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2020年06月10日14:29

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MAY 2(作製中)

「そういえば、ヨッチン、あれから何していたの?」
「あれから?って?」「引っ越して行ってから」「あーえらい昔の話を言ってきたなー」「どこにいたの?友達はすぐにできたの?何をして生きていたの?スポーツとかしていたの?何が得意だったの?」

「あのね、あのね、聞いていい?あのね、あんたのこと友達と呼んでもいい?」「え?もとから友達でしょ。ていうか逆に今まで何と思っていたの?」「そうなの?嬉しい」「ん??なんだ?…えーと、ただの友達のことだよね?」「ただの!うわー、ただの友達、なんて贅沢だわ、憧れてるやつだわ」「だから、ただの友達だからな?知り合い言うてるみたいなもんだからな?わかるよな?」「分かってるよ」

次の日曜日。メイが「行ってみる」というので、「大丈夫?無理すんなや」と言うと、「あたしが行きたいって言ってるでしょ。連れてってよ」と言う。
学校の校庭側の集合場所に時間ギリギリに現れた。「あんたが誘ったんだからね」と言って後ろをついて歩いてきた。
カラオケ屋ではメイは誰とも会話しないが、ずっとニコニコしていたのでひとまずよし。女子グループのかたまりに押し付けて自分は自分で楽しむことに決めた。マイクがメイの前に回ってきたとき、困ったふうにこちらを見たが、気づかない振りをした。今日は女子同士で親交を深めなさい。
リキコはああ言いつつも面倒見は良い方で、いろいろ話し掛けて気に掛けてくれる。うん、任しとけば大丈夫。メイもニコニコと頷いたりしているのが見えた。

1時間ほどして立ち上がって出口の方に向っていく。歩きしなにこちらを見た。「ちょっとゴメン」と周りに声を掛けて続いて外に出た。
「トイレに行きたかったのよ、」と言って廊下を歩いて行った。戻ったときまだ入口に立っている自分を見て「あ、まだいたの?」と言った。
「まだ大丈夫?それともそろそろギブ?」「大丈夫だよ、」そう言ってなかなか入らない。「ええっと、今何時かわかる?」時刻を告げると「あっ、そんな時間?じゃあそろそろ帰らないと」「じゃ挨拶しなきゃ」
部屋に戻って「こいつ、そろそろ帰るらしいから」と告げると、そうなの?じゃあ気をつけてね、じゃあね、と返してくれた。

「別に一人で帰れるよ?あんたは残っててよ」
「いや、自分だけ戻っても落ち着いて楽しめん」「あんたは残って、お願いだから、ついてこないで」

次の日学校で「昨日は早く帰ったね、楽しくなかったのかな、無理に誘ってゴメンって春名さんに伝えといて」と申し訳なさげにリキコが言ってきた。いやいや、それは言うたらアカンやつでしょ。「うーん、本人は楽しかったみたいよ、また遊ぼうね言うとったって伝えとくわ」

それをどこかで聞いていたのだろう、帰り道でいきなりメイが追い付いてきて頭をグシャグシャにしてきた。髪の毛を掴んで引っ張った。「痛い痛い、抜ける、ハゲる、」「ハゲろ、このてめえ」余計なことをするな、あたしの世話なんかやめて、と言う。
あんた彼女いないでしょ、だからダメなんだよ、と言ってきた。いや全然そんなん関係ないし、と心から思った。
「彼女くらい作ればいいのに」「作ろうとしてそんな簡単に作れるもんじゃない」「あたしには友達作れっていったくせに」「友達作るんとは違うよ」「一緒だよ」
「友達はいつなったのか分かんないけど、彼女は告白して了解もらえば成立なんでしょ?だったら彼女の方が簡単じゃない?」「いやいや、友達なんかは言ったもん勝ちなんだよ、了解もらわなくても自分で言っちゃえばいいの」「え、そういうもんなの?じゃあ相手が友達と思ってなくてもいいの?」「まあそういうこともあるよな」「ええええーそれは変!わからない!…あ、あたしはあんたは友達だと思ってるよ」「あ、どうも」「あああ、分かんない分かんない」
「でもさ、ほら、カナコさんとか、友達できてるでしょ」「カナコさん?うーん、友達って言っていいのかな」「そう思わないの?」「うーん、なんかね、向こうがどう思ってるか分からないのに勝手に名乗るのは、やっぱり違うと思うのよね…」「でもご飯食べてるんでしょ」「そんなに気が合う訳じゃないしさ、話もよく分かんない。」「話はしないの?」「あ!あたし相槌とかしてるよ!へえー、とか、ああ、とか言ってる、聞こえてるか分かんないけど」「うん、」「でもね、あたしは仲間じゃないんだ、仲良しグループにひとり部外者が混ざってるだけ、横から会話を覗き見してるだけ」
「会話なんていうのは楽しみのためにやってるんだから、別に頑張ってするもんじゃないよね?興味がある訳でもないし。だからあたしはこれでいいんだ」

最近はメイは昼休みには図書室にいるらしい。ご飯をカナコさん達と食べ終わったら、本を読みに直行しているみたい。一回に借りられる上限の本3冊を抱えて階段を降りてくるのに時々出くわす。教室では読まない。手提げに入れて家に持ち帰る。
「なんか教室では読みづらいのよね、図書室の中ならいいけど。あとは家に帰って落ち着いて読みたいんだ」と言っていた。

「あたし本当は一人で平気なのよ。友達なんて沢山いなくていいの。でもいないと教室に居られないじゃない?困ってる」
「家で何してるか?それ知りたい?うーん、別につまんないよ、本読んだりして、あと絵を描いたりしてる。マンガみたいなやつ。結構得意なのよ。学校ではできないけどね」
図書室が開いていないとき、たまに教室にのぞきに行くと、席に座って教科書や資料集を眺めている。他にやることがない。呼び出すとすぐにやってくるが、だいたい面倒くさそうな顔をしている。
帰り道で聞くと「あたしそんな顔してる??」と言った。「あんたから来るのって珍しいよね。最近あたしが行かないから寂しくなっちゃった?」

「あたし、友達より場所が欲しいな。よくわかんないけど、落ち着いて過ごせる場所があったらいいなあ」
「場所って秘密基地的な?」「うーんなんだろうな、場所っていうか、環境?空気?わかんないや。自由に動ける場所。こんな水の中みたいに重たくなくて、空気がいっぱい吸える場所」「わからん」「うん。どうやったらいいのかな」「さあなあ」「うん」

メイはクラスの女子とはほとんど話さない。外で会っても話さない。「うん」と「いいえ」と「へえ」しか話さない。授業中に当てられたら答えはする。音読もする。らしい。「だって言うこと決まってるから、それを言うだけでしょ」と言う。「アドリブはできないの」
「なんで今は喋ってるの?」「知らない。帰り道だからじゃない」確かに自分とは、学校内で会うより帰り道の方がよく喋る。リキコや他の仲間に会っても喋らないような気がするが、、まあ、教室と外とは違うのはなんとなくわかる気がする。

次の学年では、メイとクラスが同じになった。毎日教室で顔を合わすようになった。元々教室内では何も話せない。なんとなく外でも話し掛け辛くなって、以前みたいに会話をすることもほとんど無くなった。



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