そうか
わたしは気が付いた
それは夢だったのだろうと
わたしは現実をそんなには重んじてはいなかった
それは過ぎ去る夢だったのだと気付いた時には
ロウソクの日を眺めたままの自分は
ロウソクの火を見つめたようにそのまま
再び眠りへとこけていった
1
ねえさっちゃんはさ
サツキの五月だからさっちゃんなんだよね?
いいえちがうよ
さっちゃんは
さつじんきだからさっちゃんなのだよ
ところで君は誰だい?
2
ねえさっちゃんはさ
さちおねえさんをたべたひとかい?
さきほど
ここには
あくまが
立っていたらしいんだよ
それは判らない
わたしは思いのほか
あなたがたのような日常と
相差しないから
それはヒグマか
トラのごとくものであろうと
ゆって彼は寝どころへと帰っていった
3
あなたがさっちゃん
ところでさちおねえさんを見かけなかったかね
さちはそらでゆゆうとしているよ
あなたが殺人鬼のさっちゃんでしょ
きゅうにこどもがさけんで
わあわあ泣いて私の手を払いのけた
4
わたしには嫌われる理由はごまんとある
隣には蟻塚に手をかけて
長い舌をのばして蟻を食っていたケモノがいた
わたしは離れる時ケモノはわたしには振り向きもせず
ただ蟻塚の塔と格闘し
長い舌を這わせて夢中なのであった
5
もしも蟻塚の蟻が全部食われたら
もしくはその蟻塚の蟻を食い続けるアリクイが
わたしは考えたのであった
宇宙は広くて狭いのかもしれない
もしも
疑問は頭痛の種ともなるに相違ない
無能なものは思考を停止せよ
だが有能である者は可能な限り
わたしも再び道路の道しるべや
案山子のようなものとして
役割を渡されるかもしれない
師はどこにでもいる
それこそ
自分以外のすべてだ
6
蟻塚の隣を見た日
そこには人間には天敵の悪魔がいた
アリクイはめざどく蟻塚を崩壊させようとした
しかしまだ蟻は生きている
7
さちおねえさんはとても美しく
故に命を陰に取られてしまった
目の不自由なさちは
夜半に崖をミスしたのだ
そうして命を希い
祈ったまま天に召されました
陰はくすね盗った
宝石のごとく物を
天の前では容易に隠すことができません
8
アリクイは
人の頭蓋骨をやぶって言いました
蟻はこのように勤勉だがわたしは立っていた
わたしはたっていたがだれかがもんくをいいましょうか
アリ達はみなしたがって文句は言わなかった
そうしてアリクイは鋭い爪を振りかざして申した
もしもまたなにか理由があって呼ぶのであれば
そのときは呼ぶが良い暇なので
9
ヒトリノカミはそうして元の生活に戻っていった
アリクイの背後には七つの命がある
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