことじゃない。…あと、うちの教室に来た時にあたしに話し掛けないで。前言ったよね?」「うん、何で?」「なんでって、面倒だからよ、とにかくやめて」「いるのに無視するの?」「そう、」「うーん」「そうしてよ」

「えっ、えっ?そういうこと?俺もしかして嫌われてる?」なんだ?どうした??「ごめんな、なんかやったっけ?」「えっと、そういうことじゃなくて、、ほら、他の子にいろいろ言われたりして、そういうことだから、」「何言われるの?」「いや、特に言われてない、けど、だって、あんた男の子でしょ。面倒なのよ」それと、あたしの状態の問題があるし。クラスでここまで喋れないのは多分知らない。
「あっ、」と言って黙りこんでしまった。ああもう、言うから変な感じになるでしょう。

坂に差し掛かるところで、向こうの道から見慣れた車が走ってくるのが見えた。「あ、やば」うちのお母さんの水色の軽。「ヨッチン、ちょっと先に歩いて」と言って立ち止まる。「えっなにー?」と振り向いて聞くので「いいから前向いて!後で行くから!」と返した。

車がこちらの道に入ってきて私の横を過ぎていく。私はよそ見をしていたのだけど、気付かれただろうか。
曲がって見えなくなるのを見届けると、走ってヨッチンの横まで追いついた。「もういいん?」「うん」「なんだったん」「さっきの車、うちのお母さん」「あっ、そうなん?えっ、そしたらあいさつしたら良かったのに」「そんなんやったらしばかれる」「へっ?」「うちのお母さんどんなんか知らんでしょう」「うーん、多分会ったことあるよね?美人のお母さん」「そうじゃなくて、うちのお母さんの怖さよ」「…普通だったと思うけど?」「それはあんたがいる前ではそうだけど、」「違うの?」「そう」「…ふーん」
どう思われたか分からないけど、まあいいや。
「えー、でも俺だと分かったら大丈夫なんじゃないの」「そうかな。やめといたほうがいいよ」むしろそのほうがヤバいのよ。
「ふーん、わかった」と言って、その話はそこで終わりになった。

「ただいま」返事がない。と思ったらお母さんが洗濯物を抱えて2階からおりてきた。「おかえり。随分時間かかったんじゃな。あんた、坂を上がるところを見たんじゃけ」見つかっていたのか。
「暑いから途中で休んどった」
「ふーん、そうなん、、」なんかイヤな感じなのでサッサと部屋に行こう。上がっていくとお母さんもついて上がってきた。「なに。」「まだ洗濯物があるんじゃ。何よん」外のベランダには私の部屋からしか出られない。だから洗濯の出し入れの度に親に部屋に入られることになる。邪魔くさい。
「あんた、誰かと一緒におったじゃろ。なに?男の子?」「一緒じゃないよ。たまたま同じ時間に通っただけだよ」「ああそう、なーんもしゃべらんのにそういうことは積極的なんじゃなあ。いやらしい」
一瞬フリーズした。
「違うし」「ふうん、まあええわ」とりあえず、その子がヨッチンだとは気付いていないみたい。終わったらさっさとおりてよ。居座って話し込んだりしないでよ。
母もその話にはたいして執着してなくて、「ああそうそう、まだやることがいっぱいあるんじゃった。いつも忙しゅうて大変じゃ、」とブツブツ言いながらおりていった。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する