上野オークラで小関裕次郎監督イベント。新作「痴漢電車 夢見る桃色なすび」を観る。
主人公は職場では上司に怒鳴られ、家に帰ると着替えもせず眠り、電車の中でも疲れた表情。「満員電車は人間の乗る物ではない」「会社と合わない」としながらも、辞めることができない。現代の生きづらい青年だ。
青年は、電車内で不思議な力に突き動かされたように、女性に痴漢する。痴漢場面が夢のように撮られているのが珍しい。青年は女性に捕まるが、連れて行かれた先で自分が邪悪な闇の軍団と戦う光の戦士と告げられる。
青年は当然信じないが、近くで放火が起き、女性に言われるまま祈ると雨が降りだし火が消える。青年は水の力を持つ戦士なのだ。
しかしこの日の天気予報は雨。青年は信じたわけではないが、仲間に入る。友達のいない孤独と、痴漢したヒロインたる女性に惹かれたか。
光の戦士は五行説に従い５人いて、龍を東京に封印している。東京を走る鉄道網が結界になり、敵の攻撃で傷つくと、特定の相手とのセックスで回復する。しかし戦士間の恋愛はご法度。この設定が面白い。
また青年とヒロインは、河原にぽつんと置かれた長椅子で何度も顔を合わせる。その度不器用に接近するが、これが独特の風景共々楽しい。話は２人の恋愛に収斂していく。
観客の代表たるダメな青年が、戦士に覚醒して悪と戦う痛快ヒーロー物になると予想したが、終盤の展開に驚かされる。現れた闇の戦士の言い分は、意外や真っ当である。青年のような境遇では、むしろこちらに賛成するのではないか。
エンドマークが出ると、場内がどよめく。これは意外な結末。脚本の深澤浩子さんによると、主演の佐倉絆さんの３月引退に向けて、あえて未完の話にしたと言う。小関監督は、続篇はないと言う。
光の戦士たちは、使命とアルバイトを何とか両立していて、それぞれのキャラクターが面白いのだが、青年とヒロイン以外深く描かれない。最後に出てくる里見瑤子さんら闇の戦士たちも興味深いのに、１シーンのみ。これも物足りない。
善悪をはっきり分けず、国を守るよりヒロインを守る青年の姿勢などいいのだが、小関監督はちょっと凝り過ぎたか、不満の残る終わり方だ。
上映後イベント。きみと歩実はお休みで、ビデオメッセージ上映。さらにＯＰ映画新人監督発掘プロジェクトの優秀賞と審査員賞の監督が登場。優秀賞の佐藤周監督は、「シオリノインム」の監督だ。あの映画はホラーだが、ピンク映画並みにカラミがあった。これは期待。
そして和田光沙さん、卯水咲流さん、佐倉絆さん、可児正光さん、竹本泰志さん、ケイチャン、森羅万象さん、深澤浩子さん、小関裕次郎監督が登場。例年通りお客さんにお神酒が振る舞われ、皆で乾杯してスタート。
ラストシーンの佐倉さんのアップは、観客に向けた別れの挨拶と思ったが、まだ撮影している作品があると聞きホッとする。卯水さんは寡黙な担々舎の役柄のイメージだが、意外や饒舌で楽しい。お神酒をおかわりしている森羅万象さんの、ぼそぼそとしたエロ話と、それに突っ込むケイチャンに笑った。後になってお客さんとして来ていた安藤ヒロキオさん、折笠慎也さん、長谷川千紗さんも登壇。正月らしい賑やかさ。
客席は今週も先週同様の盛況で、サイン会も長蛇の列。劇場側の対応の良さとマイミクGEORGEさんが今日も頑張り、予想以上に早めに終わる。常連さんたちにも会えたし、今日も楽しかった。
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