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2019年10月25日23:39

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朝のうた

小さい頃、対等な友達はひとりもいないと思っていた。確かに学校ではそうだった。ずっとひとり。
時々世話を焼いてくれる優しい子はいた。でもその子は対等ではなかった。
でもよく考えたらひとりだけ、あの子だけは対等に話していた。でも男の子だから友達の範疇には入れてなかった。そうかその子は同級生だったんだな。気が付かなかったなあ。

幼稚園の頃の私はまだ自分を「ワタシ」とは呼べなくて、「あかりちゃんはねー」のように言っていたと思う。これあかりちゃんのよ、あかりちゃんが行くよ、

その呼び名を幼稚園で使うことはなかった。
使うのは家族の中、近所で小さい子と遊ぶとき、朝登校班で歩きながら。

「かおるちゃん」は家が近所と言ってもどこに住んでいたのか知らない。組も違ったので、幼稚園での様子も知らない。興味もなかった。あの子にしても、私が幼稚園でどんな子だったのかは知らないだろう。登校班で並んでいただけなので、印象にも残っていないだろうな。

こんどの休みに、昔通っていた幼稚園まで行ってみよう。そんなに遠くないはず。お母さんに言うのは恥ずかしいから、街の地図を探していってみよう。うん、そうしよう。

次の日曜日、友達と遊ぶ約束が入って幼稚園には行けなかった。また次の機会に。

あー面白かった。楽しかったね。じゃあ、、
もっと遊ぼうよ。
ああ、そうだね…どこに行く?

もう夕方になっちゃったよ。
あの、わたし、お母さんと約束があってそろそろ帰らなきゃ…ごめんね。また遊ぼうね。

翌日の昼休みは、トイレで歯磨きをしたあと、「じゃあお先に」と教室に帰ってきてしまった。今日はちょっとパス。自分の席で眠りたい。
変に思われなかったかな?と心配しながら廊下を歩いていると、渡り廊下のところでぼんやり下の中庭を見下ろしている生徒がいた。ひとりでなにしてんのかな、と思いつつ近づくと、例の「かおるちゃん」だった。
「あ」と思わず声が出た。
目を離して中庭を覗くと、グループでお弁当を広げている生徒たちが見えた。歌いながらダンスを踊る女子生徒もいた。

かおるちゃんは、姿勢を固くして身動きひとつせずじってしていた。こちらに気付いているらしかった。そんなに緊張することないのにな。
気がついたらかおるちゃんは立ち去ってしまっていた。
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