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2019年10月24日15:35

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入学式の日

あの子はもしかしたら「幼なじみ」と呼べるのかもしれないな。幼なじみっていうほどなじんでないけどな。
学校では遊ばない。近所でも遊ばない。ただ毎日一緒に学校から帰っていた。でもそんなに仲良くはしてなかったから友達とは思っていなかった。

何度めかの引っ越しで、またこの町に帰ってきた。
といっても前に住んでいたのは幼稚園の頃で1年間過ごしただけだから、薄っすらとしか覚えていない。
明日は中学校の入学式だ。
制服がちょっとぴちぴちだけど仕方がない。入学直前で越してきたので、近所に住む父親の会社の娘さんのお下がりをもらったのだが、その人が小柄でスレンダーな人だったのだ。
スカートは小学校の頃の紺の吊りスカート。ひもは上着で隠れるから大丈夫でしょ、と母に言われた。細かいひだの膝上のスカート。店で注文したのが出来上がるまでの我慢。

式の前に、新入生の列の一番後ろに並んだ。
これみんな新入生で間違いないよね、間違えて上の学年に入れられたんじゃないよね?と思った。
それくらいみんな大人っぽくみえた。この人達がこの間まで小学生だったなんて、とても想像できなかった。
前にいた町でそのまま中学生になっていれば、もっと違う感じだったに違いない。小学生が大人の服を着ている違和感を感じながら、やがて馴染んで中学生らしくなる過程が見られたのにと、少し残念に思った。

並んでいる時に前にいた子に声をかけて、仲良くなってそのままその子のグループで明日からお昼を食べる約束をした。
今回はこんな感じでうまくいきそうだな、と思った。

帰宅して、もらった冊子の新入生の名簿をぼんやり見ていた。全部で6クラス、結構人数が多かった。
前に住んでいた所なら知ってる名前でもありそうなのに、誰ひとり分からなかった。今日話をした子も初対面だった。そんなことを考えていると、
「そういえばあんたの友達がいたはず」と不意に母親が言った。「幼稚園で一緒だったのよ、えーと、男の子」「それ友達じゃない」即答した。
男の子の友達なんかいない。母親にとっては、近所の同じ年頃の子供で、同じ所に通っていれば「友達」ということになってしまうらしい。

…ああ、でも思い出した。ここの幼稚園は小学生と一緒の集団登校で、いつも隣の男の子と並んでいたことを。名前もわかる。でも遊んだこともないし、そんなに話してたわけじゃないし、やっぱり友達じゃない。
名簿をめくっていて見つけた。隣のクラスらしい。
明日、一応見に行ってみようかな、と思った。

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