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2020年06月25日15:02

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MAY 4 (作成中)

「えっなに?どこに行くの」
3月末に転校することが決まり、自転車置き場にいるメイに伝えると聞き返された。「親が広島のほうに転勤になったんよ」「引っ越すの?」「うん」「あらーへえそうなんだ。えっ、いつ引っ越すの」「3月の20日に親が先に行って、俺らは学校があるから終業式が終わったらすぐかな」「ふーん、またいなくなるんだね。へえー」
こちらを見もしないで荷台にカバンをくくりつけているのを見ながら、「じゃあ、」と出発した。
しばらく行くと、「待って、なんで逃げるのよ」という声が後ろから聞こえてきた。
「逃げてねーし」「一緒に行くよ」「…ん?」「一緒に帰ろうって言ってるのよ」「あーどうぞ」「何でそんな言い方するの」「何が?別に。…えーと、なに?」「何って」「なんかあるの」「いやー、、あ、そうだ、あんたギター弾くんだよね」「ちょっとだけな」「あたしまだ聞いたことないよな?」「まあ、そんな聞かせる程でもないしな、」「聞かせてよ」「ええと、いや、えっ今日?これから?」「今じゃなくていいよ、いつか」「いつか?」「うん、いつか」

「もうすぐ誕生日だよね」「言ったっけ?そうだけど」「小学生の時に」「よく覚えてるな」「それだけだけどな。なんもないよ」「なんだそれ」「なんか期待した?」「いやいや、」

「あたし見送りとか行かないからね」
「連絡先とか聞いても手紙書いたりしないからね」
「メールもしないよ」「年賀状も多分忘れるよ」

「あたし今でも友達でいいんだよね?あんたがそう思ってるんだよね。じゃあ、連絡しなくても大丈夫だよね?」

「あ、」同級生の一団が後ろから近付いてきた。
「じゃあ行くわ」立って漕ぎ出していった。あっという間に離れて行った。

次の日曜日。庭で作業をしているとリキコが生垣の向こうから「おう」と声を掛けてきた。「あず姉に会いに来たんよ。帰ってきてるんでしょ」「ああ、呼ぼうか」「ううん、いい」と言うが早いか「おじゃましまーす」と上がりこんできた。「あず姉さま〜」「きゃーリキコちゃん〜大きくなって〜」という声が後ろから聞こえてきた。
5つ年上の姉ちゃんは、高校進学を機に家を出て一人暮らしをしていて、今回の引っ越しの手伝いに帰ってきているのだ。うちみたいに引っ越しばかりしてると、どうせ高校の途中で転校なんてことになる。だから、最初から家を離れた。…本当は家を早く出たかったからなんだろうがな。
「意外とここも長かったなあ」小2から7年。こんなに同じ所に住んだのは初めてだった。今までは2年か3年で転勤になっていたから。そして、珍しい一戸建ての二階付きの社宅。これも贅沢だったよなあ。

しはらくたって「私達ちょっとでかけてくる」と姉ちゃんとリキコ。「あず姉とデートしてくる〜」「そうそう女同士のつもる話もあるもんね〜」「ね〜」「別に、その辺ですればいいじゃないか」「いやよ、男の子には聞かせられないの、あんたがいるとジャマなの」
はいはいそうですか。
「じゃあね、でも2時間くらいで帰ってくるから、…片付けちゃんとやっといてね」
へえへえ。

「えっとねえ、これがあずあずに」「ありがとう〜」「で、これがあたしので、これがヨッチンので、これがサッチンので、」「ヨッチンとか呼ばれたの初めてなんだが、、ていうかなんで2つある??」「メイちゃんにあげて。はい、これあたしからの餞別ね」「いやいやいや、いろいろおかしい」「メイちゃんのは色違いね」「いやいや、あいつは関係ないだろ、、ついでに自分も違うだろ」「あ、それはついでだから。あっ、あたしからあの子に渡してもいいよ、ヨッチンからって、おそろだって」「それはやめてくれ」「えーだってつきあってるんでしょ」「はあ?!違う違う間違ってる。なんでそうなる」「みんなそう言ってるよ〜あんなにベタベタとくっついて」「いや、それ言ったらあんただって」「全然違うでしょ。やめてよね」「それに最近はあまり口きいてもらってないし…じゃなくて、そういうんじゃないんだよ」「ふーん、でもあの子あんたにだけは喋るんでしょ」「あー、あれは逆に自分以外は喋れないんだよ」「あれ何で?そうそう、それ不思議だったんだけど、なんであんたにだけ喋れるの」「さあ、、」
「あのね、リキちゃん」姉が口を挟む「わたしもうっすらとしか覚えてないんだけど、あの子は昔から物凄く大人しい子だったの。うちのサッチンみたいに」「そういやサッチンいるんだよね」「そうね、…それはそうと、あんたその子どうするの?」「は?」「一人にしちゃって大丈夫なの」「うーん、最近は友達もいるみたいだし、大丈夫なんじゃないかな」「ああ、友達できたんだ。良かったね」「うん」「…そうやっていつも気にしてるじゃん。好きなんでしょ。認めて楽になりなよ」
「だからなんでそうなる。そういうんじゃないんだって、やめてくれええ」

周りの人というのはいらん事を言うもの。なんかあればすぐくっつけたがる。本人とは関係なく、周りが言うもの。今までも何度迷惑したことか。

「こんなん渡すか」その包みを2つとも、引き出しの奥にしまいこんだ。
なんで他の子と話さないんだろう。どうして自分とだけ、あんなにベラベラと話せるんだろう。もちろん、そんなことは聞けない。
他の人と話すのは緊張すると言っていた。つまり自分はよほど緊張感がないんだろうな。…どうでもいいんだよきっと。そうだそうだ。と考えると、それはそれで情けない気分になってくる。
なんにも思わなくていいよ。
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