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2019年05月16日06:47

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シルベスター、何があったの?

シルベスターがいなくなった。
黒の雄猫。
我が家の前方に見える巨大な団地に住む黒人の男性の飼い猫だった。けれど随分と粗雑に扱われていたようだ。
挙句に飼い主は或る日突然シルベスターを追い出した。
そして決して中に入れなかった。
以上は同じ団地に住むアル中のおじさんが教えてくれた。
話はそれるがそのおじさんが飼っていた猫は2歳の時に家出して以来何年か野良猫生活の上、人間不信になっていたがこの猫も我が家に住み着いた。
白と縞のいなせな雄猫。頼もしい猫だった。

話を戻そう。
以来シルベスターは野良猫として毎日食べ物を求めて必死にさまよっていた。
この頃事情を知らなかった私とお向かいの(故)ジューンさんは、黒い野良猫に気がついていて、可哀想にねえ、家に来ればいいのにと話し合っていた。
シルベスターはやがて我が家に来るようになりそして住み着いた。
ただし相変わらず野良猫癖は抜けず、毎日ジューンさんの家にも忍び込みジューンさんの飼い猫のご飯も平らげていた。
シルベスターには悪い癖があって、屋内でもするマーキングと手を差し出すと噛み付く猫だった。
やがて慣れて手は噛まなくなったが、去勢した後にもマーキングは続いている。
が、可愛いやつで、私が出かけるときは必ず一緒に付いて来る。
ここまでと判断すると、もう行けないよとでも言う風に悲しげに鳴く。
大抵は家に戻っているか、近所で待っているかしてくれる。

ところがこの日はそうではなかった。
日曜日の午後だった。
近所のスーパーに出かけた。
シルベスターがいつものようにお供をしてくれる。
散歩を兼ねていつもより少し遠回りの道を選んだ。
シルベスターも何度か一緒に歩いた道だ。
この日違ったのは彼はどこまでもついて来る。
何度か軽くいなしたがついてくる。
いよいよ大通りの近くまで来たとき、私は帰りなさいと強く追いやった。
シルベスターは了解した風に来た道を振り返ったが、その様子が心細そうで気になった。
スーパーに行く前に公園を散歩するつもりだったのをキャンセルして買い物の後急いで帰宅した。
シルベスターはまだ戻っていなかった。
その時点では心配していなかった。
翌朝になっても彼は戻っていなかった。
よくよくのことだ。
事故にでもあったのか、犬に襲われたのか。
合図の鍵束を鳴らしながら同じ道を歩いてみた。
シルベスターは現れない。
どこかに入り込んで、ドアが閉まったとか?
時々外に出て鍵束を鳴らしてみるが、シルベスターの姿はない。

二日目、朝一番に確かめたが彼は戻っていなかった。
これは異常だ。
きっと犬に襲われたかして動けないのだろう。
いや、鍵束の音は聞こえても出るに出られない状況なのかも。
可哀想に。
もしかして鳴き声をあげたかもしれないのに、弱々しくて私の耳に届かなかったのかも。
ちょうど我が子の帰りが遅くて心配するときのように、色々な最悪な場面を想像してしまう。
夜になっても戻ってこなかった。
ああ、もう絶対に何か悪いことが起こったのだと覚悟した。

三日目、これからはシルベスターのいない毎日になるのだな、寂しいなと階下に降りた。
あいつ、もう戻ってこないな。
どうせいないだろうけどと、と居間を覗いた。
椅子に黒い塊。
あっ、シルベスター。
おかえり!
よく戻って来てくれたね。
何があったのと問いかけても、彼はひたすら眠り続けた。
一日中眠っていた。
怪我もしていない様子なので一応安心。

無事でよかったー。
でも何があったんだろう?





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